HOKUTO編集部
7ヶ月前
第86回日本臨床外科学会学術集会が11月21~23日に宇都宮市で開催される。テーマは「地域に外科を、 そして世界へ」。 地域外科医療の課題と対策を考え、 若手外科医の育成やキャリア支援に関するセッションが多数実施される予定だという。 同学術集会にかける思いについて、 会長で自治医科大学医学部外科学講座主任教授の佐田尚宏氏に聞いた。
――総会テーマ 「地域に外科を、 そして世界へ」 に込められた思いを聞かせてください
今回の学術集会のテーマである 「地域に外科を、 そして世界へ」 は、 外科医が年々減少しているという背景から選定しました。 日本の医師数はこの30年間で約11万人増えているのに対し、 外科医の数は500人ほど減少しています。 現時点で実臨床には影響が及んでこそいないものの、 この傾向が持続した場合、 特にがん診療を主に担当する消化器外科などにおいて外科診療が崩壊する可能性があり、 私は強い危機感を抱いています。
現制度における地域医療構想では、 医師の診療科偏在対策と確保が重点課題とされています。 外科医が漸減する中、 外科診療を維持するために、 地域全体の外科診療を特定の施設が担う集約化が進みつつあります。 しかしこの体制では、 特定施設までの距離が遠い地域も出てくるため、 初期診療や回復期・慢性期医療を提供する 「サテライト施設」 を各地に設ける必要性も生じます。 このように、 地域においてどのように外科医を配置し、 外科診療を維持していくのかについて、 私たちは議論していく必要があると考えています。
――外科診療を維持するためには、 若手への啓発も重要になりますね
外科医が減少している原因の1つに、 若い世代が外科に魅力を感じにくくなっていることが挙げられます。 新臨床研修制度の導入により、 初期研修でさまざまな診療科をローテートするようになった結果、 「外科は大変」 という印象を持たれてしまうことが多くなっているのかもしれません。
外科診療の最大の魅力は、 他の診療科よりも担当範囲が広い分、 多様な可能性が広がっていることだと考えています。 その活躍の場は、 地域医療を支えるジェネラルサージャン、 大学病院の専門医、 海外活動など多岐にわたります。
多様な道が拓ける外科の世界で、 特に若手医師には積極的に世界へ進出し、 活躍してほしい。 外科医療のやりがいを感じ、 誇りを持って仕事に取り組んでほしい――。 そして、 総ての外科医が幸福を感じる外科医療を確立したい。 本学術集会のテーマにはこのような思いも込めています。
――プログラムの注目セッションを教えてください
最大の注目ポイントは、 「外科医療の在り方」 「外科医の働き方」 をテーマに、 3日間を通して行われる多数のセッション(学術集会特別企画)です。
女性外科医の割合が増えてきている昨今では、 男女にかかわらずライフステージに応じた柔軟な働き方を実現できるよう、 外科医全体の負担軽減が重要課題となっています。
外科は結果が全ての世界です。 だからこそ、 最良の結果を出すためにも自由な働き方を考えることが重要だと思っています。 そこで本会では、 女性外科医の活躍や若手外科医の働き方に関する特にユニークなセッションとして、
などを企画しました。
2日目には、 成島出監督をお招きする特別講演 「地域に外科を、 映画に医療を~『孤高のメス』から 『いのちの停車場』まで」 を企画し、 当日開催する全員懇親会の後、 映画 「いのちの停車場」 の上映会を予定しています。
同作は小さな診療所が舞台で、 在宅医療を通して"生"に寄り添う医師と、 死に向かう患者、 その家族たちの物語が描かれています。 地域医療の重要性を考える上で示唆に富んだ内容であり、 外科医を志す皆さんに見ていただきたいと思っています。
また3日目には、 自治医科大学の卒業生であり、 へき地医療や総合医の育成に携わる白石吉彦先生による 「隠岐での実践、 そして総合診療医養成」 や、 訪問診療に携わる小堀鴎一郎先生の 「命を救う医療から、 命の最期に伴走する医療へ」 といった特別講演も行われます。
さらに本会では、 研修医や医学生向けのセッションにも力を入れています。 症例発表のセッションや手術手技に関するハンズオンセミナー、 学生プログラムなどを通じて、 これから専門を決める方や、 これから医師になる方々にも外科に興味を持っていただけたらと考えています。
―最後に、 HOKUTO医師・医学生会員にメッセージをお願いいたします
外科医療の魅力は、 その可能性の広さにあります。 私は外科医として40年間のキャリアを積んできましたが、 常に新たな挑戦があり、 退屈することはありませんでした。 自らの手術手技を含めた外科スキルもいまだ成長していると感じますし、 これからも感じ続けるでしょう。 若い世代の方々にもぜひ、 そうした外科のやりがいと楽しさを感じていただきたいと思います。
なお、 宇都宮は餃子の街として有名ですが、 それだけではなく 「ジャズの街」 「カクテルの街」 としても知られています。 会場であるライトキューブ宇都宮は、 JR宇都宮駅から徒歩1分という非常に便利な立地です。 参加者の皆さんには、 宇都宮の魅力も併せて楽しんでいただけると嬉しく思います。
開催日時 : 2024年11月21日 (木) ~23日 (土)
開催場所 : ライトキューブ宇都宮、 ホテル東日本宇都宮、 ホテルマイステイズ宇都宮
公式サイトはこちら
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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