【J Clin Oncol】Stage IのHER2陽性乳癌、術後1年のT-DM1で転帰良好
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海外ジャーナルクラブ

4ヶ月前

【J Clin Oncol】Stage IのHER2陽性乳癌、術後1年のT-DM1で転帰良好

【J Clin Oncol】Stage IのHER2陽性乳癌、術後1年のT-DM1で転帰良好
Tarantinoらは、 Stage IのHER2陽性乳癌を対象に、 抗体薬物複合体トラスツズマブ エムタンシン (T-DM1) による術後療法の有効性について、 パクリタキセル+抗HER2抗体トラスツズマブ (TH) 併用療法を対照に、 第Ⅱ相無作為化比較ATEMPTで比較検討した。 その結果、 術後T-DM1療法による良好な転帰が示された。 本研究はJ Clin Oncolにて発表された。 

📘原著論文

Adjuvant Trastuzumab Emtansine Versus Paclitaxel Plus Trastuzumab for Stage I Human Epidermal Growth Factor Receptor 2-Positive Breast Cancer: 5-Year Results and Correlative Analyses From ATEMPT. J Clin Oncol. 2024 Jun 27:JCO2302170. PMID: 38935923

👨‍⚕️HOKUTO監修医コメント

AbstractのPurposeに"prognostic predictors represent an unmet need"と記載されていましす。 最近、 "unmet need"の言葉が散見されるようになってきました。

🔢関連コンテンツ

T-DM1

HER2陽性乳癌に対するT-DM1療法のレジメン

Trastuzumab+Paclitaxel

HER2陽性乳癌に対するTH療法のレジメン

背景

アンメットニーズへの検証

T-DM1による術後療法を受けたStage IのHER2陽性乳癌患者の長期転帰は依然として未解明であり、 予後予測因子の特定が望まれている。

研究デザイン

Stage IのHER2陽性例が対象

中央判定でStage Iと診断されたHER2陽性の乳癌患者 : 512例

術後のT-DM1単剤 vs TH併用療法で比較

患者を3 : 1の割合で以下の2群に無作為に割り付けた。

- T-DM1群 : 384例

術後療法として、 T-DM3.6 mg/kgを21日ごとに1回17 サイクル投与し1年間継続

- TH群 : 128例

術後療法としてパクリタキセル80 mg/m²を週 1 回投与+トラスツズマブ4 mg/kgを負荷用量で週 1 回投与→トラスツズマブ2mg/kgを12 週間投与→トラスツズマブ6mg/kgを21 日ごとに1 回13サイクル投与

主要評価項目はiDFSとCRT発生率

以下の2つが設定された。

- T-DM1による浸潤性無病生存期間 (iDFS) *

- 臨床的に関連する毒性(CRT)発生率の群間比較

*「浸潤性局所または領域再発、 対側浸潤性乳癌、 遠隔再発、 またはあらゆる原因による死亡」と定義された。

副次評価項目はRFIとOS、 BCSS

以下の3つが設定された。

- 無再発間隔 (RFI) *

- 全生存期間 (OS)

- 乳癌特異的生存率 (BCSS)

*「浸潤性局所または領域再発、 遠隔再発、 および乳がんによる死亡」と定義された。
編集部注 : 論文のOutcomesセクションには副次評価項目としてRFIのみ記載があるが、 ResulsセクションにOSやBCSSの記載があるためこれらも副次評価項目として記載した。

3つの相関解析項目を設定

以下の3つが設定された。

- HER2DXゲノムツール

- HER2不均一性のマルチオミクス評価

- 血小板減少の予測因子

研究の結果

T-DM1群の5年iDFS率は97%

イベント発生数

追跡期間中央値5.8年後に、 T-DM1群で11件、 TM群で9件のiDFSイベントが発生した。

5年iDFS率

T-DM1群の5年iDFS率は97.0%であった。

- T-DM1群 : 97.0% (95%CI 95.2-98.7%)

- TH群 : 91.1% (95%CI 85.7-96.8%)*

*本試験では検出力を有さなかった

T-DM1群では腫瘍の大きさ、 ホルモン受容体の状態、 中央評価に基づくHER2免疫組織化学的スコア、 T-DM1の投与期間にかかわらず、 同等のiDFSが観察された。

CRT発生率の群間差は認めず

両群間に有意差は認められなかった。

- T-DM1群 : 46%

- TH群 : 47%

p=0.83

5年RFI率、 OS、 乳癌特異的生存率はいずれも95%以上

T-DM1群の5年RFI率、 OS、 乳癌特異的生存率は以下の通りであった。

- 5年RFI率 : 98.3% (95%CI 97.0-99.7%)

- OS : 97.8% (95%CI 96.3-99.3%)

- 乳癌特異的生存率 : 99.4% (95%CI 98.6-100%)

HER2DXが低リスク例は予後良好

HER2DXゲノム検査に十分な組織を有する患者において、 5年転帰はHER2DXのリスクスコアにより有意に異なっていた。

また、 HER2DX低リスク疾患例は高リスク疾患例に比べて、 RFI率およびiDFS率が良好だった。

RFI率

- HER2DX低リスク疾患例 : 98.1%

- HER2DX高リスク疾患例 : 81.8%

ハザード比 0.10、 p=0.01

iDFS率

- HER2DX低リスク疾患例 : 96.3%

- HER2DX高リスク疾患例 : 81.8%

ハザード比 0.20、 p=0.047

著者らの結論

術後TD-M1で良好な長期予後

著者等は 「Stage IのHER2陽性乳癌に対するT-DM1による1年間の術後療法は、 患者の優れた長期予後につながることが示された。 また、 HER2DXのリスクスコアが高いほど、 再発リスクが高いことが予測された」 と報告した。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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