海外ジャーナルクラブ
2ヶ月前

JCOG1806は、 初期薬物療法により臨床的完全奏効 (cCR) が得られたHER2陽性原発乳癌に対し、 手術省略の有用性を評価する単群検証的試験である。 今回、 研究事務局の重松英朗氏らJCOG乳癌研究グループは、 本試験の副次的解析として、 手術省略の前提条件となるcCRの頻度と臨床的特徴を探索的に検討した。 その結果、 HER2陽性早期乳癌患者の57.6%が初期薬物療法後にcCRに到達し、 ER陰性、 HER2 IHC 3+、 高い組織学的グレードがcCRの予測因子として同定された。 研究成果はInternational Journal of Clinical Oncologyに掲載された。

早期乳癌に対する治療戦略は、 根治性を保ちつつ整容性を高める方向へ進化してきました。 薬物療法で臨床的完全奏効 (cCR) が得られた患者の手術省略は、 その到達点の一つです。 JCOG1806は、 初期薬物療法でcCRとなったHER2陽性早期乳癌に対する非切除療法の有用性を検証する単群検証的試験で、 2026年にPrimary endpointが公表予定です。 本副次的解析では、 手術省略の前提となるcCRの到達頻度と候補症例の特徴を示し、 約6割が適格で、 ER陰性、 HER2 IHC 3+、 高グレードが関連しました。 本結果は、 今後の手術省略を目指した治療戦略の検討や、 医師・患者間の良好な共有意思決定 (SDM) を支える基盤になると期待します。
非切除療法を検証する、世界的にも極めて稀なpivotal trialであり、新たな乳癌治療選択肢の創出につながることが期待されます。
初期薬物療法の進歩により、 HER2陽性早期乳癌では病理学的完全奏効 (pCR) を含む高い治療効果が得られる症例が増えている。 こうした状況を背景に、 初期薬物療法が奏効した症例に対する乳房および腋窩手術の省略は、 低侵襲治療の観点から重要な開発テーマとなっている。
一方で、 既報の手術省略に関する報告の多くは厳密に選別された奏効例を対象としており、 臨床実装に必要な前提条件である 「どの程度の割合が手術省略の適応となり得るcCRに到達するのか」 「どのような患者が候補になりやすいのか」 が十分に明らかではない。 したがって、 cCR到達頻度と患者特徴を明確化し、 治療選択や共有意思決定 (SDM) に活かすことがUnmet needsである。
本研究は、 JCOG1806試験の副次的解析 (探索的解析) である。 対象はcT1–2N0M0のHER2陽性乳癌で、 JCOG1806に登録された患者のうち、 適格例かつ初期薬物療法施行例を解析対象とした。
cCRは手術省略を意図した判定として、 初期薬物療法後に乳房造影MRIで造影腫瘤の消失を確認し、 乳房腫瘍床への針生検を組み合わせて評価した (HR陽性では必須、 HR陰性では任意)。 評価項目は、 ①cCR割合 (=手術省略の適格割合)、 ②cCRの予測因子、 ③non-cCR症例のうち術後病理でypT0となった症例の頻度 (=cCR判定の取りこぼし) とした。
JCOG1806では353例が登録され、 このうち適格条件を満たした340例が本副次的解析の対象となった。 初期薬物療法後にcCRと判定された症例は196例 (57.6%) であり、 これらが手術省略の適格とされた。
多変量解析では、 cCRの予測因子としてER陰性 (ER10%以上 : OR 0.41, p=0.011)、 HER2 IHC 3+ (OR 2.19, p=0.046)、 高グレード (grade III : OR 4.90, p=0.002) が同定された。 これらの所見は、 これまでに報告されているpCRの頻度および予測因子と整合しており、 手術省略を意図した本試験におけるcCR判定の妥当性が示唆された。
一方、 non-cCRと判定された136例のうち、 22.2%が術後病理でypT0であった。 これは、 画像+針生検によるcCR判定においても取りこぼし (false negative) が一定割合生じ得ることを示しており、 手術省略の候補選定精度を高める工夫が今後の課題であることが示唆された。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。