HOKUTO編集部
2年前
HOKUTOユーザーの医師44名に聞きました。
アンケート結果:ニボルマブ+CF併用療法が最多で、 ペムブロリズマブ+CF併用療法となりました。
国立がん研究センター 中央病院
頭頸部・食道内科
遠隔転移を有する切除不能な食道扁平上皮がんに対する初回治療は、 洋の東西を問わず、 長らくシスプラチンと5-FU併用 (CF) 療法が頻用されていたが、 エビデンスは乏しく、 本邦の後ろ向き研究では奏効割合が約35%、 全生存期間 (OS) 中央値が約10カ月¹⁾と治療効果は限定的であった。
そのような中、 食道がんの二次治療以降で免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められ、 KEYNOTE-181試験²⁾やATTRACTION-3試験³⁾の結果、 本邦でも抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ (PD-L1 CPS 10以上のみ) やニボルマブが既治療の切除不能な食道がんに対して使用可能となった。
これらの結果を基に、 初回治療における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められ、 ペムブロリズマブのCF療法に対する上乗せを検討したKEYNOTE-590試験、 ニボルマブのCF療法に対する上乗せおよびニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブ併用療法を検討したCheckMate 648試験が行われた。
KEYNOTE-590試験には食道扁平上皮がんに加えて食道腺がんも登録されており、 全体集団におけるOS中央値はCF療法群の9.8カ月に対し、 ペムブロリズマブ+CF療法群で12.4カ月と優越性が証明された (HR 0.73、 95%CI 0.62-0.86)。 さらに事前に規定された全ての主要評価項目に関してペムブロリズマブの上乗せによる優越性が証明された⁴⁾。
またCheckMate 648試験では食道扁平上皮がんのみを対象として、 主要評価項目はPD-L1陽性例 (TPS 1以上) におけるOS等が設定された。
PD-L1陽性例におけるOS中央値は、 CF療法群の9.1カ月に対し、 ニボルマブ+CF療法群で15.4カ月 (HR 0.54、 99.5%CI 0.37-0.80)、 ニボルマブ+イピリムマブ群で13.7カ月 (HR 0.64、 98.6%CI 0.46-0.90) と、 ニボルマブ+CF療法、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法のいずれも優越性が証明された。
なお、 PD-L1の発現状況によらない全体集団におけるOS中央値は、 CF療法群の10.7カ月に対し、 ニボルマブ+CF療法群で13.2カ月 (HR 0.74、 99.1%CI 0.58-0.96)、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法で12.8カ月 (HR 0.78、 98.2%CI 0.62-0.98) と、 こちらでもニボルマブ+CF療法、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法の優越性が証明された⁵⁾。
この2件の臨床試験の結果から、 『食道癌診療ガイドライン 2022年版』においては、 本邦の遠隔転移を有する切除不能な食道扁平上皮がんに対する初回治療として、 ペムブロリズマブ+CF療法、 ニボルマブ+CF療法、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法がエビデンスレベルAで強く推奨されている。
これらの使い分けには明確な基準は確立されていないが、 CheckMate 648試験の追加解析では、 ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は肝転移を有する症例や高腫瘍量を有する症例では効果が乏しい可能性が示唆されている。
しかし、 実臨床においては全身状態 (PS) 不良や腎機能低下、 心機能低下によりシスプラチンが不適な対象がおり、 そのような症例に対してはPRODIGE5/ACCORD17試験⁶⁾の結果を参考に、 FOLFOX療法が選択肢となりうる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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