海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Chaunzwaらは、 進行または転移性の非小細胞肺癌 (NSCLC) 患者を対象に、 免疫療法を受けた患者の身体組成 (BC) と腫瘍学的転帰との関連を包括的マルチコホート解析で検討した。 その結果、 BCの変化が腫瘍学的転帰に影響を与えることが明らかとなった。 本研究はJAMA Oncolにて発表された。
Abstractの結論には"Automated CT-derived BC measurements should be considered"と強い語調で書かれていますが、 本文の結論はそのような記載はありません。 Abstractだけを読む際に注意すべき点の1つです。
BCと癌の転帰との関連は複雑であり、 完全には解明されていない。 NSCLCに関するこれまでの研究は、 小規模な単一施設のものに限られており、 不均一ではあるが有望な結果が得られてきた。
本研究の目的は、 進行または転移性NSCLCに対する免疫療法を受けている患者を対象に、 BCと腫瘍学的転帰との関連を評価することであった。
包括的マルチコホート解析であり、 Dana-Farber Brigham Cancer Center (DFBCC) で免疫療法単剤または化学療法との併用による治療を受けたコホートの臨床データを含め、 また、 第Ⅰ/Ⅱ相試験1108および第Ⅲ相試験MYSTICの化学療法群からデータを前向きに収集した。
ベースラインとフォローアップのCTスキャンのデータを収集し、 自動L3スライス選択とBCのセグメンテーション (骨格筋[SM]、 皮下脂肪組織[SAT]、 内臓脂肪組織) のためにディープニューラルネットワークを用いて解析した。 転帰は、 ベースラインのBC測定値または初回フォローアップスキャン時の変化に基づいて比較した。 2022年7月~2023年4月にデータを解析した。
主要評価項目は、 BC測定値と全生存期間 (OS) および無増悪生存期間 (PFS) との関連 (ハザード比 [HR] で評価) であった。
解析対象は合計1,791例で、 受けた治療の内訳は以下のとおりであった。
- DFBCCで化学免疫療法 (DFBCC-CIO) :
487例 (27.2%)
- DFBCCで免疫チェックポイント阻害薬単剤療法 (DFBCC-IO) : 825例 (46.1%)
- 1108試験でデュルバルマブ単剤療法 (1108試験) : 222例 (12.4%)
- MYSTIC試験で化学療法 (MYSTIC試験) :
257例 (14.3%)
年齢中央値 (IQR) は、 それぞれ以下の通りであった。
- DFBCC-CIO : 65歳 (58-74歳)
- DFBCC-IO : 66歳 (57-71歳)
- 1108試験 : 65歳 (26-87歳)
- MYSTIC試験 : 63歳 (30-84歳)
SM量の減少*は、 腫瘍学的転帰の悪化と関連していた。
DFBCC-CIOのHR
OS : 0.59 (95%CI 0.43-0.81)
PFS : 0.61 (95%CI 0.47-0.79)
DFBCC-IOのHR
OS : 0.74 (95%CI 0.60-0.91)
1108試験のHR
OS : 0.46 (95%CI 0.33-0.64)
PFS : 0.47 (95%CI 0.34-0.64)
MYSTIC試験のHR
PFS : 0.76 (95%CI 0.61-0.96)
この関連は、 男性患者で顕著にみられた。 Kaplan-Meier解析では、 MYSTIC試験およびDFBCC-CIOコホートの女性患者に有意な関連は認められなかった。
SAT密度の5%超の増加は、 3つの患者コホートにおいてOS短縮と関連していた。
DFBCC-CIOのHR
OS : 0.61 (95%CI 0.43-0.86)
DFBCC-IOのHR
OS : 0.62 (95%CI 0.49-0.79)
1108試験のHR
OS : 0.56 (95%CI 0.40-0.77)
SAT密度の変化は、 DFBCC-CIOのPFSとも関連していた (HR : 0.73 [95%CI 0.54-0.97] )。 これはKaplan-Meier解析にて、 主に女性患者で観察された。
著者らは 「このマルチコホート研究の結果から、 NSCLCに対する免疫療法中のSM量の減少は、 特に男性患者において予後不良のマーカーであることが示唆される。 また、 SAT密度の変化も特に女性患者において予後と関連している。 NSCLCの予後を決定する際には、 CTによる自動BC測定を考慮すべきである」 と述べている。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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