HOKUTO編集部
5日前

今年の米国臨床腫瘍学会 (ASCO 2026) の泌尿器癌領域における個人的な二大テーマは、 「治療強化」 と 「患者選択」 です。 尿路上皮癌では、 現在の標準治療をより強く支持する長期成績が示されるとともに、 次世代の標準治療候補となり得る新たな開発戦略も注目を集めました。 本稿では、 ASCO 2026で発表された泌尿器癌領域の主要演題を3回に分けて紹介するうち、 第2回として尿路上皮癌に焦点を当てます。 今後の臨床実践や研究開発に影響を与えると考えられるトピックを取り上げ、 なぜその演題が重要なのか、 その後の課題は何であるかについて、 私見も交えながら整理します。

EV-302試験は、 未治療の局所進行または転移性尿路上皮癌を対象に、 抗Nectin-4抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチン+ペムブロリズマブ併用療法 (EV+P) とプラチナ製剤を含む化学療法を比較した国際共同第III相試験です。
ASCO 2026ではフォローアップ期間中央値3.5年時点での長期追跡結果が報告されました。 EV+P群では、 全生存期間 (OS) の改善が維持されており、 特に完全奏効 (CR) 達成症例の多くは長期寛解が確認されました。
一方、 部分奏効 (PR) 症例では長期の病勢コントロールを維持できる患者は限られていました。 また、 EV+P療法後のプラチナベースの化学療法の奏効率は21%にとどまり、 EV+P不応後の治療戦略に関する課題も浮き彫りとなりました。
EV+P療法の標準治療としての頑健性を再確認する一方で、 EV+P不応後の治療戦略は依然として大きな課題です。
局所療法による治療介入の意義を検討する臨床試験や、 新規抗体薬物複合体 (ADC) を含む後治療開発の重要性を改めて考えさせられたデータといえます。
▼試験概要
NEXUS-01試験は、 局所進行または転移性尿路上皮癌を対象に、 Nectin-4を標的とする新規ADCであるLY4052031の有効性と安全性を評価した第I相試験です。 LY4052031は、 Nectin-4抗体にトポイソメラーゼI阻害薬ペイロードを結合させたADCであり、 既存のエンホルツマブ ベドチン (EV) とは異なるペイロードを有します。
ASCO 2026では、 EV既治療例を含む局所進行または転移性尿路上皮癌患者における初期成績が報告されました。
▼結果
EV治療後のコホートにおいて、 奏効率は33%、 奏効期間 (DOR) 中央値は7.4ヵ月と一定の効果が認められ、 Nectin-4を標的とする薬物治療後にも同一標的を再度治療標的とし得る可能性が示されました。 また、 CYP2D6活性と毒性の関連が示され、 遺伝子型に基づく用量最適化が導入された点も特徴です。
本試験の重要な点は、 「EV不応後であっても、 Nectin-4を標的としたADCでペイロードを変更すると有効である可能性を示した」 ことです。
前述のEV-302において、 EV+P療法後のプラチナベースの化学療法の奏効率が21%程度であることを考えると、 Nectin-4 ADCによるシークエンスは今後の開発が期待されます。 「EV+P療法後の治療戦略について、 一つの回答を示した初期の前向き試験」 であるため、 重要な臨床試験と考えます。
▼試験概要
SAKK 06/19試験は、 筋層浸潤性膀胱癌 (MIBC) を対象に、 膀注リコンビナントBCG (rBCG) をゲムシタビン+シスプラチン (GC) 療法およびアテゾリズマブと組み合わせた周術期治療戦略を検証した第II相試験です。 患者は術前にGC+アテゾリズマブとrBCGを併用し、 その後根治的膀胱全摘除術を施行されました。
▼結果
主要解析では、 病理学的完全奏効 (pCR) 率68%、 病理学的奏効 (PaR) 率83%と良好な結果が示されました。 安全性はおおむね管理可能であり、 周術期治療へのrBCG追加が実施可能でした。
本試験は、 膀胱内免疫刺激と全身化学免疫療法を組み合わせた新たな周術期治療戦略のproof-of-conceptを示す結果として注目されました。 今後、 無作為化比較試験による検証が期待されます。
【ハイライト】ASCO2026特集|領域別 注目演題レポート&解説まとめ(更新中)
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。