Busseらは, コントロール不良な気管支喘息患者を対象に, フルチカゾンフロエート/ウメクリジニウム/ビランテロール (FF/UMEC/VI) の単回吸入薬と複数の吸入製剤を用いた併用療法 (MITT) のアドヒアランスと継続性を比較する後ろ向きコホート研究を実施. その結果, FF/UMEC/VIの単回吸入薬は, MITTと比較して, アドヒアランスと持続性が有意に良好であったことが明らかとなった. 本研究は, J Allergy Clin Immunol Pract誌において発表された.
背景
- 気管支喘息治療ガイドラインでは,ICS/LABAでコントロール不能な気管支喘息患者に対して3剤併用療法を推奨している.従来は3剤併用療法は複数の吸入剤を使用する方法しかなかった.
- 気管支喘息の維持療法としてFF/UMEC/VIの単回吸入薬 (編集部注釈:本邦ではテリルジー®として販売) が承認されているが, アドヒアランスや持続性に関するリアルワールドデータは限られていた.
研究デザイン
- IQVIA PharMetrics Plusデータを用いて, 1日1回投与のFF (100 μg) /UMEC (62.5μg) /VI (25μg) の合剤, またはMITTを開始した気管支喘息患者を評価.
- FF/UMEC/VI群: 1,396名
- MITT群:5,115名
- 傾向スコアマッチング法の1つであるIPW法と多変量回帰分析により, FF/UMEC/VIとMITTのコホート間の特性の違いを調整した.
- アドヒアランスは, 処方日数を観察期間日数で割った数値 (PDC) およびPDC≧0.8およびPDC≧0.5を達成した患者の割合で評価した.
- 45日以上の空白期間がある場合, 非継続と識別された.
研究結果
- 開始3ヵ月後, FF/UMEC/VI群はMITT群に対して平均PDCが有意に高く (0.68 vs. 0.59, P<0.001) , アドヒアランスが31%高かった (PDC ≥0.8, 40.6 vs. 31.3, 調整リスク比 95% CI 1.31 [1.13-1.54], P<0.001) .
- 開始後6ヶ月および12ヶ月でも同様のパターンが観察された.
- FF/UMEC/VI群は, MITT群に比べ12ヵ月後に継続できている可能性が49%高かった (25.9% vs. 15.1%, 調整後ハザード比 95%CI 1.49[1.39-1.60], P<0.001 ) .
結論
FF/UMEC/VIによる治療を開始した気管支喘息患者は, MITTと比較して, アドヒアランスと持続性が有意に良好であった.
原著
Busse WW, et al, Adherence and Persistence to Single-Inhaler Versus Multiple-Inhaler Triple Therapy for Asthma Management. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Jun 22;S2213-2198(22)00595-5.PMID: 35752431
👨⚕️ HOKUTO監修医コメント
日常診療での何気ない疑問をアカデミアで確認する、素晴らしい研究です. 診療現場にはさまざまな合剤がありますので、本研究を鋳型にしてさまざまな領域で同様のデザインでの研究が可能です.