海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前
東京慈恵会医科大学泌尿器科の下村達也氏ら研究グループは、 転移性ホルモン感受性前立腺癌 (mHSPC) 患者を対象に、 アンドロゲン受容体経路阻害薬 (ARPI) 治療開始から3ヵ月後の生存転帰を推定するサロゲートマーカーに用いる前立腺特異抗原 (PSA) 奏効率とPSA絶対値の有用性をリアルワールドデータ (RWD) 研究で検討した。 その結果、 PSA奏効率はベースラインの臨床因子の影響を受けにくく、 PSA絶対値と比べて有用なサロゲートマーカーであることが示唆された。 研究結果はProstate誌に発表された。
数学的にも、 絶対値単体より反応率の方が予測精度が高くなる傾向にあるといえます。
PSA動態は、 ARPIによる治療を受けたmHSPC患者の生存転帰を推定するための貴重なサロゲートマーカーである。 一般的にPSA奏効率およびPSA絶対値の双方が評価されるが、 実臨床でどちらのマーカーが有用か判断することが臨床上重要である。
そこでこの研究では、 ARPI 2剤併用療法開始から3ヵ月後にPSA奏効率および絶対PSA値を比較し、 実臨床で用いるサロゲートマーカーとしてどちらの方が有用かRWD研究で検討した。
2018年2月-2023年6月にアビラテロン、 エンザルタミド、 アパルタミドなどのARPIによる治療を受けたmHSPC患者273例を対象とし、 治療開始から3ヵ月後にPSA奏効率、 PSA絶対値などのPSA動態を評価した。
評価項目は去勢抵抗性前立腺癌 (CRPC) までの期間 (CRPCFS)、 がん特異的生存期間 (CSS)、 全生存期間 (OS) であった。
治療開始から3ヵ月後のPSA絶対値に対するYouden indexは0.740ng/mLであった。 PSA値が0.740ng/mLを超える患者と0.740ng/mL以下の患者では、 生存転帰 (CRPCFS、 CSS、 OS) に有意差が認められた。
治療開始から3ヵ月後のPSA奏効率に対するYouden indexは-99.80%であった。 PSA奏効率が-99.80%以上の患者と-99.80%以下の患者でも、 生存転帰 (CRPCFS、 CSS、 OS) に有意差が認められた。
PSA絶対値が0.740 ng/mLを超える患者と0.740 ng/mL以下の患者では、 初診時PSA値 (iPSA)、 年齢、 PS、 リンパ節転移、 骨転移の広がり (EOD)、 CHAARTED基準、 LATTITUDE基準、 Hb、 ALP、 LDHなどのほとんどの臨床因子に有意差が認められた。
一方、 PSA奏効率-99.80%を超える患者と-99.80%以下の患者では、 年齢以外の臨床因子に有意差は認められなかった。
著者らは 「PSA絶対値はベースラインの臨床因子による影響を受ける一方で、 PSA奏効率は治療開始時から生存転帰を的確に予測できるため、 PSA絶対値と比べてPSA奏効率の方が臨床的に有用なサロゲートマーカーであった。 この研究で得られた結果は、 ARPI 2剤併用療法開始後早期の治療方針決定の一助となると思われる。 この結果を検証するためには詳細な研究が必要である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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