HOKUTO編集部
15日前
国立がん研究センター、 名古屋市立大学、 日本臨床腫瘍研究グループ (JCOG) は11月5日、 共同で日本初となる乳癌プラットフォーム試験S-FACT (JCOG2205 / 研究統括者 : 名古屋市立大学臨床研究戦略部特任教授 岩田広治氏) を、 2024年6月から乳癌周術期を対象に開始したと発表した。
欧米での承認薬が日本では承認されず、 患者に新薬が届かない 「ドラッグ・ロス」 は、 乳癌領域でも喫緊の課題となっている。 しかし日本にはこれまで、 周術期における新規薬剤候補を見出す 「プラットフォーム試験」がなく、 ドラッグ・ロス解消に向けたプラットフォーム試験の構築が求められてきた。
プラットフォーム試験は、 継続的に1つの疾患に対して複数の治療を同時に評価する試験方法であり、 試験中に新たな治療法や対象患者の追加・除外が認められている。 そのため、 複数治療を同時に実施できることによる試験の効率化、 有効性の迅速な評価、 持続的な薬剤の開発等が可能となる。
なお、 プラットフォーム試験はCOVID-19のパンデミック下で加速し、 海外における乳癌のプラットフォーム試験の先駆者としては、 早期乳癌を対象に複数の新規薬剤における術前療法の有効性を評価した第Ⅱ相多施設共同試験I-SPY2が挙げられる。
S-FACT試験は、 ECOG PS 0-1、 18-80歳のStage2-3の再発高リスク浸潤性乳癌患者を対象とした第Ⅱ相医師主導治験。 同試験は乳癌領域で日本初となる新規薬剤開発プラットフォームの構築であり、 医師主導治験の迅速かつ持続的な実施によるドラッグ・ロスの解消、 およびctDNA解析を活用したさらなる個別化医療の開発などにつなげることが狙いだ。
S-FACT試験では、 トリプルネガティブ、 ホルモン受容体 (HR) 陽性HER2陰性、 HER2陽性などの乳癌サブタイプ別に患者が分類され、 各グループにおいて標準治療と複数の試験治療が評価される。
なお、 同試験のマスタープロトコールは術前療法~手術までとされ、 術後以降は 「フォローアップ研究」 として別枠で実施される予定だという。 1つの試験治療ごとに約2年の募集期間が予定されており、 現在はトリプルネガティブ乳癌を対象にした最初の試験が開始されているという。
トリプルネガティブおよびHR陽性HER2陰性乳癌の主要評価項目は、 病理学的完全奏効 (pCR) 割合およびctDNAクリアランス割合* (pCRが達成された場合に解析)、 副次評価項目はQOLおよび安全性が設定された。
HER2陽性やその他の特定対象では、 主要評価項目にpCR割合、 副次評価項目がctDNAクリアランス割合、 QOL、 安全性が設定された。
最後に研究班の名古屋市立大学共同研究教育センター臨床研究戦略部特任講師・能澤一樹氏は 「より良い薬剤を、 より多く・早く乳癌患者さんへ届けられるよう尽力し、 治癒率の向上を目指す。 真のドラッグ・ロス解消を目指し、 術前治療のプラットフォーム試験の先駆けとして、 本試験を成功させたい」 と意気込みを語った。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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