海外ジャーナルクラブ
2年前
Satoらは、 クローン病 (CD) 患者の慢性腸不全を伴う短腸症候群 (SBS-IF) に対する、 グルカゴン様ペプチド (GLP) -2アナログ製剤テデュグルチド (TED) の短期投与の効果を後ろ向き研究で検討。 その結果、 TED投与は、 SBS-IFを伴うCD患者では8週、 結腸連続性を有さない患者においては4週の短期投与で在宅静脈栄養 (PS) 量を有意に減少させる効果があったことを報告した。 本研究はClin Nutr誌において発表された。
かなり稀な疾患であるため、 なかなかRCTを行うのは難しいかもしれません。 単施設後ろ向きコホート研究結果であるので、 現在のアカデミアではRCTと区別するためにタイトルに研究デザインを入れたり、 テキストの結果の語調を弱めたりすることが多いです。
▼短腸症候群とは?
短腸症候群 (Short Bowel Syndrome: SBS)とは、 広範な腸管切除に起因する消化吸収障害 (栄養障害、 下痢、 脱水、 体重減少など)を特徴とする症候群です¹⁾²⁾。 小児では壊死性腸炎や先天性異常、 成人では腸間膜血管疾患や炎症性腸疾患、術後合併症が最も一般的な原因です³⁾。
腸管大量切除直後、 患者の栄養状態を維持するため、 中心静脈栄養 (Total Parenteral Nutrition:TPN) を要します。 多くは腸管機能が順応していきますが、 腸管機能不全を伴う短腸症候群 (SBS-IF) として、 生涯TPNを要することがあります²⁾。
ただし、TPNの長期使用は 肝障害、 カテーテル関連血流感染症など重大な副作用を引き起こす可能性があり、 その長期的な管理は困難を伴うことが知られています⁴⁾。
CD患者の慢性腸管不全を伴うSBS-IFに対するTEDの短期効果は、 依然として不明である。
2020~2021年にTEDを投与したSBS-IFを伴うCD患者のカルテを後ろ向きに調査
PS量の変化、 PS量が8週目に20%以上減少した患者の割合
結腸連続性の有無別に見たPS量の変化、および観察期間中の有害事象
SBS-IFのために在宅PSを受けた18例のCD患者が本試験に参加した。 8週間以内に耐えられない腹痛や嘔吐があったため、 2例 (11%) の患者が除外された。 残りの16例は、 観察期間中、 TEDを継続した。
TEDはPS量を15,825mL/週から10,700mL/週へと有意に減少させ (p=0.0038)、 8週目には43.8%の患者 (7例) でPS量が20%以上減少していた。
PS量は結腸連続性がない11例では4週目に有意に減少した(p = 0.0078) が、 結腸連続性のある5例では減少が認められなかった。
2例が在宅PSの中止に成功した。
重篤な有害事象は認められなかった。
TED投与は、 短腸症候群に伴うクローン病患者において8週目に、 また結腸が連続していない患者において4週目に、 在宅PS量を有意に減少させた。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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