【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群
著者

HOKUTO編集部

28日前

【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群

【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群
National Comprehensive Cancer Network (NCCN) のガイドラインを紹介する本連載。 今回は、 CAR-T細胞療法のうち、サイトカイン放出症候群について概説します。 [Ver1.2024 閲覧日 : 2024年10月22日]
【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群

CAR-T細胞療法とは

CAR-T細胞療法は自己T細胞にCD-19等を標的とする遺伝子操作を加えることで、 患者の免疫系に腫瘍細胞を認識させるというものである。

癌免疫療法に加えて新たに導入された最新の治療選択肢であり、 本邦では以下のような商品ががすでに承認されている (HOKUTOのレジメン機能へ遷移します)。

- Tisa-cel (Tisagen lecleucel)

 キムリア® : CD19-CAR-T

- Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)

 イエスカルタ® : CD19-CAR-T

- Liso-cel (Lisocabtagen maraleucel)

 ブレヤンジ® : CD19-CAR-T

- Ide-cel (Idecabtagene vicleucel)

 アベクマ® : BCMA CAR-T

- Cilta-cel (Ciltacabtagene autoleucel)

 カービクティ® : BCMA CAR-T

CAR-T細胞療法の特徴的な合併症

CAR-T細胞療法はさまざまな癌腫において有効であることが確認される一方、 多くの副作用があることも知られている。

CAR-T細胞療法に関連する毒性リスト

特にサイトカイン放出症候群 (CRS)、 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群 (ICANS)、 貧血、 血小板減少、 腫瘍崩壊症候群 (TLS) などが問題となっている。 各々の特徴は以下のとおり。

【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群
NCCN Guideline Version 1.2024を基に編集部作成

抗BCMA CAR-T細胞療法の場合、 ICANSより遅発の特異的症状あり (11~108日)

なお、 BCMAを標的としたCAR-T細胞療法 (イデカブタゲン ビクルユーセル、 シルタカブタゲン オートルユーセルなど) では、新たなデータより、 ICANSの定義に当てはまらない神経毒性事象の可能性が報告されている。

(1) 治療に起因する運動・神経認知障害

MNTs; movement and neurocognitive treatment-emergent adverse events

パーキンソン病に類似した症状 : 動作緩慢、 非対称性の動作時および安静時の振戦、 姿勢不安定、 低い声、 人格変化、 記憶障害

リスク因子としては、 ベースライン時の高腫瘍量、 Grade2以上のCRS、 ICANSの既往、 CAR-T細胞の高拡大/持続が挙げられる。 また、 報告例では、 男性が多いとのこと。

最適な管理法は未確立であり、 MNTsの特徴を呈した症例には、 パーキンソン病治療薬であるレボドパが無効とされる。 軽症の場合、 デキサメタゾン1日10mgなどのステロイドを検討し、 持続性または難治性の場合、 循環CAR-T細胞量が多ければ シクロフォスファミドなどの化学療法によるCAR-T細胞除去を検討する。

(2) 多彩な末梢神経障害

報告されている神経障害には、 末梢性顔面麻痺、 脳神経症状、 末梢感覚神経障害、 末梢運動神経障害などがある。

軽症の場合は、 ステロイド治療を検討する。 急性炎症性脱髄性多発神経炎 (AIDP) 型の症状がある場合、 免疫グロブリン静注 (IVIG) を検討する。

サイトカイン放出症候群の管理

本稿では、 一連の合併症の中からサイトカイン放出症候群の管理について概説する。

CRSの進行を予防するためには迅速かつ緊急な介入を要する

まずは感染症や悪性腫瘍の進行など、 全身性炎症反応の原因を除外し、 好中球減少がある患者では、 感染症に対する経験的治療を行う。 米国移植細胞治療学会 (ASTCT) の分類基準とそれらの管理は以下のとおり。 抗IL-6受容体抗体薬 (トシリズマブ) と全身性ステロイドと支持療法が中心である。

【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群

発熱は、「他の原因に起因しない38.0℃を超える体温」 と定義される。 CRSを発症し、 解熱剤、 トシリズマブやステロイドなどの抗サイトカイン療法を受けた患者では、 その後のCRS重症度評価に発熱は用いない。 この場合、 CRSの重症度は低血圧または低酸素症によって決定される。

【注釈】
*1 アキシカブタゲン シロルユーセルまたはブレクスカブタゲン オートルユーセルでは、 CRS症状が24時間以上持続する場合、 トシリズマブを考慮できる。 リソカブタゲン マラルユーセルでは、 投与後72時間未満に発症したGrade 1のCRSに対してトシリズマブを考慮し、 デキサメタゾン10mg ×1の追加を考慮する。 投与後72時間以上経過して発症したCRSは、 対症療法を行う。
*2 CRSおよび/または神経毒性の治療のためにステロイドを投与されている患者では、 抗真菌薬を予防投与し、 施設のガイドラインに従ったブレークスルー感染症の厳重監視が求められる。
*3 アキシカブタゲン シロルユーセルの処方情報に従い、 潜在的な利益とリスクを考慮した上で、 ステロイドの予防投与を検討する。 予防投与は、 デキサメタゾン10mg 1日1回を3日間経口投与する (初回はCAR-T細胞投与前に服用開始)。
*4 アキシカブタゲン シロルユーセルでは、 トシリズマブに対する臨床効果にかかわらず、 トシリズマブ初回投与後、 デキサメタゾン10mg 24時間ごとに静脈内投与を考慮する。 リソカブタゲン マラルユーセルでは、 早期発症のCRSであれば、 デキサメタゾン10mg 12~24時間ごとに静脈内投与を考慮する。 イデカブタゲン ビクルユーセルでは、 デキサメタゾン10mg 12~24時間ごとに静脈内投与を考慮する。
*5 例えば、 メチルプレドニゾロン1,000mg/日を3日間静脈内投与した後、 250mg 12時間ごと×2日間、 125mg 12時間ごと×2日間、 60mg 12時間ごと×2日間、 と急速に漸減する。
*6 Anakinraは、 抗IL-6療法や高用量ステロイドに抵抗性の重症CRSに対する第一選択薬と考えられる。 ほかには、 siltuximab、 ルキソリチニブ、 シクロホスファミド、 IVIG、 抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン (ATG)、 髄腔内化学療法、 持続的腎代替療法 (CRRT) を用いた体外サイトカイン吸着も考慮される。 しかし、 これら治療の使用経験は限られているため、 感染リスクのような潜在的な安全性の懸念とのバランスをとる必要がある。
*Anakinraは現時点においては本邦では未承認の薬剤である。
NCCN Guideline Version 1.2024を基に編集部作成

関連コンテンツ

HOKUTOレジメン

- Tisa-cel (Tisagen lecleucel)

 キムリア® : CD19-CAR-T

- Axi-cel (Axicabtagene ciloleucel)

 イエスカルタ® : CD19-CAR-T

- Liso-cel (Lisocabtagen maraleucel)

 ブレヤンジ® : CD19-CAR-T

- Ide-cel (Idecabtagene vicleucel)

 アベクマ® : BCMA CAR-T

- Cilta-cel (Ciltacabtagene autoleucel)

 カービクティ® : BCMA CAR-T

ポストのGif画像
【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群の全コンテンツはアプリからご利用いただけます。
臨床支援アプリHOKUTOをダウンロードしてご覧ください。
今すぐ無料ダウンロード!
こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師
【NCCN】CAR-T療法の合併症 ①サイトカイン放出症候群