【J-TAIL-2】切除不能進行・再発NSCLCへのアテゾリズマブ上乗せは日本人にも安全かつ有効
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HOKUTO編集部

4ヶ月前

【J-TAIL-2】切除不能進行・再発NSCLCへのアテゾリズマブ上乗せは日本人にも安全かつ有効

【J-TAIL-2】切除不能進行・再発NSCLCへのアテゾリズマブ上乗せは日本人にも安全かつ有効
切除不能進行・再発NSCLCの日本人患者において、 抗PD-L1抗体アテゾリズマブ併用療法*の有効性および安全性を検証した多施設共同前向き観察研究J-TAIL-2の結果より、 各アテゾリズマブ併用療法の有効性と安全性はいずれも既報の3件の第Ⅲ相試験IMpower130、 IMpower132、 IMpower150の結果と同等であり、 これら3試験不適格の患者においても許容可能な安全性と有効性を有することが示された。 埼玉県立がんセンター呼吸器内科副部長の渡辺恭孝氏が発表した。
*①アテゾリズマブ+カルボプラチン (CBDCA) +nab-パクリタキセル (PTX)、 ②アテゾリズマブ+CBDCAorシスプラチン (CDDP) +ペメトレキセド、 ③アテゾリズマブ+抗VEGF抗体ベバシズマブ+CBDCA+PTX-のいずれか

本研究の背景

日本人患者のデータは不足していた

アテゾリズマブ併用療法は、 第Ⅲ相国際多施設共同非盲検無作為化試験であるIMpower130試験¹⁾、 IMpower132試験²⁾、 IMpower150試験³⁾の結果に基づき、 転移性非小細胞肺癌 (NSCLC) に対する1次治療として承認されている。

レジメンや試験結果の詳細はこちら (編集部作成)
 📅アテゾリズマ+CBDCA+nab-PTX
 📅アテゾリズマブ+CDDP+PEM
 📅アテゾリズマブ+CBDCA+PEM

しかしこれらの試験では日本人患者の登録が少なく、 日本の実臨床において一般的に遭遇する背景因子(ECOG PS≧2、 自己免疫疾患または間質性肺疾患の既往など)を持つ症例の多くが試験から除外されていた。

J-TAIL-2試験では、 NSCLCまたは進展型小細胞肺癌 (ES-SCLC) の日本人患者におけるアテゾリズマブ併用療法の有効性および安全性を評価した前向き観察研究であり、 今回はNSCLC患者の結果が報告された。

研究デザイン

対象は日本人NSCLC患者

20歳以上でアテゾリズマブ併用療法を開始する予定である切除不能進行・再発NSCLCの日本人患者を対象とした。

3群で評価、 G8スコア・各IMpower試験適格 / 不適格別に集団を分類

患者には、 IMpower130試験、 IMpower132試験、 IMpower150試験でそれぞれ評価済みのアテゾリズマブ併用療法が、 以下の3群においてそれぞれ投与された。

- atezo+CnP群 : 217例

 (アテゾリズマブ+CBDCA+nab-PTX)

- atezo+PP群 : 211例

 (アテゾリズマブ+CBDCA or CDDP+ペメトレキセド)

- atezo+Bev+CP群 : 386例

 (アテゾリズマブ+ベバシズマブ+CBDCA+PTX)

ベースライン時に70歳以上であった患者を対象にG8スコア*を用いた評価が行われ、 スコアにより中央値以上と未満の集団に分類された。

*Geriatric8 Screening tool:高齢者状態を3分程度で評価

各IMpower試験の適格患者はIMpower-like集団、 不適格であった患者(ECOG PS 2、 脳転移または間質性肺疾患を有する患者)はunlike集団として、 サブグループ解析で評価された。

12ヵ月OS率、安全性などを評価

主要評価項目は、 12ヵ月全生存 (OS) 率で、 副次的評価項目はOS、 無増悪生存期間 (PFS)、 奏効率 (ORR)、 安全性とした。

研究結果

国内150施設814例が登録された

2020年8月21日~22年2月3日に814例が登録された。 患者背景 (ITT集団) は以下のとおりで、 G8スコアの中央値は13点であった。

- 年齢中央値 : 69歳

- ≧75歳 : 21%

- 男性 : 70%

- ECOG PS 0/1 : 91%

- EGFR遺伝子変異陽性 : 31%

- G8スコア:中央値 : 13 (<中央値 : 21%)

- 脳転移あり : 27%

- IMpower適格性:unlike 67%、 like 33%

- 間質性肺疾患合併 : 4%

- PD-L1発現:

  • ≧50% 28%
  • 1%~ <50% : 36%
  • <1% : 36%

各群の12ヵ月OS率はIMpower試験結果と同等であった

追跡期間中央値:14.0ヵ月 (範囲 0.1-28.3ヵ月)

データカットオフ : 2023年2月3日

12ヵ月OS率 (95%CI)

【有効性解析集団 (791例) 】

  • atezo+CnP群 : 62.9%
(55.8-69.2%)
  • atezo+PP群 : 72.1%
(65.2-77.9%)
  • atezo+Bev+CP群 : 68.3%
(63.2-72.9%)

OS中央値 (95%CI)

【有効性解析集団】

  • atezo+CnP群 : 19.7ヵ月
(16.1-25.9ヵ月)
  • atezo+PP群 : 23.5ヵ月
(17.7ヵ月-NE)
  • atezo+Bev+CP群 : 17.3ヵ月
(15.6-19.9ヵ月)

サブグループ解析

IMpower-unlike集団のOS中央値(95%CI)

▼atezo+CnP群

  • IMpower-unlike集団 : 17.7ヵ月
(11.7-21.4ヵ月)
  • IMpower-like集団 : 25.9ヵ月
(16.1ヵ月-NE)
  HR 1.36 (0.91-2.05) 

▼atezo+PP群

  • IMpower-unlike集団 : 23.5ヵ月
(16.8ヵ月-NE)
  • IMpower-like集団 : 20.6ヵ月
(16.3ヵ月-NE)
  HR 1.08 (0.70-1.68) 

▼atezo+Bev+CP群

  • IMpower-unlike集団 : 16.4ヵ月
(14.3-18.8ヵ月)
  • IMpower-like集団 : 21.9ヵ月
(16.2ヵ月-NE)
  HR 1.49 (1.09-2.06) 

G8スコア≧中央値集団のOS中央値 (95%CI)

▼atezo+CnP群

  • G8スコア≧中央値集団 : 21.4ヵ月
(16.7ヵ月-NE)
  • G8スコア<中央値集団 : 8.8ヵ月
(6.2-18.1ヵ月)
HR 0.48 (0.28-0.82) 

▼atezo+PP群

  • G8スコア≧中央値集団 : NE
(NE-NE)
  • G8スコア<中央値集団 : 12.4ヵ月
(9.0-20.6ヵ月)
HR 0.28 (0.16-0.51) 

▼atezo+Bev+CP群

  • G8スコア≧中央値集団 : 22.3ヵ月
(17.1ヵ月-NE)
  • G8スコア<中央値集団 : 15.3ヵ月
(11.7-18.1ヵ月)
HR 0.49 (0.29-0.82) 

PFS(95%CI)

【中央値】

  • atezo+CnP群 : 5.6ヵ月
(5.1-6.9ヵ月)
  • atezo+PP群 : 7.0ヵ月
(5.5-8.3ヵ月)
  • atezo+Bev+CP群 : 6.3ヵ月
(5.7-6.7ヵ月)

【12ヵ月PFS率】

  • atezo+CnP群 : 28.7%
(22.6-35.0%)
  • atezo+PP群 : 31.0%
(24.7-37.5%)
  • atezo+Bev+CP群 : 20.9%
(17.0-25.2%)

ORR(95%CI)

  • atezo+CnP群 : 47.4%
(40.2-54.7%)
  • atezo+PP群 : 41.9%
(34.8-49.4%)
  • atezo+Bev+CP群 : 44.2%
(38.6-49.8%)

有害事象 (AE) 発現率

【安全性解析集団】

全GradeのAE

  • atezo+CnP群 : 87%
  • atezo+PP群 : 82%
  • atezo+Bev+CP群 : 91%

Grade3以上のAE

  • atezo+CnP群 : 61%
  • atezo+PP群 : 48%
  • atezo+Bev+CP群 : 67%

重篤なAE

  • atezo+CnP群 : 35%
  • atezo+PP群 : 28%
  • atezo+Bev+CP群 : 37%

【IMpower-unlike集団】

Grade3以上のAE発現 : 61.2%

【IMpower-like集団】

Grade3以上のAE発現 : 58.8%

【G8スコア≧中央値集団】

Grade3以上のAE発現 : 59.4%

【G8スコア<中央値集団】

Grade3以上のAE発現 : 67.4%

著者らの結論

日本人NSCLCにもアテゾリズマブ併用は有効

渡辺氏は 「切除不能進行・再発NSCLCの日本人患者におけるアテゾリズマブ併用療法の有効性と安全性は、 IMpower130/132/150試験で得られた結果と同等であった。 また、 有効性および安全性は、 G8スコアが中央値未満の患者と比較し、 70歳以上でG8スコアが中央値以上の患者でアウトカム転帰が良好であった。 サブグループ解析では、 IMpower-unlike集団においても、 アテゾリズマブ併用療法の有効性および安全性プロファイルは許容範囲内であることが示された」 と報告した。

出典

¹⁾ Lancet Oncol. 2019;20(7):924-937.

²⁾ J Thorac Oncol. 2021;16(4):653-664.

³⁾ N Engl J Med. 2018;378(24):2288-2301.

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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