【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)
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KIWI (炎症性腸疾患)

23日前

【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)
2025年1月に第17回KIWI (Kitasato Institute Webinars on IBD) が開催され、 「Best of 2024」をテーマに視聴者が推薦したIBD関連の論文TOP 5が発表されました。 本稿では前回 (第5~4位) に続き、 第3位、 第2位 (同率2本)、 そして第1位に輝いた論文の概要と重要なエッセンスを紹介します。 

第5~4位の紹介はこちら

KIWIとは?

KIWIは、 IBDにまつわるトピックについての教育的なコンテンツをインターネットでライブ配信するウェビナーです。 IBD専門医だけでなく看護師、 薬剤師など、 全ての医療従事者を対象に、 さまざまなレベルの内容を2ヵ月に1回、 ゲストを招き、 対談形式にレクチャーを交えてライブ配信します。

【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

>> こちらのインタビュー記事も参照ください


セミナー情報

【日 時】2025年1月10日(金) 19:00~20:30

【テーマ】ベスト・オブ・2024 (PartⅠ)

【ホスト】小林 拓先生

北⾥⼤学北⾥研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター

【ゲスト】松浦 稔先生* 松岡 克善先生** 新崎 信一郎先生***

*杏林大学医学部 消化器内科学
**東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科
***兵庫医科大学 消化器内科学

第3位

ステロイド抵抗性急性重症UCへのIFX導入療法強化用量 vs 標準治療

本邦承認外の内容を含みます。
<注目論文>
Intensified versus standard dose infliximab induction therapy for steroid-refractory acute severe ulcerative colitis (PREDICT-UC): an open-label, multicentre, randomised controlled trial. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024 Nov;9(11):981-996. Epub 2024 Sep 2. PMID: 39236736
【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

対象・方法

Choyらは、 ステロイド抵抗性の急性重症UCを対象に、 抗TNF-α抗体インフリキシマブの最適な導入戦略を、 第Ⅳ相多施設共同非盲検無作為化比較試験PREDICT-UCで検討した。

対象138例が、 強化用量群*と初回5mg/kg投与群の2群に1 : 2で無作為に割り付けられた(無作為化1)。 その後、 投与開始3日から7日の間に、 初回5mg/kg投与群は標準治療群と加速治療群*の2群に1 : 1で再割り付けされた(無作為化2)。

  • 強化用量群 : 46例
インフリキシマブ10mg/kgを0、 1週時、 臨床反応がない場合には1週目までに2回目投与
  • 初回5mg/kg投与群 : 92例
インフリキシマブ5mg/kgを0週目に投与、 3日から7日の間に下記2群に再割り付け
  • 標準治療群 : 44例
インフリキシマブ5mg/kgを0、 2、 6週目に投与、臨床反応がない場合には3日から7日の間に5mg/kgの追加投与
  • 加速治療群 : 48例
インフリキシマブ5mg/kgを0、 1、 3週目に投与、臨床反応がない場合には投与量を10mg/kgに増量して3日から7日の間に投与
*本邦承認用量外

主要評価項目は、 7日時点までの臨床的反応 (Lichtigerスコアがベースラインから3ポイント以上改善して 10ポイント未満に低下、 直腸出血の改善、 排便回数が1日4回以下に低下と定義) であった。

試験の主な結果

7日時点までの臨床的反応率は、 強化用量群が65%、 初回5mg/kg投与群が61%であり、 両群で有意差は認められなかった(p=0.62)。 また、 3ヵ月時点の臨床寛解率、 ステロイドフリー寛解率、 内視鏡的寛解率のいずれも、 強化用量群と標準治療群で有意差は示されなかった (順にp=0.92、 1.0、 0.98)。

<私はこう見る>
重症例では投与したインフリキシマブが腸管内に漏出し、 効果が減弱することが報告されている。 よって、 海外では1回に高用量の10mg/kgを投与することが多く、 本試験の強化用量群における用量も同様である。
しかし、 結果として、 1回5mg/kgを投与する初回5mg/kg投与群および標準治療群との有意差は示されていない。 患者背景として各群の血清アルブミン値がそこまで低くないことから、 対象患者がアルブミンやインフリキシマブが漏出するほどの重症例ではなかった可能性も考えられる。 一方で、 基本的にステロイド抵抗性の急性重症UCに対しては、 標準治療群と近似した本邦の用法・用量で問題ない旨が示唆された。

第2位 (同率2論文)

中等症~重症CDにおけるリサンキズマブウステキヌマブの直接比較試験SEQUENCE

<注目論文>
Risankizumab versus Ustekinumab for Moderate-to-Severe Crohn's Disease. N Engl J Med. 2024 Jul 18;391(3):213-223. PMID: 39018531
【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

対象・方法

Birouletらは、 抗TNF抗体製剤による前治療で効果不十分または不耐容であった中等症~重症の活動性CDを対象に、 抗IL-23p19抗体リサンキズマブと抗IL-12/23p40抗体ウステキヌマブの有効性および安全性を、 第Ⅲb相海外多施設共同非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験SEQUENCEで直接比較した。

患者520例が、 以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられ、 それぞれ標準投与量での投与が行われた。

  • リサンキズマブ群 : 255例
リサンキズマブ600mgを0、 4、 8週に静注投与、 12週から360mgを8週毎に皮下投与
  • ウステキヌマブ群 : 265例
ウステキヌマブの体重別固定用量を0週に静注投与、 以降、 90mgを8週毎に皮下投与

主要評価項目の2項目は階層的に検定され、 以下の主要評価項目の1つ目が検証された場合に2つ目の検定が実施された。

  1. 24週時点の臨床的寛解(CDAI<150)におけるリサンキズマブのウステキヌマブに対する非劣性
  2. 48週時点の内視鏡的寛解(SES-CD≦4、 ベースラインから2ポイント以上の減少、 各サブスコアがすべて1未満)におけるリサンキズマブのウステキヌマブに対する優越性

副次評価項目は安全性などであった。

試験の主な結果

24週時点の臨床的寛解率については、 リサンキズマブ群のウステキヌマブ群に対する非劣性が示された(58.6% vs 39.5%、 群間差 18.4%㌽[95%CI 6.6-30.3%㌽])。

また、 48週時点の内視鏡的寛解率については、 リサンキズマブ群のウステキヌマブ群に対する優越性が示された(31.8% vs 16.2%、 群間差 15.6%㌽[95%CI 8.4-22.9%㌽、 p<0.001)。

有害事象の発現率は両群で有意差がなかった。

<私はこう見る>
リサンキズマブ群のウステキヌマブ群に対する優越性が認められたが、 IL-23を阻害するリサンキズマブが、 IL-12および23の双方を阻害するウステキヌマブよりも高い有効性を示した理由として、 リサンキズマブのIL-23に対する親和性が高い点、 その阻害作用が強い点、 腸管微小環境を炎症から保護するIL-12の役割が関係している可能性などが推測されているが確立されたものはなく、 今後、 明らかにされることが期待される。
異なる作用機序ではなく、 同クラスの薬剤の直接比較で優越性が検証された点は、 同種同効薬の薬剤選択の1つの指標になる可能性があり、 興味深い。

②CDへの抗TNF療法反応消失の予測因子と予防・軽減のための戦略

<注目論文>
Mechanisms and management of loss of response to anti-TNF therapy for patients with Crohn's disease: 3-year data from the prospective, multicentre PANTS cohort study. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024 Jun;9(6):521-538. Epub 2024 Apr 16. PMID: 38640937
【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

対象・方法

Chanchlaniらは、 抗TNF抗体の治療歴がない6歳以上の活動性CDを対象に、 抗TNFα抗体インフリキシマブおよびアダリムマブの投与開始後3年時点の有効性を検討し、 同薬による治療失敗の予測因子および反応消失の予防・軽減戦略を明らかにすることを目的として、 前向き多施設観察コホート研究で検証した。

抗TNF抗体治療開始後1、 2、 3年の終了時点の全コホートにおける臨床寛解率を並べ替え検定を用いて推定し、 多変量回帰分析および生存時間解析を用いて最初に抗TNF抗体に反応した患者の反応消失*と免疫原性に関連する因子を特定した。

*反応消失は、 導入療法終了時に抗TNF抗体による治療で最初に奏効し、 その後ステロイド、 免疫調節薬、 抗TNF抗体の増量、 切除手術、 または治療失敗による試験からの離脱を起こす症状の発現と定義された。

試験の主な結果

3年時点の寛解達成率はそれぞれ以下のとおりであった。

  • インフリキシマブ群 : 34.7%
(95%CI 29.8-39.5%)
  • アダリムマブ群 : 28.9%
(95%CI 21.9-36.3%)

多変量解析により、 インフリキシマブ群およびアダリムマブ群の2、 3年時点の反応消失は、 14週目の抗TNF抗体の血中濃度の低さによって予測された(インフリキシマブ群 : 薬剤濃度10倍増加ごとのHR 0.45 [95%CI 0.30-0.67]、 アダリムマブ群 : HR 0.39 [95%CI 0.22-0.70])。

併用する免疫調節薬の投与開始時期別の解析において、 インフリキシマブ投与開始前または開始日に免疫調節薬を併用した場合には、 投与開始後に併用(HR 1.70[95%CI 1.11–2.59])および併用しなかった場合(HR 2.87[95%CI 2.20–3.74])と比べて、 検出不能な薬物濃度に関連する抗薬物抗体の発現がない時間が有意に延長した。

一方、 アダリムマブ投与開始前または開始日に免疫調節薬を併用した場合と開始後に併用した場合では有意差が認められなかった(HR 1.10[95%CI 0.26-4.76])。

<私はこう見る>
抗TNF抗体治療開始後3年時点の寛解率はおよそ3割にとどまった。 治療開始から1年時点、 特に導入期の血中薬物濃度が長期的な効果減弱の予測因子であり、 その最適化が重要であることが示された。 
また、 インフリキシマブではHLA-DQA1*05リスク変異体の保有が抗薬剤抗体の形成を予測し、 免疫調節薬併用でこれを軽減できる一方、 アダリムマブではこれらの関連は示されなかった。 抗TNF抗体に先行した免疫調節薬の併用投与を可能であれば検討すべきであろう。

第1位

新規CDへの治療戦略、 トップダウン vs 迅速ステップアップ

<注目論文>
A biomarker-stratified comparison of top-down versus accelerated step-up treatment strategies for patients with newly diagnosed Crohn's disease (PROFILE): a multicentre, open-label randomised controlled trial. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2024 May;9(5):415-427. Epub 2024 Feb 22. PMID: 38402895
【第17回KIWI】IBD注目論文 Best of 2024 (第3~1位)

対象・方法

Noorらは、 免疫調節薬および生物学的製剤の治療歴がない新規診断の成人CD(Harvey-Bradshaw Index≥7、 CRPまたは便中カルプロテクチンのいずれかあるいは両方が上昇、 内視鏡的に活動性炎症が認められる)を対象に、 診断当初から生物学的製剤を使用する 「トップダウン療法」 と、 最初は標準治療を開始して無効な場合に生物学的製剤へ移行する 「ステップアップ療法」 の有効性およびバイオマーカーを指標にした治療戦略の臨床的有用性について、 多施設共同非盲検無作為化比較試験PROFILEで検証した。

386例がバイオマーカー、 内視鏡的炎症、 および範囲(結腸またはその他の炎症)によって層別化され、 以下の2群に1 : 1で無作為に割り付けられた。

  • トップダウン群 : 193例
ステロイド→インフリキシマブ+免疫調節薬
  • ステップアップ群 : 193例
ステロイド→再燃(症状+便中カルプロテクチン or CRP)→ステロイド+免疫調節薬→再燃→インフリキシマブ+免疫調節薬

主要評価項目は、 48週時点までの手術に依らないステロイドフリー寛解であった。

試験の主な結果

48週時点までの手術に依らないステロイドフリー寛解率は、 トップダウン群がステップアップ群と比べて有意に高かった(79% vs 15%、 群間差 64%㌽[95%CI 57-72%㌽]、 p<0.0001)。 一方で、 バイオマーカーと治療の交互作用効果は認められず(絶対差1%㌽[95%CI -15~15%㌽]、 p=0.944)、 バイオマーカーは臨床的有用性を示さなかった。

また、 再燃、 治療強化、 手術の複合的なイベント発生までの時間分析において、 最初のイベントと2番目のイベント双方の発生までの時間は、 ステップアップ群と比べてトップダウン群で延長した。

48週時の内視鏡的寛解(SES-CDの潰瘍面のサブスコア0)率は、 トップダウン群がステップアップ群と比べて有意に高かった(67% vs 44%、 群間差 23%㌽[95%CI 11-36%㌽]、 p<0.0001)。 ステップアップ群では、 インフリキシマブ療法に移行した患者の55%が48週時に内視鏡的寛解を達成した。

試験中、 トップダウン群の1例、 ステップアップ群の10例で手術が実施され、 トップダウン群の1例は胆石性イレウスであった一方で、 ステップアップ群は全例でCDまたは合併症が原因であった。

<私はこう見る>
本試験では、 最初に両群ともステロイドが投与されており、 この時点で、 トップダウン群が 「トップダウン」 といえるかは疑問である。 またステップアップ群では、 再燃が確認された後、 ステロイド+免疫調節薬、 さらに再燃を挟んでインフリキシマブ+免疫調節薬と移行し、 再燃の定義も症状とバイオマーカー双方の所見を要するものとなっている。 これらは、 臨床において現在行われている本来のStep-upからかけ離れている。
48週時点までの手術に依らないステロイドフリー寛解率では、 非常に大きな群間差が認められたが、 上記試験デザインのため、 ステップアップ群の多くでステロイドが投与されており、  「ステロイドフリー」 が評価項目に入った場合に不利な結果となるのは自明である。 内視鏡的寛解率ではこの群間差が縮まったが、 ステップアップ群ではインフリキシマブ+免疫調節薬に移行した55%で内視鏡的寛解を達成しており、 この55%とトップダウン群との群間差を参考にすべきではないか。
本試験には上記のようなデザイン上の懸念があり、 この結果をもって無条件にトップダウンを支持はできないが、 必要な場合には早期にトップダウンで治療を実施すべきで、 そういった患者が確実にいる点は示唆している。
どのような患者にはトップダウンが必要で、 どのような患者がステップアップに適しているのかについて、 さらなる解明が求められる。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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