インタビュー
28日前

誰しも立ち止まり、 迷い、 そして踏み出した人生の瞬間がある。 医師の原点や転換点にフォーカスするインタビュー企画 「Doctor's Career」。 今回は、 関西医科大学附属病院 臨床腫瘍科教授の金井雅史先生に話を聞いた。 (前・後編の後編)
>>前編はコチラ
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターへの留学から帰国した2006年以降、 京都大病院でがん薬物療法の専門医としてのキャリアを本格的にスタートさせた。
当初は外来だけだったが、 京大病院に腫瘍内科が設立された2013年からは、 入院患者も含めた総合的な診療をするようになった。

「帰国当時はちょうど消化器系のがんでも薬が増え、 薬物療法を受ける患者が増加し始めた時期でした。 その後免疫チェックポイント阻害薬やゲノム医療も登場し、 がん薬物療法の分野がめざましく進化していることを肌で感じました」
実臨床での見識を深めるのと並行し、 別分野でのチャレンジも続けている。
1つ目は、 点滴の自動切り替え装置の開発だ。 「抗がん剤治療を受ける患者の増加」 と 「看護師の不足」 ――。 現場に横たわる課題を解決するために考案したもの。 2022年にAMED事業 「医療従事者の負担軽減のための医療機器・システム開発」 に採択され、 研究開発が加速、 あと一歩で薬事承認というところまできているという。
>>「電子カルテと連携した薬液パックの遠隔自動切り替え装置の開発」 について
2つ目は、 ウコンに含まれる 「クルクミン」 を用いた新規抗がん剤の研究開発だ。 抗がん作用のあるクルクミンの臨床応用について、 バイオアベイラビリティが低いことが長年の課題だったが、 クルクミン注射製剤 (TBP1901) の開発で課題を克服、 新規抗がん薬としての臨床応用を目指した研究を続けている。
こちらも2025年にAMEDの 「革新的がん医療実用化研究事業」 に採択され、 現在イヌを用いた非臨床安全性試験を実施中。 イヌでの安全性を確認した後、 ヒトを対象とした臨床試験に進むことを目指している。

思い返せば、 医師になった当時 (1990年代) は分子標的薬がなく、 抗がん薬の種類も限られていた。 2000年代に入って新規抗がん薬の開発が活発になり、 2014年には免疫チェックポイント阻害薬が臨床導入。 2019年からはがんゲノム医療もスタートした。
「薬は増えた。 ゲノム医療も臨床導入された。 以前と比べ、 薬物療法の実践にはより高度な知識が要求されるようになっている」
そんな課題意識を持ちながら、 2024年1月から関西医科大学附属病院がんセンターのセンター教授に着任。 同年7月からは新設された臨床腫瘍科の診療科長も務めている。

今から10年ほど前。 免疫チェックポイント阻害薬が劇的に効いた症例は鮮明に覚えている。 3~4回の投与でがんが消え、 その後10年以上生存した患者だ。
「抗がん薬の開発が進み多様化する中で、 一人ひとりの患者さんに適切な抗がん薬を選択し、 安全に使用する知識がさらに重要となってきます。 薬物療法に止まらず、 予防や発症抑制といったアプローチも含め、 トータルで長く生存する患者さんを増やすことは、 臨床腫瘍医の使命だと考えています」
見据えるのは、 若い世代の育成だが、 課題も多い。 日本のがん薬物療法専門医は約1,700人。 米国の約1万9,000人と比べ、 その少なさは顕著だ。 若手医師からは 「臨床腫瘍科はキャリアパスがイメージできない」 という声も聞かれる。

「実臨床を通じて課題を見つけ、 医療機器や医薬品の研究開発にも取り組んできた私の経験を共有したい。 本学は各分野の専門家が揃っており、 研究支援体制も充実している。 臨床現場に還元できるような研究テーマを見つけることができれば、 これほどやりがいのある仕事はありません」
現場での診療、 研究、 そして人材育成。 すべてを通じて、 がん薬物療法の未来を切り拓く挑戦はこれからも続く。


編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。