HOKUTO編集部
1年前

2024年3月に 「鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版 (第10版)」 が日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会より発刊された¹⁾。 ガイドラインや最新の知見を基に、 前版である2020年版からの改訂点や診療のポイントについて概説する。
アレルギー性鼻炎は、 鼻粘膜のⅠ型アレルギー性疾患で、 ①発作性反復性のくしゃみ、 ②鼻漏、 ③鼻閉を3主徴とする。

2020年版では、 鼻炎の分類は 「感染性、 過敏性非感染性、 刺激性、 その他」 であったが、 2024 年版より 「感染性、 アレルギー性、 非アレルギー性」 とより簡便な分類に変更された。
また2024年版では、 皮膚テストや血清特異的IgE検査が陰性でも鼻粘膜局所でのIgEが産生され、 局所反応を示す"local allergic rhinitis (LAR, 局所アレルギー性鼻炎)" という疾患が定義され、 アレルギー性鼻炎に含められた。
アレルギー性鼻炎の罹患者は、 1960年代後半から増加しており、 2019年の有病率は49.2%にのぼる。
特にスギ花粉症の有病率は、 1998年は16.2%だが、 2019年は38.8%と著しい増加が報告されている。 年齢層別有病率の調査によると、 5~9歳の有病率が1998年は7.5%であったが、 2019年は30.1%と約20年で4倍に増加しており、 発症の若年化が顕著となっている。

また、 2024年版ではスギ花粉症の新規発症予防に関する調査結果に言及している。 COVID-19の予防としてマスク装用が定着する2021年以前の新規発症率は3%であったが、 2021年は1.4%と半減した。
スギ花粉症未発症の小児への花粉飛散期のマスク着用が、 新たな花粉症の発症予防となる可能性が示唆された。
2024年版では、 アレルギー性鼻炎発症に至る前段階として、 感作と鼻粘膜の炎症による過敏性の亢進が重要であることが指摘された。
また、 くしゃみ、 鼻漏、 鼻閉のそれぞれの症状発現メカニズムについて、 くしゃみと鼻漏はヒスタミンを介した神経反射が主であり、 鼻閉はロイコトリエンなどの血管系への作用 (即時相) とアレルギー性炎症 (遅発相) が主であることが説明された。
この症状発現メカニズムはガイドラインで図としてまとめられており、 治療は発症メカニズムを考えて行うべきとされた。
本ガイドラインでは、 問診と鼻腔内診察により、 アレルギー性鼻炎に典型的な症状と鼻粘膜所見があれば、 臨床的にアレルギー性鼻炎と診断し、 早期に治療を開始することが推奨された。
ただし、 臨床的診断が困難な場合や投薬による治療効果が不良である場合、 またアレルゲン免疫療法を考慮する場合は、 アレルギーの検査*¹や抗原同定検査*²を行う必要がある。
皮膚テストは皮内テスト、 スクラッチテスト、 プリックテストが可能であり、 近年ではプリックテストが主流となっている。 検査の前には結果に影響を及ぼす薬剤の中止が必要であり、 ガイドライン上の各種薬剤の中止期間の目安を参照する。
診断のポイントとして、 2024年版で新たに追加されたLARを含め、 非特異的過敏症をもつ鼻炎 (好酸球性鼻炎、 血管運動性鼻炎) との鑑別が必要となる。 本ガイドラインでは鑑別診断のアルゴリズムが記載されているので参照する。
治療目標については、 「患者を次の状態に持っていくことにある」 とされ、 以下の3項目が提示された。

治療法は、 ①患者とのコミュニケーション、 ②抗原除去と回避、 ③薬物療法、 ④アレルゲン免疫療法、 ⑤手術療法に分類される。
アレルギー性鼻炎は慢性疾患であり、 治療が長期間に長期間に渡ることから、 薬物治療に対するアドヒアランスが不良となる症例が多い。 そのため、 治療開始後も患者としっかりコミュニケーションをとることが重要である。
本ガイドラインでは、 アレルギー性鼻炎治療薬の表や、 治療薬の作用機序の図などがまとめられている。 2024年版では、 特に抗ヒスタミン薬について 「レボセチリジン塩酸塩、 ルパタジンフマル酸塩、 エメダスチンフマル酸塩経皮吸収型製剤で増量が認められている」 点が新たに言及された。
レボセチリジン塩酸塩
パタジンフマル酸塩
エメダスチンフマル酸塩経皮吸収型製剤
さらに、 抗ヒスタミン薬の副作用に関する表において、 「自動車運転への注意」 の項目を新たに追加され、 添付文書の情報に基づく注意または禁止が記載された。
重症季節性アレルギー性鼻炎に対し、 抗IgE抗体製剤が2019年に保険適用となったが、 本ガイドラインではオマリズマブは重症・最重症の花粉症に対する治療薬として位置付けられている。
本剤は最適使用推進ガイドラインが作成されており、 患者要件等を確認して使用することが重要である。 2024年版では患者要件や推奨される投与量に関する記載が詳しく記載されている。
オマリズマブ
ゾレア皮下注用150mg / 75mgシリンジ / 150mgシリンジ / 75mgペン / 150mgペン / 300mgペン
加齢に伴い、 抗原感作率やアレルギー性鼻炎の有病率は低下するが、 近年の若年期におけるスギ花粉症有病率の増加を反映し、 高齢者の有病率も増加している。
高齢者は基礎疾患が多く、 服用している薬剤も多い傾向がある。 薬剤投与に関しては相互作用に注意し、 病歴をよく確認する必要がある。
2024年版では 「第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬の使用における禁忌事項及び慎重投与」 について図が記載されており、 投与の際は確認を行う。
アレルゲン免疫療法に関しては、 2024年版では作用機序の図が新たに追加された。
また、 皮下免疫療法 (SCIT) や舌下免疫療法 (SLIT) の実施法や患者への説明・指導文例に加え、 スギSLITを3シーズン継続すると、 治療終了後2シーズン目まで効果が持続することについて言及された。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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