海外ジャーナルクラブ
12ヶ月前
Yangらは、 発症24時間以内のST上昇型心筋梗塞 (STEMI) 患者を対象に、 ガイドライン準拠治療への上乗せ補助療法としての中国伝統医薬 (中医薬) Tongxinluoの効果について大規模無作為化二重盲検プラセボ対照試験CTS-AMIで検討した。 その結果、 Tongxinluoの投与は30日時点および1年時点の両方においてSTEMI患者の主要有害心脳血管イベント (MACCE) を有意に改善した。 本研究はJAMA誌において発表された。
しっかりと割り付けや盲検化ができているようですので、 ただ単に毎日3回、 12ヵ月間薬を飲む規則的な行動様式によって良いアウトカムが出ている訳ではなさそうです。 介入薬が複合物であること、 また作用機序が不明である点はマイナスなのですが、 少なくとも安全性に大きな問題がないことから臨床使用の一般化を検討すべき医薬品と言えそうです。
Tongxinluoは、 有効成分と正確な作用機序は不明なままだが、 潜在的に心臓を保護する作用があることが示唆されている。 心筋梗塞に対してはin vitro、 動物実験、 および小規模なヒトを対象とした研究で有望性が示されているが、 大規模な無作為化臨床試験では厳密な評価が行われていない。
中国の124病院から登録された発症後24時間以内のSTEMI患者
患者を以下の群に1 : 1の割合で無作為に割り付けた。
30日主要有害心脳血管イベント (MACCE)
30日脳卒中、 30日および1年時点の大出血、 1年全死因死亡、 ステント内塞栓症 (<24時間、 1~30日間、 1~12ヵ月間) など
主要評価項目
30日時点のMACCE発生
相対リスク (RR) : 0.64 (95%CI 0.47~0.88)
群間リスク差 (RD) : -1.8% (95%CI -3.2~-0.6)
30日MACCEにおける心臓死の発生
RR : 0.70 (95%CI 0.50~0.99)
RD : -1.2% (95%CI -2.5~-0.1)
1年時点でのMACCE発生
HR : 0.64 (95%CI 0.49~0.82)
RD : -3.0% (95%CI -4.6~-1.4)
1年時点MACCEにおける心臓死の発生
HR : 0.73 (95%CI 0.55~0.97)
RD : -1.6% (95%CI -3.1~-0.2)
副次評価項目
副次評価項目ではいずれも両群に有意差は認められなかった。
有害事象
Tongxinluo群で有意に多くの有害事象がみられた。 ただし、 主に消化器系の症状に限定されていた。
有害事象の内訳
p=0.02
Tongxinluoは30日および1年時点でのSTEMI患者のMACCEを有意に低下させた。 ただし、 STEMIにおけるTongxinluoの作用機序の確認にはさらなる研究が必要である。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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