HOKUTO編集部
1年前
転移を有するまたは再発性の膵癌の1次治療を対象に、 modified FOLFIRINOX療法 (mFOLFIRINOX) またはS-IROX (S-1+イリノテカン+オキサリプラチン) 療法の有効性および安全性について、 標準療法であるnab-パクリタキセル(nab-PTX)+ゲムシタビン(GEM)併用療法に対する優越性を検証した多施設共同非盲検第Ⅱ/Ⅲ相無作為化3群比較試験JCOG1611/GENERATEの結果から、 優越性は証明されなかった。 国立がん研究センター中央病院肝胆膵内科の大場彬博氏が発表した。
全身状態が良好な転移を有する膵癌の1次治療には、 nab-PTX+GEM併用療法とFOLFIRINOX (オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+レボホリナート) 療法が同レベルで推奨されている。 一方で、 S-IROX療法に関しても、 進行膵癌患者を対象とした第Ⅰb相試験で高い抗腫瘍活性 (ORR 51.1%) が報告されている (Eur J Cancer 2022: 174: 40-47) 。
JCOG1611/GENERATE試験では、 これら3つのレジメンの有効性と安全性の直接比較が行われた。
転移を有するまたは再発性の膵癌で、 以下を含む適格基準を満たした患者。 日本国内45施設から登録された。
527例を以下の3群に1:1:1で割り付けた。
中間解析 (2023年3月) は、 Nab-PTX+GEM群141例、 mFOLFIRINOX群143例、 S-IROX群142例で実施
最終解析 (2023年5月) はNab-PTX+GEM群176例、 mFOLFIRINOX群175例、 S-IROX群176例で実施
第Ⅱ相試験
主要評価項目:S-IROX群における奏効割合 (ORR)
第Ⅲ相試験
主要評価項目:全生存期間 (OS)
副次評価項目:無増悪生存期間 (PFS) 、 ORR、 有害事象 (AE) 発現率、 重篤なAE発現率、 dose intensity
中間解析
HR 1.31 (95%CI 0.97-1.77)、 片側p=0.9622
HR 1.35 (95%CI 1.00-1.82)、 片側p=0.9769
最終解析
HR 1.29 (95%CI 0.98-1.70)
HR 1.29 (95%CI 0.98-1.70)
最終解析時における優越性の予測確率の結果 (mFOLFIRINOX群0.73%、 S-IROX群0.48%) からJCOGデータ安全性モニタリング委員会の勧告により、 両レジメンは無益として本試験は中止された。
HR 1.51 (95%CI 0.91-1.45)
HR 1.07 (95%CI 0.84-1.35)
・好中球減少症 (60.3%、 51.5%、 38.7%)
・白血球減少 (34.5%、 22.2%、 16.1%)
・発熱性好中球減少症 (3.4%、 8.8%、 7.5%)
・食欲不振 (5.2%、 22.8%、 27.6%)
・下痢 (1.1%、 8.8%、 23.0%)
転移を有するまたは再発性の膵癌患者の1次治療には、 mFOLFIRINOX療法およびS-IROX療法よりもNab-PTX+GEM併用療法の方が推奨される。
本試験は、FOLFIRINOX療法とNab-PTX+GEM療法の登場から過去10年間世界中のクリニカル・クエスチョン(CQ)であったどちらがより有効なレジメンかを検証するためにデザインされました。
私を含め多くの腫瘍内科医が試験間比較や後方視的観察研究からFOLFIRINOX療法がより有効ではないかと考察していましたが、 結果は正反対のものでした。 このことから再度臨床試験を実施することの大切さを認識することができたように思います。
本試験結果は今後さまざまなディスカッションが必要なものと認識していますが、 少なくとも日本人患者の治療選択の基礎となるはずです。 このような教科書に反映される臨床試験を主導させて頂いたことを大変光栄に思っております。
最後に、 本試験に参加頂いた患者さま、 ご家族、 本試験に協力頂いた参加施設の先生方、 スタッフの皆さまに深謝申し上げます。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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