寄稿ライター
12ヶ月前
医師の皆さん、 頑張りすぎてないですか?心身ともに疲れていませんか?連載 「医師のためのボディメンテナンス」 の3回目では、 診察の合間にも自分でできるオススメのツボ刺激をご紹介します。
前回 「頑張る医師にオススメの呼吸法」 は、 自律神経 (特に副交感神経を優位にする) の調整のための呼吸法を紹介しました。 今回は呼吸法にプラスし、 ツボ刺激を加えたメソッドを紹介します。
私が提案するのは、 ご自身が気持ち良く、 リラックスして継続して出来るものです。 本来身体が持っている自然治癒力 (ホメオスタシス) を高め、 心と身体のポテンシャルを高める3つのポイントが以下になります。
疲労やだるさを感じる時に、 本来備わっている自然治癒力を高め、 心と身体のポテンシャルを最大限に引き出すセルフケアの習慣づけは非常に重要です。
まず、 先生方はツボ (経穴) についてどの程度知っていますか?おそらく 「足裏ツボや痩せる耳つぼは知っているけれど、 詳しくは知らない」 という先生が大半だと思います。
ツボは東洋医学の経験の蓄積によって確立されたもので、 数千のツボがあると言われています。 公式には、 WHO (世界保健機構) 2006年、 治療効果を認めたツボ 「361穴」 を認定しています。 全身に361のツボがあるということです 。
試しに、 代表的なツボの1つである合谷 (ごうこく) を刺激してみましょう。 このツボは親指と人差し指の骨が交差した部分 【図1】にあります。 反対側の親指でゆっくり5秒ほど押してみてください。
その時に 「ズーン」 と重たい感覚を感じることが大事です。 何とも言えない重だるい、 または痛気持ち良い感覚だと思います。 実はそのツボ刺激で皆さんの脳内には痛みや疲労を解消させる 「脳内麻薬 (オピオイド) 」 が分泌されています。
その機序を簡単に説明します。 ツボを刺激した際にズーンとした感覚は脳で感じるものです。 ツボには多くの知覚神経が密集しており、 主に痛覚、 温覚、 冷覚に興奮する 「ポリモーダル受容器」 を介し、 知覚神経⇒脊髄へ、 脊髄⇒脊髄視床路を通り大脳皮質に伝わります。
ツボから得た信号で脳を刺激していることになります。 ポリモーダル受容器は侵害受容器であり、 鍼やお灸、 ツボ刺激を 「痛み刺激」 として脳へ伝え、 本来人間が持っている防衛本能が働き、 オピオイドが分泌されるわけです。
ツボ押しは自分で出来るメリットがあります。 どの程度の量のオピオイドの分泌がされるかは、 【図2】を見て下さい。 「合谷」 に鍼刺激を行った際のエンドルフィン (オピオイドの一種) の血中濃度を測定したもので、 刺激前 (5.6pg/ml) に比べて、 刺激30分後 (13.6pg/ml) は2~3倍に増加します。 つまり薬物などの外的要因に頼らず、 自然治癒力を最大限高められるのがツボ刺激になります。
鍼や指圧といった侵害刺激が、 中脳のPAG (中脳中心灰白質) を活性化し、 脊髄と脳に存在するオピオイド受容体にオピオイドが結合することで、 痛みの伝達神経をブロックし鎮痛作用が得られるということです。
「ホンマかいな?」 と疑問に感じる先生もいると思います。 ここでツボ刺激による実験をしてみましょう。
そうなんです。 通常、 体を柔らかくするには体幹部や足のストレッチなどをすると思いますが、 まったく関係のない手の末端のツボを刺激することで、 なぜか体の柔軟性が増したり、 腰痛が軽くなったります。
ツボ刺激によってオピオイドが分泌し、 自律神経の交感神経の抑制が働き、 リラックス効果を導き出すからです。
ご自身で行うツボ刺激は疲れない体を手に入れる、 または疲れを緩和させる一つのツールになります。
オピオイド分泌やリラクゼーションに効果のあるツボをもう1つ紹介します。
内関 (ないかん)
前回紹介した呼吸法と併せて行うと更に効果的です。
ツボを押しながら、 ゆっくり5秒かけて息を吐いていく▽3~5秒くらいかけて息を吸いながらツボ押しを解除していく――これを5回繰り返してください。 息を吐きながらツボを刺激すると、 ズーンとした感覚が心地良い響きとなりませんか?如何でしょうか。 少しリラックスしましたか?
先生方が普段、 仕事の合間、 疲れた時などに活用して頂ければ幸いです。
なお、 2024年2月6日午後10時より放送予定の 「カズレーザーと学ぶ。 」 (日本テレビ系列) において 「鍼治療・ツボ押し 脳内オピオイドの効能」 を説明いたします。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。