【解説】喀痰治療における去痰薬の使い分け
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亀田総合病院

3ヶ月前

【解説】喀痰治療における去痰薬の使い分け

【解説】喀痰治療における去痰薬の使い分け

喀痰の定義

喀痰の定義は 「下気道で過剰に産生された分泌物が、 口腔を経て体外に排出されたもの」 とされています¹⁾。

下気道は1日に約100mLの気道分泌物を産生します。 また、 多くの呼吸器疾患は喀痰を呈します。 例えば、 COPDや喘息のような慢性気道疾患では、 気道の慢性炎症により気道分泌物が増加し、 痰の産生が亢進し、 気道粘液の粘稠度も増加します。

喀痰の治療

原因疾患の治療

喀痰治療の原則は原因疾患の治療です。 原因疾患の治療を行うことで、 喀痰の原因となる炎症などを軽減することができます。 

去痰薬の使用

原因疾患の治療でも改善を得られない場合には去痰薬を用います。 去痰薬については、 以下の3つを覚えておきましょう。

▼アンブロキソール

アンブロキソールは、 肺サーファクタントの分泌を促進することで、 気道粘液と気道上皮との粘着性を低下させるとされ、 排痰しやすくします。 効き方は 「痰のキレを良くする」 イメージです。 したがって、 「痰のキレが悪い」 「痰がのどに引っかかって出ない」 などの症状を訴える患者に用います。

また、 アンブロキソールは、 無作為化比較試験において、 プラセボと比較して重症のCOPDの増悪が減少したことが報告されています²⁾。

💬 呼吸器内科医のTips

COPD、 気管支喘息で粘稠な痰が出しづらい時、 肺炎で気道の奥にある痰が出しづらいときなどに用いることが多いです。

▼カルボシステイン

カルボシステインは杯細胞の過形成を抑制して、 気道粘液産生を抑制します。 効き方としては 「痰自体の量を減らす」 イメージです。 したがって、 「痰が多い」 という症状を訴える患者に用いられることが多いです。

カルボシステインは2017年に発表されたメタ解析で、 プラセボと比較してCOPDの増悪の減少、 QOLの改善が報告されています³⁾。

💬 呼吸器内科医のTips

COPDや慢性気管支炎で痰の量が多い患者に使いやすいです。

▼フドステイン

フドステインも杯細胞の過形成を抑制し、 気道粘液産生を抑制します。 効き方としては、 カルボシステインと同様に 「痰自体の量を減らす」 イメージです。 経験的には痰の量が多い患者に対して有効性を感じています。

💬 呼吸器内科医のTips

気管支拡張症や慢性気管支炎で日ごろから喀痰の量が多い場合にフドステインを使用することが多いです。

まとめ

  • アンブロキソールは、 痰のキレをよくするので 「切れの悪い痰」 に使用する。 
  • カルボシステインとフドステインは痰の量を減らすので 「量が多い痰」 に使用する。 
  • アンブロキソールとカルボシステインは、 COPDの増悪を減らす効果が報告されている。 
  • フドステインは経験的に気管支拡張症に用いることが多い。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019 作成委員会編. 咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019. 2019. メディカルレビュー社.
  2. Effect of twelve-months therapy with oral ambroxol in preventing exacerbations in patients with COPD. Double-blind, randomized, multicenter, placebo-controlled study (the AMETHIST Trial). Pulm Pharmacol Ther. 2004;17(1):27-34. PMID:14643168
  3. Effect of carbocisteine on patients with COPD: a systematic review and meta-analysis. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017 Aug 2:12:2277-2283. PMID: 28814855

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