浸潤性膵管癌の切除術後患者において、 S-1による術後化学療法の効果を、 ゲムシタビン(GEM) を対照に検証した第Ⅲ相ランダム化比較試験JASPAC 01の結果より、 全生存期間 (OS) および無再発生存期間 (RFS) に対する有効性が示された。
原著論文
▼解析結果
Adjuvant chemotherapy of S-1 versus gemcitabine for resected pancreatic cancer: a phase 3, open-label, randomised, non-inferiority trial (JASPAC 01). Lancet. 2016 Jul 16;388(10041):248-57. PMID: 27265347
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JASPAC 01試験の概要
対象
国内におけるstageⅠ、 Ⅱもしくは腹腔動脈合併切除術を施行したstageⅢの浸潤性膵管癌術後患者
(局所残存腫瘍・顕微鏡的残存腫瘍なし、 術中の腹腔洗浄液細胞診で癌細胞を認めない、 遠隔転移または悪性腹水なし)
方法
377例を以下の2群に1:1で割り付けた。
S-1 (体表面積1.25m²未満は40mg、 1.25m²以上1.5m²未満は50mg、 1.5m²以上は60mg) を1日2回、 28日間連続経口投与し、 その後2週休薬。 6週毎に最大4サイクル繰り返す。
GEM1000mg/m²をday1,8,15に投与、 その後1週休薬。 4週毎に最大6サイクル繰り返す。
評価項目
- 主要評価項目:OS
- 副次評価項目:RFS、 有害事象 (AE) 、 健康関連QOL (HRQOL)*
*EuroQol 5-dimensional questionnaire (EQ-5D) を用いて評価
JASPAC 01試験の結果
患者背景
両群間で手術術式以外は同様であった。
OS中央値
(95%CI 37.8-63.7ヵ月)
(95%CI 22.5-29.6ヵ月)
HR 0.57 (95%CI 0.44-0.72)、 非劣性p<0.0001、 優越性p<0.0001
OS率 (3年時、 5年時)
- S-1群:59.7%、 44.1%
- GEM群:38.8%、 24.4%
RFS中央値
(95%CI 17.4-30.6ヵ月)
(95%CI 9.7-13.6ヵ月)
HR 0.60 (95%CI 0.47-0.76)、 p<0.0001
RFS率 (3年時、 5年時)
- S-1群:39.2%、 33.3%
- GEM群:22.6%、 16.8%
HRQOL
6ヵ月以内のスコアの平均変化は両群間に有意差はなかったが、 12ヵ月から24ヵ月にかけてはS-1群の方がGEM群より有意に良好であった。
AE
- 高頻度 (≧5%) に認められたGrade3-4のAEは、 S-1群では白血球・好中球・ヘモグロビン・血小板値の異常、 疲労、 食欲不振、 下痢であり、 GEM群では白血球・好中球・血小板・ヘモグロビン・AST値の異常、 食欲不振、 疲労であった。
- GEM群ではGrade5の感染症が2例 (胆管炎1例、 肺炎1例) 報告された。
- GEM群42%、 S-1群28%が治療完了前に中止となった (p=0.0050) 。
- GEM群35%、 S-1群59%が減量することなく、 プロトコール治療を完了した (p<0.0001) 。
著者らの結論
日本人の浸潤性膵管癌術後患者において、 S-1による術後化学療法は、 GEMと比較し、 OSおよびRFSを有意に延長させた。