HOKUTO編集部
12日前
新規診断で米国立癌研究所 (NCI) 分類標準リスク (SR) の小児B細胞急性リンパ芽球性白血病 (B-ALL) において、 二重特異性抗体ブリナツモマブ+標準化学療法の併用について、 化学療法単独を対照に検証した第Ⅲ相無作為化比較試験AALL1731の中間解析結果より、 DFSが有意に改善した。米・Seattle Children’s HospitalのRachel E. Rau氏が発表した。同詳細はN Engl J Med. 2024年12月7日オンライン版に同時掲載された。
B-ALLは小児癌の中で最も一般的であり、 その治癒率は高いものの、 再発例は小児の癌関連死の主な原因となっている。
CD19およびCD3を認識する二重特異性抗体ブリナツモマブはB-ALLの再発例に効果を示し、 成人においては第Ⅲ相試験E1910において、 標準化学療法に追加することで生存率が改善した¹⁾。 AALL1731試験では、 NCI SRの小児B-ALLにおいて、 標準治療へのブリナツモマブ上乗せ効果が検証された。
BCR-ABL融合遺伝子陰性で精巣浸潤または中枢系浸潤 (CNS3) がないNCI SR (診断時の年齢が1歳から10歳未満、 白血球数 <5万/μL) の新規診断B-ALL患者が対象とされ、 全例が3剤併用の導入化学療法を受けた。
導入化学療法後、 患者は再発リスクに応じて、 下記の3集団に分類された。
本試験では、 SR-AverageでMRDが検出された患者と、 SR-Highで地固め療法終了時点の骨髄MRD <0.1%の患者が無作為化の対象となり、 以下の4群に割り付けられた。
SR-Average (835例)
SR-High (605例)
主要評価項目は無作為化から再発、 2次悪性腫瘍の発生、 または死亡までの時間と定義された無病生存期間 (DFS) で、 イベント発生までの時間解析で評価された。 その他、 再発率や安全性も評価された。
年齢、 性別、 人種などの患者背景は4群間で概ねバランスがとれていた。 白血球数の中央値は7.4~8.8 x10⁹/L、 アジア人割合は3.3~4.8%であった。
全集団における3年DFS率は、 Blina+Chemo療法(Arm B+D) が96.0%と、 Chemo単独療法 (Arm A+C) の87.9%に比べ有意な改善を示した (HR 0.39、 p<0.0001)。
事前に規定されたほぼ全てのサブグループにおいて、Blina+Chemo療法のChemo単独療法に対する優位性が一貫して認められた。
SR-Average集団とSR-High集団の3年DFS率においても同様の結果が示され、 Arm Aが90.2%、 Arm Bが97.5% (HR 0.33、 p=0.002) 、 Arm Cが84.8%、 Arm Dが94.1% (HR 0.45、 p=0.01) であった。
事前に規定された中止基準 (p<0.0044) に到達したため、 モニタリング委員会は無作為化の早期終了を推奨した。
全集団における3年累積再発率は、 Blina+Chemo療法 (Arm B+D) が3.3%で、 Chemo単独療法 (Arm A+C) の11.8%と比較し有意な改善を示した(p<0.0001) 。 SR-Average患者 (p=0.002) とSR-High患者 (p=0.002) においても同様の結果であった。
CNS再発の3年累積発生率は、 ブリナツモマブを投与しても改善されなかった (p=0.85) 。 しかし骨髄再発の3年累積発生率は、 Blina+Chemo療法 (Arm B+D) が1.5%と、 Chemo単独療法 (Arm A+C) の7.7%と比較し有意に減少した(p<0.0001) 。
ブリナツモマブ投与に伴うGrade3以上のサイトカイン放出症候群 (1サイクル目0.3% / 2サイクル目0.0%) 、 痙攣 (0.8% / 0.7%) 、 脳症 (0.2% / 0.0%) の発現は稀であった。
ただしSR-Average患者において、 Blina+Chemo療法はChemo単独療法と比較し、 Grade3以上の敗血症およびカテーテル関連感染症の発症率が高かった (Blina+Chemo療法 14.8% vs Chemo単独療法 5.1%、 p<0.001) 。 一方SR-High患者では、 有害事象発現率に有意差は認められなかった (20.9% vs 17.0%、 p=0.28) 。
Rachel E. Rau氏は 「NCI SRの小児B-ALLと新たに診断され、 再発リスクが中等度~高度の患者において、 化学療法にブリナツモマブを上乗せすることで、 DFSが有意に改善した。 またブリナツモマブは骨髄再発のリスクを減少させた。 忍容性は全体的に良好であるが、 敗血症とカテーテル関連感染症の発生率増加との関連が認められた」 と報告した。
¹⁾ Blood (2023) 142 (Supplement 1): 2877.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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