培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果より
著者

MDアンダーソンがんセンター感染症科 松尾貴公

1年前

培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果より

Characteristics and outcomes of culture-negative prosthetic joint infections from the Prosthetic Joint Infection in Australia and New Zealand Observational (PIANO) cohort study

Bone Jt Infect. 2022 Sep 20;7(5):203-211.
培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果より

研究方法

研究デザイン

前向き、 多施設観察研究。

対象

2014年~2017年に、 オーストラリアとニュージーランドの27施設で診断された人工関節感染症患者。

主な評価項目

治療成功率*¹およびCN感染症患者の診断基準適合率*²

*¹ 24ヵ月時点での感染症再発なし、 生存、 抗菌薬非投与、 人工関節の保持
*² 2014年版IDSA基準、 2013/2018年版ICM基準、 2021年版EBJIS基準

主な研究結果

CN感染症患者は女性・肩関節感染が多い傾向

合計783例 (膝関節 : 427例、 股関節 : 323例、 肩関節 : 25例) のうち、 24ヵ月の追跡データが利用可能な650例 (CN群 55例、 CP群 595例) が解析の対象となった。

CN群55例 (8.5%) のうち、 女性は58.2% (CP群 41.2%)、 肩関節感染は9.1% (CP群 2.7%)、 CRP平均値は116 mg/L (CP群 175.5 mg/L)であった。

感染タイプは急性後期感染が最多

CN感染症のタイプは急性後期感染が最も多く (38.2%)、 早期術後感染 (29.1%)、 慢性感染 (21.8%) と続き、 CN感染症とCP感染症の間で感染タイプに有意差は見られなかった。

2014年版IDSA基準には100%適合

診断基準に適合した割合は、 2014年版IDSA基準100%、 2018年版ICM基準63.6%、 2021年版EBJIS基準80%であった。

手術はDAIRが一般的

CN群では、 最も一般的な手術戦略はDAIR* (30例、 54.6%)、 次いで二段階置換術 (13例、 23.6%) であった。

*デブリードマン、 抗菌薬、 インプラント温存

CN感染症は治療成功率が高い傾向

全体として、 CN人工関節感染症はCP感染症と比較して治療成功率が高い傾向があった (CN群 : 74.5%、 CP群 : 51.8%、 p=0.001)。

培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果より

CN人工関節感染は、 静注および内服治療の選択において起因菌に応じた適切な抗菌薬選択ができないことから、 臨床的に頭を悩ませる感染症の1つです。

培養陰性となる原因として、 「培養不可能な偏性細菌による感染」 「培養採取前の抗菌薬投与による培養の偽陰性」 「そもそも感染ではない」 などが挙げられますが、 特に肩関節において培養陰性となることが多いことが示されました。

これは、 肩関節人工関節感染症における主要な起因菌であるCutibacterium acnesなどの培養に、 時間を要する細菌が関連している可能性があります。

関節穿刺あるいは手術による組織検体を最長14日まで培養期間を延長する施設が多いですが、 他の通常の組織検体と同様に5~7日のみの培養期間では同定を逃してしまう可能性が示唆されています。

また、 「検体採取前の抗菌薬投与」 は最も大きな培養陰性の原因です。 状態が安定していれば、 可能な限り抗菌薬開始前の培養採取が推奨されます。

近年、 16S rRNAや次世代シーケンシング (NGS) による人工関節感染の診断の報告も増加しており¹⁾、 今後のCN人工関節感染に対する診断率の向上が期待されます。

<出典>
1) Diagn Microbiol Infect Dis. 2021 Oct;101(2):115448.

2011年 長崎大学医学部卒業、 聖路加国際病院初期研修・内科専門研修・内科チーフレジデント・感染症科フェロー・医員を経て2021年 テキサス大学ヒューストン校/MDアンダーソンがんセンターにて臨床留学。 2022年 同チーフフェロー、 2023年 同アドバンストフェロー、 2024年よりメイヨークリニック感染症科の整形外科感染症フェローとして骨関節感染症に特化したトレーニングを行い更なる研鑽を積んでいる。 また、 日本チーフレジデント協会 (JACRA) 世話人を経て、 現在日本感染症教育研究会 (IDATEN) KANSEN JOURNAL編集委員・米国感染症学会 (IDSA) 感染症教育推進委員。 2024年2月よりFebrile Podcast ID Digital Institute (IDDI)のメンバーも務めており、 デジタルデバイスを活用した新しい感染症教育に積極的に取り組んでいる。
「1分間感染症コンサルト」 のアカウントはこちら!
X (旧twitter) : @1min_ID_consult
X (英語版) : @1min_IDconsult
Youtube : @1min_ID_consult
Instagram : @1min_ID_consult

ポストのGif画像
培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果よりの全コンテンツは、医師会員限定でアプリからご利用いただけます*。
*一部のコンテンツは非医師会員もご利用いただけます
臨床支援アプリHOKUTOをダウンロードしてご覧ください。
今すぐ無料ダウンロード!
こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
培養陰性人工関節感染症の特徴と治療成績 : 783例のコホート研究結果より