HOKUTO編集部
10ヶ月前

2025年6月にイタリア・ミラノで開催された欧州血液学会 (EHA 2025) において発表された、 「本態性血小板血症」 および 「原発性免疫性血小板減少症」 に関する注目演題について、 大阪国際がんセンター血液内科副部長の藤重夫先生にご解説いただきました。
今回、 本態性血小板血症 (ET) に対する新規治療薬INCA33989の第Ⅰ相試験INCA33989-101/-102の初期結果が報告された。 ETの約25%に認められるCALR遺伝子のエクソン9変異 (mutCALR) を認識するINCA33989は、 世界初の完全ヒトFcサイレンシングIgG1抗体として開発されたという。
対象は既存治療に抵抗性または不耐かつ高リスク (60歳以上、 血栓症・出血歴、 極度の血小板増多) のET患者41例だった。 患者は2週ごとにINCA33989を静注投与 (投与量 : 24~2,500 mg) され、 治療期間中央値は20週間だった。
主要評価項目は安全性および忍容性だった。
主なAEは倦怠感 (27%) と上気道感染 (17%) で、 いずれもGrade 2以下だった。 Grade 3以上のAEは22%に認められたが、 膵炎を伴わない一過性のリパーゼ上昇が最多 (5%) であり、 治療中止や用量調整を必要とした例は極めて少なかった。 また重篤な血小板減少症は認められず、 用量制限毒性 (DLT) は確認されなかった。
有効性の面では、 血小板数の迅速かつ持続的な正常化が全用量群で観察され、 評価可能例の79% (30/38例) で奏効 (うち完全奏効66%) が得られた。 さらに88%でmutCALRのアレル頻度 (VAF) の低下が認められ、 50%以上のVAF減少と定義される部分的分子学的奏効は、 治療開始12週時点で25%が達成した。 これらは疾患修飾効果を示唆する知見である。
本報告は第I相試験の途中段階と非常に早期データであり、 長期的なデータ報告や安全性・有効性に関する評価にはまだ時間を要する。 ただし現時点でINCA33989は安全性に優れ、 高い奏効率と分子学的改善を示す新規治療薬であり、 今後の疾患修飾的アプローチとして期待される。
INCA33989のような遺伝子異常を有する抗原のみを認識する抗体薬が、 他疾患でも開発されれば、 治療選択肢も拡がることが期待できる。
>>詳細を確認する
原発性免疫性血小板減少症 (immune thrombocytopenia ; ITP) は自己免疫機序による慢性または持続性の血小板減少症であり、 再発を繰り返すことが多く、 複数の治療介入が必要となる。 特にステロイド抵抗性または再発例では、 さまざまな新薬が利用可能となってきているものの、 標準治療には依然として限界があり、 さらに新たな作用機序を有する治療薬が求められている。
今回報告された抗CD38抗体CM313は、 CD38陽性細胞 (特に自己抗体産生に関与する形質細胞) を選択的に除去することにより、 ITPの病態改善効果が期待されている。 第Ⅱ相CM313試験は、 標準1次治療 (ステロイド) に以前は反応したが再発あるいは抵抗性を示した成人の持続性または慢性ITP患者を対象に行われた第Ⅱ相無作為化比較試験である。
対象の45例がCM313群30例、 プラセボ群15例に2:1で無作為に割り付けられ、 CM313 (16mg/kg) またはプラセボを週1回、 計8週間投与された。 主要評価項目は8週目時点での全体奏効率 (2回連続で血小板数が30×10⁹/L以上、 かつ出血を伴わない) とされた。
8週目時点での奏効率は、 プラセボ群の20%と比較して、 CM313群では83%と有意に改善した (差 63%㌽、 95%CI 33.7–81.3%㌽、 p<0.0001)。
さらに、 血小板数が50×10⁹/L以上に達するまでの期間中央値は、 CM313群の1週間に対し、 プラセボ群では同期間中に到達しなかった。 また、 同水準以上の血小板数を維持した期間の中央値は、 CM313群で18週、 プラセボ群で3週と、 治療持続効果の面でもCM313が優れていた (p=0.0035)。
安全性に関しては、 治療に伴う有害事象 (TEAE) はCM313群で83%、 プラセボ群で80%に発現し、 主な副作用は点滴関連反応および点状出血だった。 予期せぬ重篤なAEは認められず、 全体として忍容性は良好と判断された。
本試験は比較的小規模な無作為化比較試験ではあったものの、 CM313はプラセボと比して迅速かつ持続的な血小板増加効果を示し、 安全性にも優れていた。 ITP患者における新たな治療選択肢として、 今後のさらなる臨床開発が期待される。 ただし、 形質細胞が標的となることから、 長期的な治療スケジュールの確立が今後の検討課題と考えられた。
>>詳細を確認する

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。