MDアンダーソンがんセンター感染症科 松尾貴公
10ヶ月前
Antibiotic Holiday in 2-Stage Exchange for Periprosthetic Joint Infection: A Scoping Review

研究デザイン
PRISMA-ScRガイドライン¹⁾に基づくスコーピングレビュー*。
データソース
MEDLINE、 Embase、 Web of Scienceにおけるデータを2024年1月14日に検索。
対象患者
股関節または膝関節の慢性PJI患者に対して2期的再置換術が行われた243例。
調査対象
抗菌薬投与の有無が明記されており、 治療失敗に関する記載がある研究。
除外基準
言語が英語以外の文献。
総説・症例報告など、 原著研究以外の文献。
解析対象
解析研究数は全243研究であり、 内訳はケースシリーズ238件、 コホート研究5件であった。
ケースシリーズの解析結果を以下に示す。
抗菌薬の休薬・継続判断
ケースシリーズ238件のうち、 202件 (84.9%) で抗菌薬休薬を行っていた (休薬群)。 継続は36件 (15.1%) であった (継続群)。
治療失敗率
休薬群が 16.4% (2,843/17,329例) だったのに対し、 継続群 13.1% (271/2,074例) であり、 休薬群の治療失敗率が有意に高かった (p<0.001)。
再置換までの間隔
3ヵ月未満で再置換された症例は、 休薬群では27.2%、 継続群では66.7%であった (p<0.001)。 休薬群で再置換までの間隔が長くなる傾向があった。
コホート研究の解析結果を以下に示す。
治療失敗率
コホート研究5件では、 治療失敗率は休薬群で18.4%、 継続群で14.2%であったが、 有意差はなかった (p=0.228)。
また、 比較可能なコホート研究3/5件は、 バイアスのリスクが高いと判断された。
なお、 調査論文の大多数で 「慢性PJI」 の定義が不明確であった。 また、 スペーサー交換の扱いにもばらつきがあった。

「再置換術前の抗菌薬休薬」 に一石を投じる結果
PJIにおける2期的置換術において、 再置換術前の抗菌薬休薬は、 これまで多くの施設で経験的に運用されてきました。 2013年の米国感染症ガイドライン²⁾にもこの方針が明記されていますが、 本研究はその科学的根拠が乏しいことを示唆した重要な報告です。
本レビューの結果からは、 「抗菌薬休薬を行うことで再置換までの治療期間が延長され、 かつ治療失敗率がむしろ高くなる」 可能性が示唆されています。 近年、 一部の施設で再置換の遅延自体が治療成績に悪影響を与える懸念から、 抗菌薬を中止せずに比較的早期に再置換術を行う戦略が取り入れられています。
今後、 抗菌薬休薬の有無はもちろん、 再置換のタイミングや術前に確認するべき検査 (穿刺・培養など) を含めたさらなる研究と、 これらを組み合わせた最適なプロトコルの確立が求められます。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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