最新薬剤情報 & 使い分け
7日前

ヨード造影剤は、 CTをはじめとするさまざまな放射線検査で広く使用される。 一方、 使用にあたっては腎機能やアレルギー歴など、 患者背景に応じた慎重な対応が必要となる。 本記事では、 腎障害やメトホルミン内服、 アレルギー高リスク例の対応について、 ガイドラインをもとに現場で役立つポイントを整理する (最終更新 : 2026年6月11日)。
造影検査は、 臨床診断に必要と判断される場合に実施すべきであり、 腎機能のみを根拠に適応を制限すべきではない¹⁾。
造影剤腎症 (CIN) は、 造影検査に伴う重要な合併症リスクとされ、 以下のように定義される。 近年は国際的に用語の整理が進んでいるが (後述)、 本邦の 「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」 では、 引き続きCINの用語が用いられている¹⁾。

一方、 国際的には、 造影検査後の腎機能低下に関する用語の整理が進んでいる。 米国放射線専門医会 (ACR) は、 造影剤との因果関係を問わないCA-AKIと、 造影剤による腎障害を指すCI-AKIを区別して用いており、 従来のCINはおおむねCI-AKIに相当する²⁾。

欧州泌尿生殖器放射線学会 (ESUR) も2025年版から、 従来のPC-AKI (造影後急性腎障害) に代えて、 CA-AKI (造影剤の血管内投与後48~72時間以内のCr上昇) を用いる方針を示している³⁾。 ただし、 ESURではCI-AKIの用語は用いられていない。
近年の研究により、 静脈投与されるヨード造影剤によるAKIリスクは限定的であることが明らかとなっている。 2020年のACR/NKF (米国放射線専門医会/米国腎臓財団) 合同ステートメントで示されているCINリスクは以下の通り⁴⁾。

eGFR 30mL/min/1.73m²未満やAKI症例でも、 造影剤との直接的な因果関係は明確でないとする報告⁵⁾⁶⁾が増えている。 腎機能のみを根拠に造影検査を避けるのではなく、 脱水、 心不全、 腎毒性薬剤の併用など他のリスク因子を総合的に評価・管理することが重要である。
本邦の 「急性腹症診療ガイドライン2025 第2版」 では、 eGFR 30mL/min/1.73m²未満の患者に対し、 CIN予防の目的で生理食塩水や重曹液の投与、 造影剤の減量が提案されている⁷⁾。
ESURも、 静注例などで重曹液または生理食塩水による予防的輸液を推奨している。 造影剤は低・等浸透圧製剤を最小限の量で用い、 経口補水のみによる予防やスタチン・腎血管拡張薬などの薬物予防は推奨されない³⁾。
メトホルミン関連乳酸アシドーシス (MALA) は、 同薬剤内服中に発症しうる重篤な代謝性合併症である。 発症の致死率は約50%とされる一方、 発症頻度自体は低く、 観察研究では1,000人年あたり0~0.084例と報告されている²⁾。
報告例の多くは、 メトホルミンの禁忌*に該当する患者に投与されており、 適切に使用された症例での発症は稀とされている。 また、 メトホルミン内服がCINの発症率に影響を与える明確なエビデンスは示されていない²⁾。
ACR²⁾およびESUR³⁾は、 メトホルミン内服患者に対するヨード造影検査時の対応として、 腎機能に応じて以下の推奨をしている。

日本の電子添文、 日本糖尿病学会 「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation⁸⁾」 では、 以下の対応が記載されている。

以上を踏まえ、 実際の対応においては、 施設方針と患者個別のリスクを考慮して対応する。
ヨード造影剤は、 医薬品によるアナフィラキシーの原因薬剤として上位に位置付けられている。 アナフィラキシーの予測法や確立された予防法はないが、 副作用リスクの事前評価、 適切な対応、 医療従事者間の情報共有は、 検査を安全に実施するうえで不可欠である。
ヨード造影剤によるアレルギー様反応は0.6%、 重篤例は0.04%程度と報告されている²⁾。 多くは軽度であるが、 以下のような因子がリスクを高めるとされている。

ただし、 ACR²⁾・ESUR³⁾とも、 リスク上昇は軽度であるとして、 喘息や性別・造影剤以外のアレルギー既往のみを理由とした造影剤使用の制限や前投薬を推奨していない。 前投薬の適応となるのは、 原則として同一クラスの造影剤に対する過去のアレルギー様反応 (または原因不明の反応) の既往がある場合に限られる。
急性アレルギー様反応を低減する目的で、 ステロイドの予防投与が行われる。 有効性には議論があるが、 日本医学放射線学会では、 積極的に推奨するものではないとしつつ、 ACRのマニュアルに基づく以下のプロトコルを紹介している⁹⁾。

過敏症の既往がある患者や気管支喘息患者では、 代替検査や造影剤の変更、 ステロイドの前投薬を検討し、 有益性がリスクを上回ると判断される場合に限り、 慎重に造影検査を実施する。
1) 日本腎臓学会ほか編 : 腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018. 東京医学社.
2) American College of Radiology : ACR Manual on Contrast Media 2026.
3) ESUR Contrast Media Safety Committee : ESUR Guidelines on Contrast Agents 2025.
4) Radiology. 2020 Mar;294(3):660-668.
5) AJR Am J Roentgenol. 2019 Oct;213(4):728-735.
6) Intensive Care Med. 2023 Feb;49(2):205-215.
7) 急性腹症診療ガイドライン出版委員会編 : 急性腹症診療ガイドライン2025 第2版. 医学書院.
8) 日本糖尿病学会 : メトホルミンの適正使用に関するRecommendation (2020年3月18日改訂)
9) 日本医学放射線学会 : ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性 (即時性) 副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言 (2022年12月改訂版)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。