化学療法による治療歴のない転移性膵癌患者において、 FOLFIRINOXレジメン (オキサリプラチン+ロイコボリン+イリノテカン+フルオロウラシル) の効果を、 ゲムシタビン (GEM) 単剤投与を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験ACCORD 11の結果より、 全生存期間 (OS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
FOLFIRINOX versus gemcitabine for metastatic pancreatic cancer. N Engl J Med. 2011 May 12;364(19):1817-25. PMID: 21561347
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ACCORD 11試験の概要
対象
化学療法による治療歴のない転移性膵癌患者
方法
342例を以下の2群に1:1で割り付けた。
オキサリプラチン85mg/m²+ロイコボリン400mg/m²+イリノテカン180mg/m²+フルオロウラシル400mg/m² (急速静注) +フルオロウラシル2,400mg/m² (46時間かけて持続静注) を2週間毎に投与
GEM1,000mg/m²を週1回、 7週投与後1週休薬。 その後は3週投与後1週休薬の4週サイクルで継続
評価項目
主要評価項目:OS
副次評価項目:無増悪生存期間 (PFS) 、 奏効率 (ORR) 、 安全性、 QOL
ACCORD 11試験の結果
患者背景
- 両群間で概ね同様であったが、 肺転移はFOLFIRINOX群の方がGEM群より少なかった (19.5% vs 28.7%、 p=0.05) 。
- 治療サイクル数の中央値は、 FOLFIRINOX群で10サイクル、 GEM群で6サイクルであった (p<0.001) 。
OS中央値
(95%CI 9.0-13.1ヵ月)
(95%CI 5.5-7.6ヵ月)
HR 0.57 (95%CI 0.45-0.73)、 p<0.001
OS率 (6ヵ月時、 12ヵ月時、 18ヵ月時)
- FOLFIRINOX群:75.9%、 48.4%、 18.6%
- GEM群:57.6%、 20.6%、 6.0%
PFS中央値
(95%CI 5.5-7.2ヵ月)
(95%CI 2.2-3.6ヵ月)
HR 0.47 (95%CI 0.37-0.59)、 p<0.001
PFS率 (6ヵ月時、 12ヵ月時、 18ヵ月時)
- FOLFIRINOX群:52.8%、 12.1%、 3.3%
- GEM群:17.2%、 3.5%、 0%
ORR
(95%CI 24.7-39.1%)
(95%CI 5.4-14.7%)
p<0.001
QOL
6ヵ月時点でGlobal Health Status and Quality of Lifeスケールのスコアが低下した患者はFOLFIRINOX群で31%、 GEM群で66%であった (HR 0.47、 95%CI 0.30-0.70、 p<0.001) 。
有害事象 (AE)
- Grade3-4の好中球減少症、 発熱性好中球減少症、 血小板減少症、 下痢、 感覚神経障害の発現率はFOLFIRINOX群で有意に高かった。 Grade3-4のALT値上昇の発現率はGEM群で有意に高かった。
- G-CSFはFOLFIRINOX群の42.5%、 GEM群の5.3%に投与された (p<0.001) 。
著者らの結論
- 化学療法による治療歴のない転移性膵癌患者において、 FOLFIRINOX群はGEM群と比較し、 OSを有意に延長させるが、 毒性も強いことが示された。
- FOLFIRINOX群は、 転移性膵癌でパフォーマンスステータス(PS)が良好な患者の治療の選択肢となることが示唆された。