海外ジャーナルクラブ
5ヶ月前
Bednárikらは、 Clostridioides difficile感染症 (CDI) の治療法の有効性を比較すべく、 ネットワークメタ解析と無作為化比較試験 (RCT) のシステマティックレビューを実施した。 その結果、 糞便微生物移植 (FMT) の全体の治癒率と再発症例の治癒率が最も良好であった。 この研究は、 Lancet Reg Health Eur誌に発表された。
Comparative effectiveness of different therapies for Clostridioides difficile infection in adults: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials. Lancet Reg Health Eur. 2025 Jan 5:49:101151.
73件のRCTには、 本邦からの研究も1件含まれています¹⁾。
現在増加傾向にあるCDIは、 医療関連下痢症の主要な原因であり、 罹患率および死亡率が高い疾患である。
数多くの治療選択肢があるが、 最適な治療法について、 欧米のガイドラインの推奨は必ずしも一致していない。
この研究では、 ネットワークメタ解析およびRCTのシステマティックレビューにより、 再発性・非再発性のCDIおよびその予防におけるすべての治療法を比較評価した。
MEDLINE、 EMBASE、 Cochrane Central Register of Controlled TrialsからCDIに対する治療を受けた成人患者 (>16歳) を対象とした73件の論文を抽出し、 そのうち68件について頻度主義的方法を用いてランダム効果ネットワークメタ解析を実施した。
各治療法の比較は、 オッズ比 (OR) を指標として評価され、 相対的な有効性の推定にはPスコア (範囲 : 0-1) が用いられた。
主な評価項目は、 全体の治癒率、 再発症例・非再発症例の治癒率、 再発率および予防率であった。
CDI治療全体における治癒率では、 FMT (Pスコア : 0.9952) が最も有効であり、 他のほとんどの治療法に対して有意差が認められた。
サブグループ解析である、 再発症例における治癒率も、 FMT (Pスコア : 0.9836) は最も有効であった。
抗菌薬の比較では、 治癒率はフィダキソマイシン (Pスコア : 0.6734) が、 バンコマイシン (Pスコア : 0.3677) およびtolevamer (Pスコア : 0.0365) よりも有意に高い有効性を示した。
非再発症例の治癒率では、 フィダキソマイシン、 surotomycin、 ridinilazole、 バンコマイシンおよびFMTがプラセボよりも有意に高い有効性を示したが、 5つの治療法の間に有意差は認められなかった。
なお、 FMTの投与法別の治癒率では、 経口投与および大腸内視鏡による投与に有意差は認められなかった。
再発予防では、 tolevamer (Pスコア : 0.9490) が最も有効であった。
Ridinilazole (Pスコア : 0.7671) はバンコマイシン、 メトロニダゾール、 フシジン酸、 バシトラシンより再発予防効果が有意に高かった。 また、 フィダキソマイシン (Pスコア : 0.7627) はsurotomycin、 バンコマイシン、 メトロニダゾール、 フシジン酸、 バシトラシンより再発予防効果が有意に高かった。
発症予防では、 プロバイオティクスとプラセボの間に有意差は認められず、 結果としてプロバイオティクスの有効性は示されなかった。
また、 プロバイオティクスのサブグループ解析では、 Lactobacillaceae (乳酸桿菌) の予防効果がプラセボより有意に高いことが示された。
このほか、 研究レベルのバイアスリスクは低いものから高いものまでばらつきがあった。 研究間では治療用量、 治療期間、 追跡期間に異質性がみられた。
著者らは 「この研究で示されたFMTの優位性は、 臨床でFMTを用いる機会が増加する可能性を示唆しており、 今後、 最適なプロトコルの決定や、 長期的な安全性と有効性の評価を目的とした大規模な研究が必要である。 また、 プロバイオティクスの予防的使用には慎重を期す必要があり、 詳細な検討が必要である」 と報告している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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