HOKUTO編集部
11日前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 第12回は "遭遇した発作のチェックポイント" について解説いただきます。
ERや病棟で発作に遭遇した際は、 その発作にはどんな特徴があったのかを観察しカルテ記載することも大事な任務です。 けいれん発作であれば、 左右差をチェックします。 例えば、 左半身優位にけいれん発作を呈していたのであれば、 その発作は反対側の右大脳半球 (特に運動野) から発生していることを示唆します。
発作をチェックすることで脳のどの領域から発作が発生したかを類推できるのですが、 この作業仮説を 「発作症候学 (semiology)」 とよびます。 てんかん発作は正常脳機能を介した発作の発現であるため、 その発作の性状を把握することで発作の焦点を類推できるのです。
けいれん発作時のチェックポイントとして代表的な発作症候学の所見を紹介します。
発作が全身性のように見えても、 けいれんの程度に左右差がでることがあります。 けいれんの症状が顕著な側と反対側の前頭葉 (運動野) 由来の発作を示唆します。
けいれん発作では、 四肢の状態 (ポーズ) も重要です。 一側の上肢を伸展させて、 その反対側が屈曲した状態でのけいれん発作であれば、 伸展させた上肢と反対側の脳 (運動野) 由来を示唆します。 この時の上肢のポーズがドットで示された 「数字の4」 に似ていることからFigure of 4 signとよばれ、 発作焦点の類推材料として特異度が高い所見です。 図の場合、 左上肢を伸展させているので、 右の運動野由来の発作を示唆します。
眼球偏向 (eye deviation) では、 偏倚している方向と反対側の脳 (前頭葉) からの発作を示唆します。 典型的には、 持続性で力強い不自然な眼球と頭部の偏向を呈します。 また、 一般にてんかん発作中の眼は 「開眼」 しており、 一方の心因性発作では 「閉眼」 していることが多いです。
けいれん発作と言っても色々な種類があります。
四肢の筋肉が持続的に収縮した発作型です。 イメージとしては 「力強く持続的に突っ張らせた状態」 で、 その持続時間は数秒から数分単位です。 焦点・全般発作のどちらでもありえる発作型です。 両者の鑑別としては、 発作の始まり段階での左右差で判断します。
短い筋収縮と弛緩を規則的に繰り返す発作で、 リズミカル (律動的) な繰り返す発作症候で、 強直発作に続けて生じることがあります。 間代発作の律動的な動きは発作の終盤になるにつれて段々と間延びしていき頓挫します。
強直発作から律動的な間代発作に進展していく発作型です。 狭義には全般てんかんの発作型としてのGTCS (generalized tonic-clonic seizure) があります。 一方で、 焦点発作からの両側性に進展していく発作をFBTCS (focal to bilateral tonic-clonic seizure) と表現します。
ミオクローヌスとは不随意運動の総称ですが、 これがてんかん性に出現したものをミオクロニー発作とよびます。 短時間での急激な筋収縮を呈する発作で、 主に顔面や四肢、 体幹で生じます。 コモンなてんかん症候群でいえば、 特発性全般てんかんの発作型としてしばしば遭遇します。 その場合は全般発作に分類されますが、 臨床的には非対称性に出現することもしばしばあり、 焦点発作と間違えないように注意します。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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