海外ジャーナルクラブ
3ヶ月前
Tilkiらは、 ドイツの前立腺癌患者を対象に、 根治的前立腺全摘除術 (RP) 後の持続的な前立腺特異抗原 (PSA) 値の適切なモニタリング期間およびPSA値上昇と予後との関連をコホート研究で検討した。 その結果、 過剰治療を避けるために、 RP後は3ヵ月以上のPSAモニタリングが推奨され、 PSA値が持続的に高い患者ほど予後不良であることが明らかになった。 研究結果はJAMA Oncol誌に発表された。
検証コホートにおいて、 持続的PSAかつ前立腺全摘前PSAが20ng/mLを超える患者で、 前立腺癌特異的死亡リスクの有意な低下は確認されたものの、 全死因死亡リスクの低下は有意ではありませんでした。 この点について、 追跡期間が短く、 イベント数も少なかったため、 全死因死亡を評価する統計的検出力が不足していた可能性を指摘しています。
前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術 (RP) 後に、 持続的なPSA値を正確に記録する上で、 従来のモニタリング期間である1.5ヵ月から2.0ヵ月が十分であるか否かは明らかになっていない。
そこで、 PSA値の適切なモニタリング期間およびPSA値上昇と予後との関連をコホート研究で検討した。
ドイツの施設でRPを実施したT1N0M0からT3N0M0の前立腺癌患者4万3,298例を対象としたコホート研究 (探索コホート3万461例、 検証コホート1万2,837例) で、 ①RP前のPSA値が20ng/mL超と20ng/mL以下、 ②RP後の持続的なPSA検出と検出不能―との間に前立腺癌特異的死亡リスクおよび全死因死亡リスクに対する有意な相互作用があるか否かを、 以下について調整した上で評価した。
併せて、 PSA値の持続的な上昇と予後不良との関連性についても評価した。
RP後にPSAが検出不能だった患者と比較して、PSAが持続的に検出された患者においては、RP前のPSA値が20ng/mLを超えるPSA高値群では20ng/mL以下のPSA低群と比べて、 全死因死亡リスク (調整済みHR 0.69 [95%CI 0.51-0. 91]、 p=0.01、 交互作用に対するp<0.001) および前立腺癌特異的死亡リスク (調整済みHR 0.41 [95%CI 0.25-0.66]、 p<0.001、 交互作用に対するp=0.02) が有意に低下した。
この結果は、 前立腺体積の調整後も維持され、 前立腺癌特異的死亡リスクの検証コホートでも確認されたが、 PSA高値群では術後早期に補助療法が実施される傾向にあり、 それ以前に長期のPSA値モニタリング期間が設けられていれば、 PSA低値群と比べてPSA値が検出不能に達していた可能性があると考えられる。
PSA高値群はPSA低値群と比べてRP後のRT+ADTまたはADT実施までの期間が短く (中央値2.68ヵ月 [IQR* 1.51-4.40ヵ月] vs 3.30ヵ月 [IQR 2.00-5.39ヵ月])、 頻度が高かった。
この期間は、 観察対象患者のPSAが検出不能になるまでの期間 (中央値 2.96ヵ月 [IQR 1.84-3.29ヵ月] vs 3.37ヵ月 [IQR 2.35-4.09ヵ月]) よりも短かった。
PSA値の持続的な上昇には、 全死因死亡リスク (調整済みHR 1.14 [95%CI 1.04-1.24]、 p=0.004) および前立腺癌特異的死亡リスク (調整済みHR 1.27 [95%CI 1.12-1.45]、 p<0.001) 増加との関連がみられた。
著者らは 「RP後に3ヵ月間以上のPSA値モニタリングを実施することで過剰治療を最小限に抑えられると考えられる。 また、 この研究では、 持続的なPSA値が高いほど予後不良であった」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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