HOKUTO編集部
1ヶ月前
広島大学病院 脳神経内科の音成 秀一郎先生による連載 「けいれん診療ガイド」 です。 第11回は "ベンゾジアゼピントライアル" について解説いただきます。
非けいれん性てんかん重積状態 (NCSE: non-convulsive status epilepticus) を疑う状況にあれば、 その診断と治療のために緊急で脳波検査を開始することが理想的です。 一方で、 脳波検査が当日中に実施できないという状況も実際にはあるでしょう。 そうなると抗てんかん発作薬による診断的治療が選択されることもあります。 具体的にはジアゼパムなどベンゾジアゼピン系の薬剤を静注して、 症状の改善があればNCSEだろうと判断する戦略です。
ただしその判定は厳密に行わなければいけません。 例えば遷延性の意識障害を背景に 「振るえ」 の症状を伴っていたとして、 ジアゼパムを静注すれば鎮静効果としてその振るえは消失するでしょう。 つまり 「振るえ」 の原因がNCSEでも代謝性脳症でも、 どちらにしてもジアゼパムを投与すればその 「振るえ」 は消失するため、 特異的な解釈ができません。
NCSEを疑うべき症候として何があったのかを投与前にしっかりと診察しておくことは当然として、 理想的には脳波検査を行いながら抗てんかん薬を静注し、 症状と脳波の改善があるかを観察する必要があります。
判定方法¹⁾ですが、 脳波所見と神経所見の両方で判定する必要があります。
脳波ではictal-interictal continuum (IIC) という急性期脳波の所見があるのですが、 このIICの脳波所見がどれだけ抑制されたか、 改善したかで判断します。 具体的には 「投与前のIICのインターバルより3倍以上の時間でIICが消失 (最低1分以上) 」 が基準です。
臨床症状としてはもちろん、 投与により意識が劇的に回復するなどわかりやすい反応があればいいのですが、 そのようなクリアカットな反応に至らないことの方が多いです。 そこでNCSE response scale (表) という評価項目の改善具合での判定が提唱されています。 具体的にはNCSE response scaleが1 step以上改善で効果ありと判断します。 要は、 反応性、 言語理解、 指示理解、 見当識などを多面的に評価します。
なお筆者は、 脳波でrhythmic & periodic patterns など何かしらの異常があれば積極的にこのトライアルを実施しています。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。