HOKUTO編集部
28日前
Philadelphia-chromosome positive acute lymphoblastic leukemia: ten frequently asked questions.
Leukemia. 2024 Sep;38(9):1876-1884. PMID: 38902471
フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 (Ph陽性ALL) の診療における疑問点についてまとめたレビューがLeukemia誌にまとめられていたので紹介する。
Ph陽性ALL診療における疑問点に対してエキスパートが解説しているようなスタイルで記述されたレビューである。 同レビューを見ると、 実際にはエキスパートでも明確な回答を持ち合わせていない場合も多いことがよくわかる。
Ph陽性ALLでは、 以前は同種造血幹細胞移植 (allo-HSCT) が非常に重要な治療戦略の一部であったが、 近年は移植以外にも治療成績が改善されてきたことから、 どのような症例に対して移植を行うのが最適か、 という議論が出てきている。 本論文では、 Ph陽性ALLに対する移植では全身照射を行わない前処置 (non-TBI) を検討すべきと言及されている点が個人的には興味深いと感じた。
P190 (Minor BCR::ABL) : Ph陽性ALLで高頻度に確認され、 比較的予後良いことが知られる (次世代TKIやブリナツモマブの時代では未検証)。
P210 (Major BCR::ABL) : P210を有する患者で、 骨髄前駆細胞のBCR::ABLがPCRで残存病変として検出された場合、 潜在的なCML急性転化の可能性が示唆される。
Ph陽性ALL患者の64~78%に追加の染色体異常 (ACAs) が検出され、 その中でも特定の異常は高リスクとされている。 一部の遺伝子変異も臨床経過に影響を与える可能性があり、 特に一般的なものとしてIKZF1、 CDKN2A、 PAX5が知られている。 また、 CDKN2AとTP53は同種造血幹細胞移植後の予後不良とも関連している。
しかし、 現在の新規治療 (特にブリナツモマブ/ポナチニブ) においてはこれらの予後因子は必ずしも関連しているとは言えず見直しが必要となるかもしれない。
MRD陽性が3ヵ月を超える場合は予後不良である。 MRD検査は、 リアルタイム定量PCRよりも次世代シーケンシングが有用かもしれない。
可能な限り、 新世代チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) を高強度化学療法と併用することを推奨。
新世代TKI併用化学療法と新世代TKI併用ブリナツモマブの比較や、 中枢神経 (CNS) 再発のような予想されるリスクを減らすための介入を特定するためのデータが待たれる。
現行治療の効果は優れているが、 第一寛解期以降の移植が患者の転帰を改善するかは不明なため、 適応の判断は個別化が必要である。 将来的には、 高リスクの細胞遺伝学的/分子学的特徴を有する患者、 MRD陰性を未達成/喪失した患者、 ブリナツモマブ未治療の患者に限定されるかもしれない。
最適な前処置レジメンは未だ確立されていない。 多くの報告は主に骨髄破壊的前処置 (MAC) に基づいており、 非再発死亡率 (NRM) は約25%とされている。 現在のデータでは、 ALL患者においてはTBIを用いたレジメンが推奨されているが、 Ph陽性ALLにおいては晩期毒性の低減と有効性の観点から、 TBIを含まない前処置が推奨される。
さまざまな要素 (特にMRD陰性/陽性) を考慮してTKIを選択する (ダサチニブや、 可能であればポナチニブを考慮)。
移植後のTKI維持療法の最適な期間を評価した前向き試験は存在せず、 推奨期間は1年から5年とさまざまである。 多くの研究において、 TKIはMRD陰性化後、 少なくとも12ヵ月継続されている (現在のデータでは、 3~5年間の治療が考慮される)。
治療選択肢としてはブリナツモマブ+ポナチニブ療法が優れた治療効果を示している。 CAR-T細胞療法も高い寛解率と生存率を示しており、 有効性が報告されている。 今後は最適な治療順序や、 CAR-T細胞療法後の最適なTKI維持療法を特定するためのデータが待たれる。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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