【まとめ】婦人科癌薬物療法アップデート2024–2025
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HOKUTO編集部

20日前

【まとめ】婦人科癌薬物療法アップデート2024–2025

【まとめ】婦人科癌薬物療法アップデート2024–2025
2020年代に入り、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) やPARP阻害薬の進展により、 婦人科癌領域の薬物療法は大きく変化しました。 本稿では、 がん研有明病院 総合腫瘍科の仲野兼司先生による人気連載『がん薬物療法注目論文レビュー』をもとに、 主要トピックを簡潔にまとめています。 
【まとめ】婦人科癌薬物療法アップデート2024–2025

卵巣癌

PARP阻害薬による維持療法の長期予後

 - オラパリブ (SOLO-1試験)
 - オラパリブ+ベバシズマブ (PAOLA-1試験)  

両試験ともに、 全生存期間 (OS) の延長効果が確認されている。 特にSOLO-1試験では、 治療開始から7年時点においてもOSの持続的な延長が示された。

これらの結果は、 PARP阻害薬が初回治療後の維持療法として再発予防に有効であり、 現在の治療戦略において不可欠な選択肢となっていることを裏付けている。

葉酸受容体標的ADCが承認直近

 - mirvetuximab soravtansine (MIRASOL試験)

白金製剤不応の卵巣癌は依然として予後不良であり、 新たな治療選択肢の開発が急務である。 近年、 葉酸受容体α (FRα) 陽性例を対象とした抗体薬物複合体 (ADC) mirvetuximab soravtansine (MIRV) の有効性が注目されている。

第Ⅲ相MIRASOL試験においては、 標準化学療法に対し無増悪生存期間 (PFS) およびOSの有意な延長が示されており、 2025年中には日本国内での承認が見込まれている。 さらに、 カルボプラチンやベバシズマブとの併用による第Ib相試験も進行中であり、 今後の適応拡大が期待される。

免疫療法は依然として課題

 - 腫瘍溶解性ウイルス剤+ICI (PROTA試験)  

子宮頸癌や子宮体癌と異なり、 卵巣癌におけるICIの有効性は依然として限定的である。 このため、 新たな免疫療法の開発が進められており、 近年では腫瘍溶解性アデノウイルス製剤TILT-123とペムブロリズマブの併用が注目されている。

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子宮体癌

新たな分子分類の登場

 - POLE型 (ultramutated)
 - MSI型 (hypermutated) 
 - Copy-number low型 (endometrioid) 
 - Copy-number high型 (serous-like)

従来、 子宮体癌は類内膜癌、 漿液性癌、 明細胞癌、 癌肉腫などの組織型に分類されてきた。

近年、 TCGA*による統合ゲノム解析に基づき、 4つの分子サブタイプが提唱され、 一部の臨床試験では組み入れ基準やサブ解析にも活用されている。 今後、 治療選択や試験設計における指標としての重要性が高まると考えられる。

※TCGA (The Cancer Genome Atlas) : 米国国立がん研究所 (NCI) と米国国立ヒトゲノム研究所 (NHGRI) が共同で行った、 がんの大規模ゲノム解析プロジェクト

ICI併用TC療法が新規承認

 - デュルバルマブ+TC (DUO-E試験) 
 - ペムブロリズマブ+TC (KEYNOTE-868試験)

従来の標準治療であるカルボプラチン+パクリタキセル (TC療法) に、 ペムブロリズマブやデュルバルマブを併用した第III相試験では、 PFSの延長が示され、 ペムブロリズマブではOSの延長も確認された。 これを受けて、 日本でも1次治療におけるICI併用療法が承認されている。

一方、 すでに2次治療として承認されているペムブロリズマブ+レンバチニブ療法は、 1次治療を対象とした第III相LEAP-001試験において、 有効性を示すことができなかった。

pMMRへのPARP阻害薬が新規承認

- デュルバルマブ+TC (DUO-E試験)

前述のDUO-E試験では、 デュルバルマブ併用TC療法後の維持療法としてオラパリブの有効性が検証され、 ミスマッチ修復機構正常 (pMMR) 患者で上乗せ効果が認められた。

これはPARP阻害薬によるDNA損傷の蓄積が腫瘍免疫原性を高め、 ICI効果を増強した可能性を示唆しており、 本結果を踏まえ2024年11月に国内承認された。

HER2やTROP-2標的ADCが開発中

 - T-DXd (DESTINY-PanTumor02試験)
 - サシツズマブ ゴビテカン (TROPiCS03試験)

子宮体癌および癌肉腫では一定割合でHER2陽性例が認められ、 T-DXd (トラスツズマブ デルクステカン) の有効性が複数の試験で報告されている。 また、 TROP-2を標的とするADC・サシツズマブ ゴビテカンも有望な治療選択肢とされており、 第II相TROPiCS-03試験で有効性と安全性が示され、 今後の展開が期待されている。

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子宮頸癌

1次治療 : ICI+化学療法でOS延長

 - ペムブロリズマブ+化学療法 (KEYNOTE-826試験) 
 - アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法 (BEATcc試験) 

進行子宮頸癌の1次治療においては、 TC療法にペムブロリズマブを併用したKEYNOTE-826試験において、 OSの有意な延長が示された。 本結果を受けて、 日本でもペムブロリズマブ併用療法が承認されている。

さらに、 ベバシズマブ併用化学療法にアテゾリズマブを追加したBEATcc試験でも、 PFSおよびOSの延長が報告されており、 今後の国内承認が期待される。

2次治療 : セミプリマブの有効性が確立

 - セミプリマブ (ENGOT-cx9試験)

再発・転移性子宮頸癌の2次治療においては、 抗PD-1抗体セミプリマブの有効性が確立されている。 EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9試験において、 セミプリマブは従来の化学療法に比べてOSを有意に延長し、 最終解析でもこの傾向が維持されていた。

CCRT : ペムブロリズマブ併用の有効性

 - ペムブロリズマブ+CCRT (KEYNOTE-A18試験) 

局所進行子宮頸癌に対するシスプラチン併用放射線化学療法 (CCRT) にペムブロリズマブを追加したENGOT-cx11/GOG-3047/KEYNOTE-A18試験では、 PFSおよびOSの有意な延長が示された。 この結果を受け、 2024年11月に日本でもペムブロリズマブが局所進行子宮頸癌に対する適応として追加承認された。

チソツマブ ベドチンが新規承認

 - チソツマブ ベドチン (innovaTV 301試験) 

ICIの適応拡大に伴い、 後方治療における新たな選択肢が求められている。 組織因子 (TF) を標的とするADC・チソツマブ ベドチン (TV) は、 innovaTV 301試験で従来の化学療法に対するOS延長を示した。 現在はカルボプラチンやペムブロリズマブとの併用療法も開発が進められており、 今後、 TVはICIと並ぶキードラッグとしての活用が期待される。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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