HOKUTO編集部
1ヶ月前
ヨード造影剤は、 CTをはじめとするさまざまな放射線検査で広く使用されていますが、 使用にあたっては腎機能やアレルギー歴など、 患者背景に応じた慎重な対応が求められます。 本記事では、 腎障害やメトホルミン内服、 アレルギー高リスク例の対応について、 ガイドラインをもとに現場で役立つポイントを整理します。
造影検査は、 臨床診断に必要と判断される場合には実施すべきであり、 腎機能のみを根拠に適応を制限するべきではない。
かつて造影剤腎症 (CIN) は、 造影検査に伴う重大な合併症リスクとされていた。
近年の研究により、 静脈投与されるヨード造影剤によるAKIリスクは限定的であることが明らかとなっている。 2020年のACR/NKF (米国放射線学会/米国腎臓財団) 合同ステートメントでは、 CINのリスクは以下のように示されている。
また、 eGFR<30mL/min/1.73m²やAKI症例でも、 造影剤との直接的な因果関係は明確でないとする報告³⁾⁴⁾が増えている。 一方で、 実臨床ではeGFR<30mL/min/1.73m²の患者に対し、 CIN予防の目的で生理食塩水や重曹液の投与、 造影剤の減量が検討される⁵⁾。
腎機能のみを根拠に造影検査を避けるのではなく、 脱水、 心不全、 腎毒性薬剤の併用など他のリスク因子を総合的に評価・管理することが重要である。
eGFR<30mL/min/1.73m²の患者および透析中の患者では、 メトホルミンは禁忌である。
メトホルミン関連乳酸アシドーシスは、 同薬剤内服中に発症しうる重篤な代謝性合併症で、
と報告されている。 報告例の多くは、 メトホルミンの禁忌に該当する患者に投与されたケースであり、 適切に使用された症例での発症はまれとされている。 また、 メトホルミン内服がCINの発症率に影響を与える明確なエビデンスは示されていない⁶⁾。
米国放射線専門医会 (ACR) は、 メトホルミン内服患者に対するヨード造影検査時の対応として以下を推奨している。
一方、 日本の添付文書では、以下とされている。
また、 日本糖尿病学会の『メトホルミンの適正使用に関するRecommendation⁷⁾』では、 以下のような対応が推奨されている。
以上を踏まえ、 実際の対応においては、 施設方針と患者個別のリスクを考慮して対応する。
ヨード造影剤は、 医薬品によるアナフィラキシーの原因薬剤として上位に位置づけられている。 アナフィラキシーの予測法や確立された予防法は存在しないが、 副作用リスクの事前評価と、 適切な対応および医療従事者間の情報共有は、 検査を安全に実施するうえで不可欠である。
ヨード造影剤によるアレルギー様反応は0.6%、 重篤例は0.04%程度と報告されている。 多くは軽度であるが、 以下のような因子がリスクを高めるとされている⁶⁾。
急性アレルギー様反応を低減する目的で、 ステロイドの予防投与が行われる。 有効性には議論があるが、 日本医学放射線学会では 「学会として積極的に推奨するものではない」 としつつ、 ACRのマニュアルに基づく以下のプロトコルを紹介している⁸⁾。
過敏症の既往がある患者や気管支喘息患者では、 代替検査や造影剤の変更、 ステロイドの前投薬を検討し、 有益性がリスクを上回ると判断される場合に限り、 慎重に造影検査を実施する。
💊 医薬品添付文書
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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