栄養療法マニュアル
1年前
本コンテンツは造血幹細胞移植時の栄養療法について、 専門医の視点からわかりやすい解説を行う企画です。 是非とも臨床の参考としていただければ幸いです。
目標とする総投与カロリーは個々の症例で計算することが強く勧められる。 代表的な計算方法に関しては以下の通りである。
当然のことながら各式での計算結果はズレが生じるが、 いずれかの式で計算して確認することが重要である。
造血幹細胞移植後の総カロリー必要量は概して1.3~1.5×BEEが推奨されることが多いが、 至適な目標総投与カロリーは不明である (図1)²⁾。
1.3~1.5×BEEという投与カロリーも世界的にみると以前と比べて低い目標となっている³⁾。 それはTPNに伴う副作用やコストの面を考慮して年々低い目標となってきているからと考えられる。
1984年にWeisdorfらが1.5×BEE程度の投与カロリーにて体重減少が認められなかったことを報告している³⁾。 Taveroffらも同様に1.5×BEE程度の投与カロリーにて体重減少が認められなかったと報告している⁴⁾。
これらの結果から、 上限として1.5×BEEまでの投与カロリーとすることは妥当と考えられる⁵⁾⁶⁾。
既報では同種造血幹細胞移植後の高血糖は急性GVHD、 非再発死亡のリスクとなり、 また1.0~1.3×BEEの総投与カロリーを維持した患者では有意な体重減少など栄養不良状態を呈する症例はいなかったことから、 1.0~1.3×BEEが総投与カロリーとして妥当と考えられている⁷⁾⁸⁾。 血糖値のコントロールに難渋する場合には1.0×BEE程度から血糖コントロールを行い、 可能であれば増量もしくは糖質以外で増やすなども選択肢となる⁹⁾。
ESPENのガイドラインにおける投与カロリー
ESPENのガイドラインにおいては、 非手術症例での総投与カロリーを25~30kcal/kg/dayと設定することが妥当と記載しており、 1.0×BEEとほぼ同等と考えられる¹⁰⁾。 ただし、 栄養学的に考えると1.0×BEEとはいわゆる基礎代謝量そのものであり、 心臓、 肺、 脳、 腎臓、 肝臓、 神経など基本的な臓器が機能していく為に必要なカロリーでしかない。 1.0×BEEしか投与しないということは運動などによる追加でのエネルギーの消費を考えていないこととなる為、 1.0 x BEEは最低限の目標とされている¹¹⁾。
活動度に応じた投与カロリーの調整
近年は移植後にもリハビリを活発に行うなど活動度を高める傾向がある。 活動度の回復具合なども勘案し、 血糖コントロールなどを含めて総投与カロリーを増やすことに問題がなければ、 1.3~1.5×BEE程度まで投与カロリーを上げていくのが良いのかもしれない。
移植前に既に低栄養が認められ低体重となっている症例では、 実体重で計算すると目標投与カロリーが過少となる場合がある。 このような場合はBASA-ROT tableでも確認してみたり、 理想体重を用いて計算をすることが勧められる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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