海外ジャーナルクラブ
20日前
Karanicolasらは、 癌関連適応の肝切除を受ける患者を対象に、 肝切除後におけるトラネキサム酸投与が赤血球輸血に及ぼす影響について、 多施設共同プラセボ対照無作為化比較試験HeLiXで検討した。 その結果、 トラネキサム酸投与は出血や輸血を減少させず、 周術期合併症を増加することが明らかにされた。 本研究はJAMAにて発表された。
トラネキサム酸研究において、 negativeな結果ということで逆に大きなインパクトを残した研究の位置付けです。 そもそも、 "初期投与量1g"にエビデンスはないと聞いています。
搬送前のトラネキサム酸投与は重症外傷患者の転帰改善につながらず
帝王切開時のトラネキサム酸の予防的使用で術中出血や母体死亡のリスク変わらず
多くの外科手術において、 トラネキサム酸は出血および輸血を減少することが示されている。 しかし、 癌関連適応の肝切除を受ける患者に対する有効性は明らかにされていなかった。
本研究は、 トラネキサム酸投与が肝切除後7日以内の赤血球輸血を減少させるかどうかを明らかにすることを目的とした。
癌関連適応で肝切除を受けるボランティア患者1,384例を以下の2群に無作為に割り付け、 90日間の追跡調査を行った。
主な評価項目は、 術後7日以内の赤血球輸血の実施とした。 その他、 術中出血量、 推定総失血量、 合併症の発生、 静脈血栓塞栓症の発生などが評価された。
主要解析はトラネキサム酸群619例、 プラセボ群626例が対象となり、 周術期の特徴は両群間で類似していた。
赤血球輸血の発生率は両群で有意差が見られなかった。 また、 術中出血量および7日間の推定総失血量は両群で同程度であった。
赤血球輸血率OR 1.15、 95%CI 0.84-1.56、 p=0.38術中出血量
p=0.757日間の推定総失血量
p=0.38
トラネキサム酸群はプラセボ群と比較して、 周術期合併症の発生率が有意に高かった。
OR 1.28、 95%CI 1.02-1.60、 p=0.03
著者らは 「癌関連適応の肝切除患者に対するトラネキサム酸の投与は、 出血や輸血を減少させず、 周術期合併症が増加した」 と報告した。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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