【解説】ASCO GI 2026 消化管領域で注目の6演題
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HOKUTO編集部

3ヶ月前

【解説】ASCO GI 2026 消化管領域で注目の6演題

【解説】ASCO GI 2026 消化管領域で注目の6演題
2026年1月8~10日に米国・サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム (ASCO GI 2026) から、 食道癌/胃癌/大腸癌における注目演題について、 国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科の山本駿先生にご解説いただきました。

解説医師

【解説】ASCO GI 2026 消化管領域で注目の6演題

切除可能食道扁平上皮癌

術前FLOTの第II相、 2年PFS率は約50%

切除可能な局所進行食道扁平上皮癌に対する日本の標準治療は、 術前DCF*療法+根治手術であるが、 術前DCF療法は高頻度で嘔気・嘔吐をきたし、 発熱性好中球減少症が一定の頻度で報告されているレジメンであり管理に難渋することがある。 さらにはシスプラチンを高用量投与することから大量補液を必要とし、 腎機能障害や心機能障害のリスクなど、 高齢者にとっては不適なレジメンである。

そのような中、 シスプラチンを含まない術前治療として開発が進められている、 術前FLOT療法**の第II相試験の長期成績が報告された。

*ドセタキセル+シスプラチン+フルオロウラシル
**フルオロウラシル+ホリナート+オキサリプラチン+ドセタキセル

試験の概要

術前FLOT療法の第II相試験は、 未治療のcT1N1-3M0-1、 またはcT2-3N0-3M0-1(M1は鎖骨上リンパ節のみ)の食道扁平上皮癌を対象に、 術前FLOT療法+根治手術の有効性および安全性を検討した日本の多施設共同研究である。 主要評価項目である病理学的奏効割合は既に昨年のASCO GI 2025で報告され、 事前に規定された基準を達成した。 今回は副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)、 全生存期間(OS)等が報告された。

試験の結果

本試験には54例が登録され、 フォローアップ期間中央値は27ヵ月であった。 解析対象となった53例では、 2年PFS割合が50.4%、 2年OS割合が78.2%だった。 また、 cM0の44症例では、 2年PFS割合が49.4%、 2年OS割合が76.4%と報告された。

小括

本試験については、 ASCO GI 2025では病理学的奏効割合が43.4%と短期的な有効性が報告され、 今回はより長期的な有効性の指標であるPFSとOSの結果が報告された。 ピボタル試験であるJCOG1109試験の対象と比べると、 75歳以上が登録されていること、 cM1症例が登録されていること、 クレアチニンクリアランス 50-60mL/分の症例が登録されていることから、 より病勢が進行した症例や臓器機能低下例が加わっていることも踏まえ想定され得る範疇の結果であったと考えられる。

以前日本から報告された術前FLOT療法のレトロスペクティブ研究も踏まえて考えると、 同療法は食道扁平上皮癌でも一定の治療効果が得られると推察される。 もちろん現状のエビデンスを考慮すると、 現状はシスプラチン不適例のオプションという立ち位置になるであろうが、 有害事象(AE)管理の観点からも、 術前FLOT療法は実臨床での導入が進むことが予期される。

切除不能胃・食道胃接合部癌

HERIZON-GEA-01 : HER2陽性例へのzanidatamab併用

試験の概要

HERIZON-GEA-01試験は、 未治療のHER2陽性の切除不能な進行胃・食道胃接合部癌を対象に、 HER2の異なる細胞外ドメインに結合する二重特異性抗体zanidatamab+化学療法、 およびzanidatamab+チスレリズマブ+化学療法の有効性と安全性について、 それぞれトラスツズマブ+化学療法と比較評価した第III相試験である。 主要評価項目はPFSとOSが設定された。

試験の結果

914例が登録され、 PFS中央値は、 zanidatamab+チスレリズマブ群12.4ヵ月 vs zanidatamab群12.4ヵ月 vs トラスツズマブ群8.1ヵ月と報告され、 zanidatamab+チスレリズマブ群(HR[95%CI]: 0.63[0.51-0.78])、 zanidatamab群(HR[95%CI]: 0.65[0.52-0.81])はいずれもトラスツズマブ群に対する優越性を証明した。

もう1つの主要評価項目であるOS中央値は、 26.4ヵ月 vs 24.4ヵ月 vs 19.2ヵ月と報告され、 zanidatamab群(HR[95%CI]: 0.80[0.64-1.01])はトラスツズマブ群に対する優越性を証明できなかった一方で、 zanidatamab+チスレリズマブ群(HR[95%CI]: 0.72[0.57-0.90])は優越性を証明した。 さらに、 PD-L1 TAP別のOSサブ解析では、 1%未満でHR(95%CI): 0.49(0.33-0.74)、 1%以上で0.82(0.60-1.10)といずれのコホートでも良好な傾向であった。

安全性に関しては、 zanidatamabを含む両群で全Gradeの下痢の治療関連有害事象 (TRAE) の発現頻度が高かった(zanidatamab+チスレリズマブ群: 82%、 zanidatamab群: 76%)ものの、 1サイクル中のロペラミド内服で制御可能であった。

>> HERIZON-GEA-01試験の詳細はこちら

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ILUSTRO : HER2-/CLDN18.2+例へのゾルベツキシマブ+NIVO+化学療法

試験の概要

ILUSTRO試験 (コホート4A/4B) は、 未治療のHER2陰性/CLDN18.2陽性例を対象に、 抗CLDN18.2抗体ゾルベツキシマブ+抗PD-1抗体ニボルマブ+mFOLFOX6*併用療法の有効性および安全性を検討した第II相試験である。 評価項目はPFS、 客観的奏効割合(ORR)、 OS等が設定された。

*フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン

試験の結果

有効性を検討したコホート4Bには71例が登録され、 PFS中央値は14.8ヵ月と報告された。 なおCLDN18.2発現別の解析では、 高発現(75%以上)例で18.0ヵ月、 中程度(50%以上75%未満)発現例で6.7ヵ月、 PD-L1 CPS 別の解析では、 PD-L1 CPS ≧1で23.6ヵ月、 PD-L1 CPS <1で12.1ヵ月と報告された。

ORRは62.1%であり、 CLDN18.2発現別では高発現例で68.1%、 中程度発現例で40.0%であった。 OS中央値はimmatureだったものの、 CLDN18.2高発現例でNE、 中程度の発現例で9.6ヵ月であった。

安全性に関しては、 コホート4全体において、 全Gradeで嘔気(80.5%)や食欲不振(72.7%)の頻度が高かったが、 Grade 3以上の頻度(嘔気: 0%、 食欲不振: 7.8%)は限られていた。

>> ILUSTRO試験の詳細はこちら

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「CAR様T細胞」 の第II相試験 : SOX+抗PD-1抗体への上乗せでORR改善

試験の概要

未治療のHER2陰性例を対象に、 環状ペプチドを組み込んだサイトカイン活性化Tリンパ球であるCAR様 (CAR-like) T細胞+抗PD-1抗体(sintilimab、 ニボルマブ、 またはペムブロリズマブ)+1Gy放射線照射+SOX (S-1+オキサリプラチン) 療法の有効性と安全性を抗PD-1抗体+SOX療法と比較評価した第II相試験である。 主要評価項目にはORRが、 副次評価項目はPFSや治療奏効期間(DOR)等が設定された。

試験の結果

100例が登録され、 ORRは76.0% vs 50.0% (p=0.007)と、 CAR様T細胞群の優越性が示された。 PFS中央値は10.3ヵ月 vs 7.4ヵ月(HR[95%CI]: 0.64[0.40-1.02])、 DOR中央値は10.3ヵ月 vs 6.0ヵ月(p=0.414)と報告された。 安全性としてはCAR様T細胞群で血小板減少やリンパ球減少、 白血球減少などの頻度が高い傾向にあった。

>> CAR様T細胞 第II相試験の詳細はこちら

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小括

今回のASCO GI 2026で最も注目された演題はHERIZON-GEA-01試験である。 今回示された同試験の中間解析の段階でzanidatamabとチスレリズマブを含む4剤併用療法は対照群に対しPFS/OSの優越性を証明しており、 プラクティス・チェンジを成し得たと考えられる。 もう1つの試験群であるzanidatamabを含む3剤併用療法は、 現時点では対照群に対するOSの優越性は示せなかったものの、 こちらは最終解析の結果待ちと考えられる。

AEに関しては下痢の発現頻度が目立ったが、 ロペラミドの予防内服で制御できれば、 実臨床においても忍容性は保たれると考えられる。 さらに、 PD-L1 TAP別のOSサブ解析では、 1%未満でHR(95%CI): 0.49(0.33-0.74)、 1%以上で0.82(0.60-1.10)とどちらのコホートでも良好な傾向であった。 今後の注目はどのような条件で本レジメンが承認され、 実臨床に導入されるかであろう。

ILUSTRO試験では特にCLDN18.2高発現例、 PD-L1 CPS ≧1の症例で良好な生存転帰が報告された。 現在、 同対象において、 ゾルベツキシマブ+ペムブロリズマブ+化学療法のペムブロリズマブ+化学療法に対するOSの優越性を検証する第III相LUCERNA試験が進行中であり、 今後の報告が期待される。

中国の第II相試験で用いられたCAR様 T細胞は、 「iRGD」 という環状ペプチドをT細胞表面に固定するため、 遺伝子改変が不要であるといった特徴を有している。 放射線の併用は腫瘍微小環境 (TME) のためとディスカッションでは述べられていたが、 極端なAEの増加を認めずORRの改善が得られた点は重要であろう。 今後は長期フォローアップにより、 どの程度OS延長に寄与するかが注目される。

切除不能大腸癌

切除不能進行大腸癌の初回薬物療法は、 胃癌同様、 遺伝子異常に基づき最適なレジメンが確立されている。 その中でもBRAF V600E変異陽性例に対しては、 昨年のASCO GI 2025で発表されたBREAKWATER試験の中間解析結果から、 mFOLFOX6*ベースへの化学療法にBRAF阻害薬エンコラフェニブ+抗EGFR抗体セツキシマブ(EC)上乗せの優越性が証明されている。 今回のASCO GI 2026では、 FOLFIRI**ベースの化学療法へのEC上乗せを検証した同試験のコホート3の結果が報告された。

またdMMR/MSI-high例に対しては、 CheckMate 8HW試験の結果から、 免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) 単剤に加えてdual immune checkpoint blockade (2種類のICIを同時に使用する治療法) の有効性が証明されているが、 今回はアテゾリズマブに抗VEGF抗体ベバシズマブとmFOLFOX6療法を上乗せしたレジメンを抗PD-L1抗体アテゾリズマブ単剤療法と直接比較したCOMMIT試験が報告された。

*オキサリプラチン+ホリナート+フルオロウラシル
**フルオロウラシル+ホリナート+イリノテカン

BREAKWATER:エンコラフェニブ+セツキシマブ、FOLFIRIとの併用でもORR改善

試験の概要

BREAKWATER試験 コホート3は、 未治療でBRAF V600E変異陽性の進行大腸癌を対象に、 FOLFIRI+ECをFOLFIRI±ベバシズマブ療法と比較評価した第III相試験である。 主要評価項目にはORRが、 副次評価項目はOSや安全性等が設定された。

試験の結果

コホート3でFOLFIRIベースの治療を受けた患者は147例であった。 ORRは、 FOLFIRI+EC群で64.4%、 対照群で39.2%と、 FOLFIRI+EC群の対照群に対する優越性が示された(p=0.0011)。

またOS中央値は両群いずれもimmature(HR[95%CI]:0.49[0.237-1.032])であり、 Grade 3-4のTRAE発現頻度は、 FOLFIRI+EC群で63.4%、 対照群で70.6%であった。 具体的には好中球減少や下痢、 白血球減少の頻度が高かった。

COMMIT : dMMR/MSI-high例へのAtezo+Bev+mFOLFOX6

試験の概要

COMMIT試験は、 未治療のdMMR/MSI-high症例を対象に、 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6をアテゾリズマブ単剤療法と直接比較した第III相試験である。 主要評価項目はPFSが、 副次評価項目はORRやOS等が設定された。

なお、 当初の試験デザインには比較のため、 ベバシズマブ+mFOLFOX6併用療法を検証する群も設定されていたが、 KEYNOTE-177試験でペムブロリズマブ単剤療法を受けた患者の約半数が12ヵ月以内に病勢進行した結果から、 登録中止された。 またCheckMate 8HW試験の結果を受けて2025年3月31日に登録が中断され、 102例における解析が行われた。

試験の結果

主要評価項目であるPFS中央値は、 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6併用群24.5ヵ月 vs アテゾリズマブ単剤群5.3ヵ月(HR[95%CI]: 0.439[0.23-0.84]、 p=0.0103)であり、 事前に規定した有意水準(p=0.0152)を満たしたことから、 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6併用群のアテゾリズマブ単剤群に対する優越性が示された。

ORRは86.1% vs 46.0%、 完全奏効 (CR) 割合は36.1% vs18.9% であり、 2年OS割合は67% vs 67%(HR[95%CI]: 1.04[0.47-2.28]、 p=0.90)であった。

Grade 3以上のAE発現割合は82.9% vs43.9%であり、 Grade 2以上の免疫関連AE (irAE) として皮疹(7.3%vs4.9% )や肺臓炎(0% vs 4.9%)、 腸炎(4.9% vs 4.9%)が報告された。

小括

BREAKWATER試験のコホート3の結果から、 FOLFOXのみならず、 FOLFIRIにおいてもECの上乗せ効果が示唆される結果であった。 最終的な判断にはさらなるフォローアップによる生存効果の評価が必要であるが、 現段階でもOSのHRは0.49と、 以前に報告されたFOLFOXベースの結果と同等であり、 AEの点からも、 FOLFIRI+ECは期待されるレジメンであろう。

またCOMMIT試験の結果から、 dMMR/MSI-high例においては、 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+mFOLFOX6併用療法も選択肢となり得る可能性が示唆された。 ただし、 CheckMate 8HW試験におけるニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブ併用療法は3年PFS割合が67%と良好な結果が得られており、 忍容性も保たれている。 ニボルマブ+イピリムマブのOSの結果は示されていないが、 mFOLFOX6療法では血球減少や末梢神経障害が生じうることから、 現状のデータから考えると、 ニボルマブ+イピリムマブが望ましいと考えられる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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