【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)
著者

亀田総合病院

1年前

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)

講演情報

講師:安藤哲朗先生

亀田総合病院 脳神経内科

パーキンソン病治療のポイント

本稿ではパーキンソン病に特徴的な症状や脳内の変化、 類似する症状を持つ疾患との鑑別について、 ポイントを交えつつ紹介します。
  1. 運動症状と⾮運動症状がある。
  2. 脳の主要な病理変化は⿊質の変性、 レビー⼩体の出現である。
  3. ⿊質-線条体の障害により⽋乏したドパミンを補充することで症状が軽減するが、神経変性そのものは止まらない。
  4. よく似た疾患 (パーキンソン症候群) があり、 鑑別診断が難しい場合がある。

パーキンソン病の運動症状

静止時振戦

パーキンソンの振戦は静止時に起こりやすく、 動くと振戦が止まるのが特徴である。 ⽚側優位で始まり、 進⾏しても⽚側優位のことが多い。

無動 (動作緩慢)

歩⾏や起⽴を含め、 あらゆる動作が遅くなり、 時間がかかる。

筋強剛

他動的に関節を動かすと抵抗がある。 左右差があることが多い。

歩行障害

⼩刻みの歩⾏で⼿の振りが乏しいのが特徴。左右のスタンスは広くならない。

姿勢反射障害

両肩を後ろ側に引っ張ると足が後ろに出ず倒れてしまうこ。 そのためパーキンソン病の患者は進⾏すると転倒しやすくなる。

矛盾性運動

小刻み歩行やすくみ足の患者に、 歩⾏のきっかけになるような⽬印やリズムがあると⾜が前に出やすい。 

非運動症状

便秘*、 レム睡眠行動異常*、 嗅覚障害*、 排尿障害、 認知症、 うつ、 発汗障害、 痛み、 倦怠感

*運動症状発現のかなり前から症状が出現することが多い。

パーキンソン病の検査

DaT Scan検査

正常だと勾⽟状に像が出るが、 異常な場合はドット上に像が出たり薄くなったりして表⽰される。 ⿊質線条体ニューロンの変性と関係が深く、 左右差があることが特徴のひとつ。

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)
安藤哲朗氏提供

MIBG心筋シンチグラフィ

⼼臓の交感神経機能を⾒る検査。 通常であれば⼼臓に造影剤の集積が認められるが、 パーキンソン病だとそれがみられない。 レビー⼩体の病理と関連が深いことが知られている。

【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)
安藤哲朗氏提供

パーキンソン病の治療

基本は"ドパミン"の補充

パーキンソン病においては中脳の⿊質から線条体のニューロンにおいて神経変性があり、 ドパミンが枯渇することによって、 運動障害が⽣じるので、 ドパミンを補充ことにより運動症状の改善がみられる。

ドパミン補充療法は神経変性を⽌める治療ではないが、 レボドパの登場によりパーキンソン病の患者のADLが約10年維持可能ともいわれる。

パーキンソン症候群によく似た病態

パーキンソン病はその周辺に似た症状をもつ疾患が多く、 鑑別が難しいことがある。

薬剤性パーキンソン症候群

⾼齢者がどのような薬飲んでいるかは必ずチェックする必要がある。 特に消化器⽤薬は効率で⾼齢者にパーキンソン症候群をおこす。 以下に原因薬剤例をあげる。

  消化器用薬

  Ca拮抗薬

  抗てんかん薬

進行性核上性麻痺

パーキンソン病に似た運動障害がでるが、 パーキンソン病に⽐べて左右の⾜のスタンスが広い。病初期から姿勢反射障害がつよい。 MRIで確認すると、 中脳吻側がハチドリのくちばしのように萎縮している (ハミングバードサイン)。

系統萎縮症

MRIでみると被殻の萎縮がおこり、 その周辺に低信号を確認することができる。 歩⾏時に左右の⾜のスタンスが広いなどの特徴がある。

脳血管性パーキンソン症候群

左右のスタンスが広い (開脚状態)。 姿勢反射障害も強い。

その他

正常圧⽔頭症、 ⽪質基底核変性症など

鑑別のポイント

ポイント① 震え

  • パーキンソン病の特徴は静⽌時振戦
  • 震えの周期は1秒間に4~5サイクル
  • 姿勢性振戦では本態性振戦の可能性を、 企図振戦では小脳失調の可能性を考える。

ポイント② 歩行障害

  • ⽚⿇痺歩⾏との鑑別 (⽚⿇痺歩⾏は肘が屈曲して、 ⽚側の⾜をひきずるような歩き⽅。 パーキンソン病も初期は⽚側優位なので間違えやすい)
  • パーキンソン病は進⾏すると両側性の⼩刻み歩⾏になる
  • 多発性脳梗塞の⼩刻み歩⾏場合は、 両⾜のスタンスが広い (開脚歩⾏)
  • 遺伝性脊髄⼩脳変性症 (失調性歩⾏):両⾜のスタンスが広い (開脚歩⾏)、 不安定
  • 家族性痙性対⿇痺 (痙性対⿇痺歩⾏):ハサミ歩⾏。 ⾜をつっぱり振り回すように歩く
講師:安藤哲朗先生
亀田総合病院 脳神経内科

こちらの記事の監修医師
こちらの記事の監修医師
HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

HOKUTO編集部
HOKUTO編集部

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。

監修・協力医一覧
QRコードから
アプリを
ダウンロード!
HOKUTOのロゴ
HOKUTOのロゴ
今すぐ無料ダウンロード!
様々な分野の医師
様々な分野の医師
【亀田総合病院内科グランドセミナー2023】よくわかるパーキンソン病 (安藤哲朗先生)