栄養療法マニュアル
11ヶ月前
本コンテンツは造血幹細胞移植時の栄養療法について、 専門医の視点からわかりやすい解説を行う企画です。 是非とも臨床の参考としていただければ幸いです。
蛋白質の投与量はガイドラインにより若干の違いはあるが一般に1.2~1.5g/kg/day程度が推奨されている¹⁾²⁾。 蛋白量投与量は健常人においては1.6g/kg/day程度までは蛋白量が増えるほど除脂肪体重 (fat-free mass:FFM) が増加する傾向が報告されているが、 それ以上は増やしてもあまり効果はないという結果であった。
アミノ酸としての投与量をさらに増やしたり、 分枝鎖アミノ酸 (branched-chain amino acids:BCAA) を多く含む製剤を使用したりすることは、 これまでの少数例の検討では有効性が示されておらず、 一般的には推奨されない³⁾⁴⁾。
腎機能障害時には蛋白投与量を減量することが勧められるが、 0.5~1.0g/kg/day程度の投与は継続する。 それ以上の制限は一般的には推奨されない⁵⁾⁶⁾。
本邦の既成製品の中心静脈栄養 (total parenteral nutrition:TPN) ではアミノ酸量が少ない場合もあり注意を要する。
静注用グルタミン製剤は本邦で使用できないので詳細に関しては省くが、 同種移植後の感染症を減少させる可能性はある⁷⁾⁻⁹⁾。 ただし、 その後ICUでの検討では予後を悪化させるような報告も出ており注意を要する¹⁰⁾⁻¹²⁾。 特に腎機能低下例に対して高用量の静注用グルタミンを追加投与すると過剰な窒素負荷となる可能性がある点は、 腎機能障害例の多いICUや造血幹細胞移植症例においては注意しなければならない¹¹⁾。
内服のグルタミンに関しては、 本邦でもGFO®などで補充可能であり、 移植後の口内炎や移植片対宿主病 (GVHD) を軽減する可能性はある⁹⁾。 最近では難消化性デンプン (resistant starch) との併用ではあるが、期待できる結果も報告されており、 今後の研究の発展が期待されている領域である¹³⁾。
そのほか、 話が逸れるが、 カルニチン製剤 (エルカルチン®) が本邦でも使用可能となっている。 新生児など小児領域では脂肪肝に対して有用であったとする報告もあり、 ASPEN guidelineでもTPN使用時にはカルニチン製剤の使用が勧められている¹⁴⁾。
追加するタイミングについてもエビデンスがないのではっきりはしないが、 2週間TPN使用が続いた場合や中性脂肪高値、 低血糖、 カルニチン値低値であると早目の追加を行っている施設もあるようである¹⁵⁾。
成人においても理論的には有用である可能性があるが、 今後の検討課題である。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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