寄稿ライター
3日前
こんにちは、 Dr.Genjohです。 今回は、 医師バイトが壊滅するかもしれない政府の動きについて考察します。
政府の規制改革推進会議 *¹⁾ は2025年5月28日、 医療分野の人手不足対応として、 オンラインを活用した宿直医師の病院掛け持ちの検討を提案しました。
具体的には厚労省の通知を見直し、 ①2025年に宿直の例外規定としてオンラインによる対応が含まれることを明記、 ②複数病院の宿直について遠隔かつ兼務を可能とする検討を開始――という内容です【資料1】。
会議の中では数ある項目のごく一部に過ぎないのですが、 医師にとってはかなり衝撃的なニュースですね。
ただ、 突然降ってきた話ではなく、 実は厚生労働省が2025年3月末に開催した専門部会 *²⁾ですでにモデルケースが語られていました。
改めてのおさらいですが、 現行の医療法第16条では、 患者20人以上が入院できる病院には宿直医の配置が義務付けられています。 この条件を満たすため、 小規模病院ではほとんど仕事が無い、 いわゆる 「寝当直」 医を雇う必要がありました【資料2】。
専門部会で提示されたモデルケースが【資料3】です。
この結果、 まずは 「寝当直」 が消滅するでしょう。
医師一人が複数の施設を管理することとなるため、 小規模病院とはいえ、 何らかのイベントが発生する可能性が高くなります。
さらに、 当直医の需要は、 単純計算でこれまでの半分に減ります。 小規模病院の当直業務において相対的に 「医師余り」 が発生すれば、 好条件の案件は争奪戦が激しくなり、 雇用条件の悪化も懸念されます。
多くの救急患者を受け入れる中規模・大規模病院では恐らく、 これまで通り一施設あたり一人以上の医師が常駐するはずです。 ただ、 小規模病院での当直の仕事が減れば、 アクティブな先生は中規模以上の病院での当直へシフトしてくるでしょう。
つまり、 中規模・大規模病院でも当直医を希望する医師が増え、 需給バランスから当直業務の待遇悪化が起こる可能性はあります。 特に当直バイトで生計を立てている先生にとっては影響が大きいかもしれません。
掛け持ち案が必ず実現するというわけではありませんが、 政府が本格検討を始めるという事実は重いです。 実現した場合、 利益を得るのは病院管理者と財務省・厚生労働省になるでしょう。
病院としては医師に払う当直代を浮かし、 経費削減が出来ます。 その原資は基本的に診療報酬であるため、 医療費も同時に削減されます。
一方、 不利益を被るのは医師と、 当直医師を斡旋する人材紹介会社になるでしょう。 最も打撃を受けるのが、 いわゆる 「バイト医」 の先生であることは明白です。
激変の時代においては、 先々を見越して柔軟な生存戦略を練る事が極めて重要だと考えさせられる一件といえるでしょう。
Xアカウント : @DrGenjoh
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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