HOKUTO編集部
1年前
外来化学療法を受けるがん患者さんの摂食障害に焦点をあて、 スマートフォンを活用した新たに「WASHOKU」研究が立ち上げられました。 WASHOKU研究を主導する水上拓郎先生に、 研究の狙いや今後の展望について解説していただきました (全3回連載)。
外来化学療法を受けるがん患者はがんによる症状のみならず多くの有害事象を経験するが、 そのうちがん患者の”食”に影響しうる有害事象を最近では摂食関連症状と呼びます。
がん患者にとって良好な”食”や栄養状態を維持することは治療の恩恵を最大限に受けるためにも非常に重要であり、 この摂食関連症状をいかに管理するかは化学療法に関わる医療者にとってひとつの重要な課題です。
しかしながら、 食欲不振・口内炎および味覚障害などの明らかに摂食関連症状と判断される症状以外にも、 しびれやだるさといった一見すると摂食関連症状かわからない有害事象もまたがん患者の”食べられない原因となっていることが報告されており、 いまだ摂食関連症状は定義されていないのが現状です。
さらに国によって、 日本に限っても地域や季節によって”食“は変化します。 本邦における摂食関連症状を定義できるような知見を得ることは、 医療者が摂食関連症状を理解し、 管理するために求められています。
令和3年3月に「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が改訂され、 デジタルデバイスやオンラインなどを介した研究参加への同意の取得 (e-コンセント) が可能となりました。 これによって研究の説明から同意取得までの一連のプロセスをほぼ遠隔で行うことが可能となり、 離れた場所からでもがん患者さんが研究に参加することが可能となりました。
これに加えて、 情報通信技術 (ICT) サービスの利用動向もまた変化をしており、 総務省の通信利用動向調査によると2019年における個人のモバイル端末の保有状況は80%を超えるに至っています (スマートフォンは67.6%)。 高齢者の保有率はやや遅れているものの、 今後モバイル端末を活用したデータの収集を行うことは新たな臨床研究の方法となりつつあります。
今回、 がん患者さんの”食“ (特に摂取熱量) に影響し得る有害事象を網羅的に調べてリスト化し、 “食べられない”原因を明らかにしようと考え、 このWASHOKU研究を立ち上げました。
スマートフォンを用いて国内どこからでも臨床研究に参加することができる、 新しい臨床研究の試金石となることを願っています。
外来化学療法を受けるがん患者の食に関する観察研究(WASHOKU)ホームページ
参加を希望される患者さま、ご協力をいただける医療施設の皆さまがおられましたら以下のアドレスまでお気軽にお問い合わせください。
【第一回】【臨床研究解説】WASHOKU試験とはなに?―その背景と狙い―
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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