HOKUTO編集部
2ヶ月前

CAR-T細胞療法を契機に、 CD3標的二重特異性抗体を含むT細胞誘導療法の臨床応用が広がっている。 一方、 特異な作用機序に起因する有害事象として、 CRS (サイトカイン放出症候群) およびICANS (免疫エフェクター細胞関連神経毒性) への対応が重要となる。 現在は、 タルラタマブの登場により固形癌領域でも同様の管理が求められている。 本稿では、 CRSおよびICANSの評価と対応の要点を整理する (最終更新日 : 2026年6月17日)。
CRSの重症度 (Grade) は、 ASTCT Consensus Grading 2019²⁾に準じて判定する。 発熱 (≧38℃) をCRS発症の定義とし、 重症度は低血圧または低酸素のうち、 より重い方で判定する。

発熱は38℃以上で、 他の原因で説明できないものと定義する。 CRSの診断には発熱が必須である。 一方、 トシリズマブやステロイドなどの抗サイトカイン療法後にCRSが持続・進行する場合、 その後の重症度評価では発熱の有無を問わず、 低血圧または低酸素の程度で判定する。
治療の基本は、 全身ステロイド、 トシリズマブ、 支持療法である。 Grade別の対応は以下のとおりである。

全Grade共通の全身管理 : 発熱時はアセトアミノフェン650mgを4時間ごとに投与し、 冷却などの体温管理を行う。 好中球減少を合併する場合は広域抗菌薬を経験的に投与し、 必要に応じて入院管理を検討する。
トシリズマブの投与方法 : 8mg/kg (最大800mg) を1時間かけて静注する。 CRS発症から2時間以内の投与開始が重要である。 改善がない場合は8時間ごとに追加投与可能とし、 24時間以内は最大3回、 累計最大4回までとする。
CRS高リスク例への対応 : 高腫瘍量、 急速な腫瘍進行、 フェリチン・CRPなどの炎症マーカー高値、 高齢、 重篤な併存疾患、 投与開始4時間未満の早期CRS発症は高リスクの目安となる。 高リスク例では、 入院期間の延長や予防的トシリズマブの検討も選択肢となる。
神経毒性の評価は、 認知機能や運動麻痺を含めて1日2回以上行う。 Grade≧2では造影前後の脳MRI (困難な場合はCT) を実施し、 初期徴候があれば神経内科にコンサルトのうえ、 脳波検査でけいれん活動を評価する。
ICE (Immune Effector Cell–Associated Encephalopathy) スコアおよび重症度評価 (ASTCT Consensus Grading) は以下のとおり。
ICEスコア :

重症度分類 : ICANS Gradeは最も重い領域で決定する²⁾

ICANSへの対応は、 重症度および原因となる治療薬によって異なる (下表)。

追加評価 : 必要に応じて脳波、 頭部MRI、 腰椎穿刺などを検討する。 ICANSが遷延する場合は、 2~3日ごとの神経画像検査を検討する。
全Grade共通の管理 : 誤嚥予防、 経口摂取の一時中止、 嚥下評価を行い、 中枢神経抑制作用をもつ薬剤は可能な限り回避する。 ICANSは一般にトシリズマブの治療効果が乏しいため、 CRSを合併しない場合はステロイドを中心に対応し、 CRSを合併する場合はICANSへの対応に加えて、 CRSの重症度に応じた抗IL-6療法などを検討する。
T細胞誘導二重特異性抗体 (BsAb) では、 CRSおよびICANSの発現時期、 頻度、 重症度が薬剤によって異なる。 このため、 導入初期は各薬剤の添付文書や施設プロトコルに沿って、 入院管理または厳重な外来モニタリングを行う。
CRS高リスク例や忍容性確認が必要な症例では、 入院下での導入を検討する。 外来移行後も、 発熱、 悪寒、 呼吸困難、 意識変容などの早期受診基準を患者に共有し、 重症CRSが疑われる場合の緊急対応として、 医療機関受診前に使用するDEX 8–12mg×1回の内服指示を検討する場合がある。
CRSまたはICANS発現後の再投与可否は、 重症度、 症状消失までの期間、 再発の有無、 原因薬剤によって異なる (下表)。
CRS発現後の再投与可否 :

ICANS発現後の再投与可否 :

CAR-T細胞療法では、 輸注前に心機能、 神経学的所見、 感染症リスクなどを評価し、 CRSやICANSに備えた体制を整える。 ICANS高リスク例では、 レベチラセタムによるけいれん予防を検討する。
輸注後はCAR-T治療経験のある施設で、 入院または厳重な外来モニタリングを行う。 バイタルサイン、 血液検査、 CRP・フェリチン、 神経学的評価を定期的に確認し、 輸注後少なくとも2週間は医療機関近傍で待機する。 運転や危険作業は、 一定期間控える必要がある。
シルタカブタゲン オートルユーセル (カービクティ®) およびイデカブタゲン ビクルユーセル (アベクマ®) では、 ICANSとは異なる遅発性の神経毒性が報告されている。 免疫エフェクター細胞 (immune effector cell : IEC) 関連パーキンソニズム、 脳神経麻痺、 多発神経根炎などが含まれ、 症状出現時は神経内科・神経腫瘍科との連携を含めて評価する。
また、 CAR-T後には遷延性血球減少、 感染、 低ガンマグロブリン血症なども問題となる。 必要に応じて輸血、 G-CSF、 PJP・VZV予防、 免疫グロブリン補充などを検討し、 製剤や患者背景に応じて長期的にモニタリングする。
1) National Comprehensive Cancer Network: NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology - Management of CAR T-Cell and Lymphocyte Engager-Related Toxicities, Version 2.2026.
2) Biol Blood Marrow Transplant. 2019 ;25(4):625-638.

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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