海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Tarantinoらは、 Stage IのHER2陽性乳癌を対象に、 抗体薬物複合体トラスツズマブ エムタンシン (T-DM1) による術後療法の有効性について、 パクリタキセル+抗HER2抗体トラスツズマブ (TH) 併用療法を対照に、 第Ⅱ相無作為化比較ATEMPTで比較検討した。 その結果、 術後T-DM1療法による良好な転帰が示された。 本研究はJ Clin Oncolにて発表された。
AbstractのPurposeに"prognostic predictors represent an unmet need"と記載されていましす。 最近、 "unmet need"の言葉が散見されるようになってきました。
T-DM1による術後療法を受けたStage IのHER2陽性乳癌患者の長期転帰は依然として未解明であり、 予後予測因子の特定が望まれている。
中央判定でStage Iと診断されたHER2陽性の乳癌患者 : 512例
患者を3 : 1の割合で以下の2群に無作為に割り付けた。
- T-DM1群 : 384例
- TH群 : 128例
以下の2つが設定された。
- T-DM1による浸潤性無病生存期間 (iDFS) *
- 臨床的に関連する毒性(CRT)発生率の群間比較
以下の3つが設定された。
- 無再発間隔 (RFI) *
- 全生存期間 (OS)
- 乳癌特異的生存率 (BCSS)
以下の3つが設定された。
- HER2DXゲノムツール
- HER2不均一性のマルチオミクス評価
- 血小板減少の予測因子
イベント発生数
追跡期間中央値5.8年後に、 T-DM1群で11件、 TM群で9件のiDFSイベントが発生した。
5年iDFS率
T-DM1群の5年iDFS率は97.0%であった。
- T-DM1群 : 97.0% (95%CI 95.2-98.7%)
- TH群 : 91.1% (95%CI 85.7-96.8%)*
T-DM1群では腫瘍の大きさ、 ホルモン受容体の状態、 中央評価に基づくHER2免疫組織化学的スコア、 T-DM1の投与期間にかかわらず、 同等のiDFSが観察された。
両群間に有意差は認められなかった。
- T-DM1群 : 46%
- TH群 : 47%
p=0.83
T-DM1群の5年RFI率、 OS、 乳癌特異的生存率は以下の通りであった。
- 5年RFI率 : 98.3% (95%CI 97.0-99.7%)
- OS : 97.8% (95%CI 96.3-99.3%)
- 乳癌特異的生存率 : 99.4% (95%CI 98.6-100%)
HER2DXゲノム検査に十分な組織を有する患者において、 5年転帰はHER2DXのリスクスコアにより有意に異なっていた。
また、 HER2DX低リスク疾患例は高リスク疾患例に比べて、 RFI率およびiDFS率が良好だった。
RFI率
- HER2DX低リスク疾患例 : 98.1%
- HER2DX高リスク疾患例 : 81.8%
ハザード比 0.10、 p=0.01
iDFS率
- HER2DX低リスク疾患例 : 96.3%
- HER2DX高リスク疾患例 : 81.8%
ハザード比 0.20、 p=0.047
著者等は 「Stage IのHER2陽性乳癌に対するT-DM1による1年間の術後療法は、 患者の優れた長期予後につながることが示された。 また、 HER2DXのリスクスコアが高いほど、 再発リスクが高いことが予測された」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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