【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】血液内科関連の腎障害(鈴木智先生)
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亀田総合病院

9ヶ月前

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】血液内科関連の腎障害(鈴木智先生)

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】血液内科関連の腎障害(鈴木智先生)
本コンテンツは本年2月23日に開催された「亀田総合病院内科グランドセミナー2023」にて行われた講演を基に作成したものとなります。 多くの先生の臨床の参考となれば幸いです。 

講演情報

講師:鈴木 智先生

亀田総合病院 腎臓高血圧内科

はじめに

腎臓内科で血液内科関連の腎障害を診る機会が増えている。 今回は代表的な腎障害について解説する。 

血液内科関連腎障害の3つのポイント

  1. 多発性骨髄腫による腎障害は、 骨髄腫腎と言われてきたcast nephropathyが代表的であったが、 近年多発性骨髄腫でなくても、 M蛋白が腎障害に強く関与する疾患として、 MGRSが注目されている。 近年MGRSを腎内で治療する施設もでてきた。
  2. 血栓性微小性血管症 (TMA) は、 血液内科関連でも起こし得る。 臨床診断 (溶血性貧血、 腎機能障害、 血小板低下) と組織学的な診断で乖離することに注意が必要である。
  3. 薬剤関連腎障害では、 イマチニブの過量投与による腎機能障害は見逃されている。

血液疾患に関連する腎疾患

血液疾患に関連する腎疾患として代表的なものとして以下のようなものが挙げられる。 
  • Dysproteinemia:アミロイドーシス、 Cast nephropathy (骨髄腫腎)、 沈着症の腎炎
  • 免疫学的な腎炎:C3腎炎、 Fibrillary腎炎
  • 腎臓への直接浸潤:リンパ腫、 白血病細胞
  • その他:TMA、 薬剤性腎障害

代表的な腎障害①:MGRS

monoclonal gammopathy of renal significanceの略。 近年、 多発性骨髄腫でなくても、 M蛋白が関連する腎障害としてMGRSという概念が出てきた。 MGRSは骨髄腫に伴う治療で改善することがある。 最近は、 腎臓内科で治療する施設がでてきており、 今後腎臓内科医も知識をつけることは重要である。

MGRSとは

以下の2つを満たすことである。

  1. 形質細胞もしくはB細胞性リンパ増殖性疾患による単クローン性の免疫グロブリンにより1つ以上の腎病変を呈するもの (cast nephropathyは除く)
  2. 背景にある形質細胞やB細胞の増殖が、 血液内科的に治療適応の基準を満たさないもの

ポイント

M蛋白関連の腎障害はモノクローナルなもの 非モノクローナルなものがあり、 非常に多彩である。

血液内科関連の腎生検に必要な検査

腎臓内科医は、 検査にあたり、 どこまで自施設でできるかを理解する必要がある
  • 蛍光抗体法:kappa、 lambda、 (C4d、 IgG subclass、 パラフィン切片からの蛍光抗体法)
  • 電子顕微鏡:撮影場所 (糸球体or 尿細管) を指定する。
  • 酵素抗体法:kappa、 lambda、 congo red/DFS染色、 質量分析

代表的な腎障害②:血栓性微小性血管症 (TMA)

TMAを起こす疾患は、 以下のものがある。

  • STEC (Shiga toxin-producing Escherichia coli)-HUS (hemolytic uremic syndrome)
  • atypical HUS
  • TTP (Thrombotic thrombocytopenic purpura)
  • 二次性TMA

その中で、 血液内科関連TMAは、 M蛋白、 リンパ腫、 移植に関連するものがある。

下記の症状がある場合は臨床的にTMAと診断される。

・血小板減少
・溶結性貧血 (microangiopathic hemolytic anemia:MAHA)
・重要臓器障害

下記を認める場合は組織学的に診断される。

・糸球体内皮細胞剥離像
・血栓閉塞

臨床診断と組織学的な診断

TMAの臨床診断と組織学的な診断では若干の乖離 がある。 組織学的にTMAを認めても、 血小板減少や MAHAが目立たないこともある。

組織学的TMAを起こす原因

  • 薬剤:カルシニュリン阻害剤(CNI)、 Mitomycin C、 mTOR阻害薬
  • 感染症:肺炎球菌肺炎、 non-STEC下痢、 ウイルス感染
  • 悪性腫瘍関連:Adenocarcinoma、 Graft-versus- host-disease
  • 移植:腎、 骨髄、 放射線治療

移植との関連

移植関連TMAの中で腎臓と腸の合併は稀で、 腸TMAは腎TMAと比べて腸のGVHDを多く合併していたとの報告もある。

小児の造血幹細胞移植後にCKD発症が多いのは、 一部に腎生検されていないGVHDによるrenal TMAが見逃されているのかもしれない。

代表的な腎障害③:薬剤性腎障害

イマチニブの過量投与による腎臓関連のイベントは意外に多く、 腎臓内科、 血液内科ともに推奨用量の認知度が高くない印象がある。

イマチニブの腎機能障害ごとの推奨用量 (薬剤性腎障害 診療ガイドライン 2016より)

CCr 40-50mL/分:1日1回 400-600mgを食後に経口投与

CCr 20-39mL/分:1日1回 200-300mgを食後に経口投与

CCr 20mL/分:1日1回 100mgを食後に経口投与

まとめ

腎臓内科医が介入することで、 血液内科医にとって有用な情報を提供でき、 患者のアウトカムを改善させることができると考える。

こちらの記事の監修医師
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HOKUTO編集部
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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