「医療法施行令改正に対応し、 内科・精神科・小児科を揃えた『睡眠診療部』を新設」 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠診療部 松井健太郎医師 (前編)
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8日前

「医療法施行令改正に対応し、 内科・精神科・小児科を揃えた『睡眠診療部』を新設」 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠診療部 松井健太郎医師 (前編)

 「医療法施行令改正に対応し、 内科・精神科・小児科を揃えた『睡眠診療部』を新設」 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠診療部 松井健太郎医師 (前編)
日本人の約5人に1人が睡眠に関する悩みを抱えているといわれるなか、 国立精神・神経医療研究センター病院 (NCNP病院) は2026年6月に 「睡眠診療部」 を開設した。 世界有数の睡眠研究機関である精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部と連携し、 睡眠・覚醒障害の患者に適した診療を提供する。 同部開設の経緯や取り組みについて、 同部医長の松井健太郎医師 (東北大卒) に聞いた。 

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 (NCNP病院) 概要

脳とこころの病の克服に取り組むナショナルセンター。 病院と研究所が一体となり、 精神疾患、 神経疾患、 筋疾患および発達障害の克服を目指した研究開発を行い、 その成果をもとに高度先駆的医療を提供するとともに、 全国への普及を図る。 発足以来、 睡眠医療の発展に尽力し、 2026年6月に睡眠診療部を新設。 睡眠研究機関である精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部と連携し、 エビデンスに基づく診療と新規治療法の開発を行う。

内科・精神科・小児科を網羅し、 全世代の睡眠トラブルに応える

―― 「睡眠診療部」 開設の経緯を教えてください。

「当院の睡眠医療への取り組みは、 旧国立精神・神経センターの発足と、 精神保健研究所精神生理部が成立した1986年から始まります。 1980年代から90年代にかけては、 睡眠・生体リズムの研究が進められました。 臨床への応用も進み、 2000年代には当時の名誉総長である高橋清久氏らが日本学術会議へ『睡眠学の創設』を提言するなど、 睡眠医療の発展に寄与してきました。 その後、 2012年に睡眠障害センターが設立し、 病院内の一部門として精神生理部 (現・睡眠・覚醒障害研究部) と連携しながら臨床研究を進めてきたという経緯があります。 私自身は、 2019年に臨床検査部医長として赴任し、 2022年以降は睡眠障害センター長を兼任しながら、 睡眠医療を担ってきました」

「睡眠診療部を開設したきっかけは、 2026年6月1日に施行された医療法施行令改正で、 内科・精神科などの診療科名と組み合わせることで睡眠障害に関する標榜が認められたことです。 標榜科目の追加は18年ぶりのことで、 国の機関である当院にも方針に沿った対応が求められました。 その際に病院の企画経営部門から『臨床検査部から睡眠医療を独立させ、 病院の一部門とすべきではないか』という提案があり、 睡眠診療部の開設に至りました。 もともとあった睡眠医療の下地に、 制度上の改正が重なった結果とも言えます」

――現在の睡眠診療部の体制について教えてください。

「睡眠診療部は睡眠障害内科・睡眠障害精神科・睡眠障害小児科を標榜しています。 睡眠障害精神科・睡眠障害内科は、 常勤医師5人と、 外来をサポートする研究所の医師4人が在籍しています。 また、 専属の看護師2人と診療補助のスタッフ数人も配置しています。 睡眠障害小児科は、 私とともに日本睡眠学会総合専門医の資格を持つ小児科専門医1人が専門外来を担当しています。 2026年9月からは新たに医師1人が加わり、 小児外来の診療枠は2倍に増えました」

 「医療法施行令改正に対応し、 内科・精神科・小児科を揃えた『睡眠診療部』を新設」 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠診療部 松井健太郎医師 (前編)
※写真はイメージです

「受診される患者さんの疾患は多岐にわたります。 重度の不眠症や睡眠時無呼吸症候群、 ナルコレプシーをはじめとする過眠症、 夕方から夜間に脚に不快なむずむず感が現れる『むずむず脚症候群』、 寝ている間に大声を上げて体が動いてしまう『レム睡眠行動障害』などです。 中でも近年急増しているのが小児・思春期の患者さんです。 朝起きられず登校できない、 夜眠れない、 悪夢や夜驚、 学校での強い眠気といった相談が多く、 若い世代の生体リズムの乱れに対する早期介入の重要性が高まっています」

睡眠診療部の新設に伴い、 初診枠を拡大

――他の医療機関と比べたときに、 睡眠診療部の強みや特徴はどこにありますか。

「3次医療を担うナショナルセンターである当院は、 その性質上、 初期治療で改善が得られなかった難治例に対応できる専門性の高さが求められます。 それに応えることがわれわれの役割だと思っています。 また、 日本睡眠学会のガイドラインに沿った丁寧な睡眠検査ができることも当院の強みです。 臨床検査技師が夜間の検査に立ち会い、 センサーの外れなどに即座に対応しながら実施しています。 さらに、 CPAP (持続陽圧呼吸療法) の導入についても、 専門の看護師がマスクフィッティングや生活指導を行い、 患者さんが治療を継続できるようフォローしています」

 「医療法施行令改正に対応し、 内科・精神科・小児科を揃えた『睡眠診療部』を新設」 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠診療部 松井健太郎医師 (前編)
※データを確認するスタッフのみなさん

「加えて、 過眠症の診断に必要なMSLT (反復睡眠潜時検査) を実施できることも特徴の一つです。 MSLTを実施できる医療機関は都市部に偏る傾向があり、 都道府県によっては1ヵ所もないという状況です。 当院にも山梨や長野など、 遠方から紹介で来院される患者さんがいるほどです」

――開設から2ヵ月が過ぎました。 見えてきた課題をお聞かせください。

「診療部として独立して最初に掲げたのは、 検査件数を増やすことでした。 そのためには初診枠の拡大が必要で、 週15人だった初診枠を、 28人まで増やしました。 そこで課題となっているのが、 臨床検査技師の不足と、 周辺医療機関との連携強化です。 睡眠検査の解析には専門的なトレーニングを積んだ臨床検査技師が必要ですが、 現在は1人の技師が担当しているため、 検査件数を増やすには人員の拡充が欠かせません」

「また、 近隣の医療機関とどのように信頼関係を築いていくかも課題です。 国立機関という立場上、 製薬会社や医療機器メーカーの勉強会に積極的に参加するという文化は根付いておらず、 近隣の医師との交流の機会が生まれにくいという実情があります。 さらに、 病院名から専門性の高い機関と捉えられがちで、 クリニックの医師から『検査の適応で困っている患者さんがいても、 当院には紹介しづらい』という話を聞いたこともあります。 開かれた関係をどう築いていくかが、 今後の大きな課題です」

(>>続く)

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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