【解説】難治性UCの虫垂切除、 JAK阻害薬を上回る寛解導入効果
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HOKUTO編集部

1ヶ月前

【解説】難治性UCの虫垂切除、 JAK阻害薬を上回る寛解導入効果

【解説】難治性UCの虫垂切除、 JAK阻害薬を上回る寛解導入効果
北里大学北里研究所病院 (北研) IBDセンターの抄読会で実際に交わされた治療判断の視点や議論のエッセンスを凝縮してお届けします。 

第4回は、 生物学的製剤による治療が奏効しない活動性潰瘍性大腸炎 (UC) 患者を対象に、 腹腔鏡下虫垂切除術とJAK阻害薬への切り替えの有効性を比較した前向きコホート研究 (COSTA試験) を取り上げます。

今回の紹介論文

Appendicectomy versus switching to a JAK inhibitor in inducing remission in patients with active ulcerative colitis after biologic therapy failure (COSTA): 1-year results of a multicentre, prospective, cohort study.

Lancet Gastroenterol Hepatol. 2026; 11: 190-203.

>>論文紹介記事はこちら

背景

難治性UCに対する虫垂切除術の有益性は既に報告されている¹⁾が、 先進治療(ADT)と直接比較した前向き研究は存在しない。

目的

既存のADT (生物学的製剤または低分子化合物) 治療にも関わらず疾患活動性が持続している難治性UC患者において、 腹腔鏡下虫垂切除術とJAK阻害薬への切り替えによる寛解導入効果を比較検討した。

方法

オランダの5施設で実施された、 多施設共同患者選択型介入コホート試験である。

対象

ADT治療中でTotal Mayo score (TMS) 5~12かつ内視鏡サブスコア (MES) 2以上の患者。

介入

患者は以下3つの選択肢から選択し、 合意した治療が行われた。

①腹腔鏡下虫垂切除術を行い、 ADTは継続
②ADTを中止し、 JAK阻害薬*へ切り替え
③大腸切除
*トファシチニブ (TOFA)、ウパダシチニブ (UPA)、フィルゴチニブ

①②を選択した患者を解析の対象とした。 ③は比較解析には含まれなかった。

主要評価項目

12ヵ月時点における、 治療失敗*のない臨床的寛解率。

*全身性ステロイド投与、 ADT変更、 結腸切除術

結果

2018~23年に125例が登録され、 116例 (虫垂切除群67例、 JAK阻害薬群49例) が解析対象となった。

患者背景とベースラインの治療

TMS (両群とも中央値9.0) および介入前のADT使用数 (両群とも中央値2.0) において、 両群に差は認めなかった。

ベースラインのADTは、 虫垂切除群では抗TNFα製剤が最多 (47.8%)、 JAK阻害薬群ではインテグリン受容体拮抗薬 (36.7%) が最多であった。

有効性

12ヵ月時点において、 虫垂切除群はJAK阻害薬群と比較して有意に高い臨床的寛解率を達成した。 また、 臨床的・内視鏡的改善率も、 虫垂切除群で一貫して良好な結果が得られた

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安全性

有害事象の発生率は虫垂切除群で56.5% (39/67例)、 JAK阻害薬群で60.0% (30/50例) であった。

虫垂切除に関連する合併症の発生率は4.3% (3/69例) で、 すべてGrade 2以下であった。

結論

ADTによる治療が奏効しない中等度~重度の活動性UC患者における虫垂切除術の実施は、 JAK阻害薬への切り替えと比較して、 12ヵ月後の臨床的寛解率および内視鏡的改善率が高かった。 また、 合併症発生率は低く、 安全性プロファイルも同程度であった。

発表者のコメント

【解説】難治性UCの虫垂切除、 JAK阻害薬を上回る寛解導入効果

虫垂切除は難治UC治療の新たな選択肢

虫垂切除がUCの 「寛解維持」 に有効であることは、 2025年にACCURE試験で報告¹⁾されていますが、 本試験は 「寛解導入効果」 について検討したものです。

導入効果および維持効果から、 治療選択肢が限られている難治症例や、 ADT休薬を希望する症例に対しての選択肢となり得る可能性があると感じました。

抄読会のディスカッション

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高齢者や多剤不応例への適用

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Answer

非常に臨床に即した視点です。 本研究でも重症度 (MES 3) の高い症例が約半数含まれていました (虫垂切除群 43.3%、 JAK阻害薬群 49.0%)。 そのような難治例において、 虫垂切除が侵襲を抑えつつ病勢を安定させる一助となる可能性が示唆されています。

手術のリスク

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Answer

本研究では全大腸炎型の割合が虫垂切除群で43.3%、 JAK阻害薬群で59.2%と、 重症例も含まれていました。 術後の合併症として膿瘍形成が1例 (1.4%) 報告されており、 開口部の炎症によるリークの可能性は完全には否定できません。

しかし、 全体的な合併症率は4.3%と低く、 安全性は許容範囲内と考えられます。

Delayed responderの可能性

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Answer

増悪開始から介入までの期間の中央値は、 虫垂切除群 (8.4ヵ月) の方がJAK阻害薬群 (5.4ヵ月) よりも有意に長く (p=0.047)、 背景の違いが認められました。

ただし、 以前の治療への反応性 (1次無効か部分有効か) に関する厳密な区分については、 論文中に詳細は示されていませんでした。

比較試験としての妥当性

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Answer

解析対象のJAK阻害薬群のうち、 TOFAが80%以上 (43/49例) を占め、 UPAは少数 (2例) でした。

近年、 JAK阻害薬間での有効性の違いが明らかになってきているため、 UPAとの比較であれば結果が異なる可能性は考えられます。

<出典>

1) Lancet Gastroenterol Hepatol. 2025; 10: 550-561.

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北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター (IBDセンター)

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潰瘍性大腸炎・クローン病を中心とした炎症性腸疾患に対し、 消化器内科を軸に多職種が連携し、 先進的な診療と研究を推進する拠点である。 専門医が高度な治療選択を提供し、 IBD診療の質向上を目指して活動している。

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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

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