Shin Hらは、 SGLT2阻害薬またはメトホルミンで治療を開始した2型糖尿病の成人患者を対象に、 心血管イベントのリスクを評価するコホート研究を実施した. 結果、 SGLT2阻害薬はメトホルミンと比べ、 心筋梗塞・脳卒中による死亡のリスクは同等であるが、 心不全による入院および死亡のリスクは低いことが示された. 本研究はAnn Intern Med誌において発表された.
背景
SGLT2阻害薬の使用に関連する心血管イベントのリスクに関するエビデンスは、 メトホルミンと比較して限定されている.
研究デザイン
- 対象は、 SGLT2阻害薬*またはメトホルミンによる治療を開始した18歳以上の2型糖尿病患者.
*カナグリフロジン、エンパグリフロジンダパグリフロジン
- 米国民間保険会社およびメディケアのレセプトデータベースで1対2の傾向スコアマッチングを実施した.
- SGLT-2阻害薬投与:8,613名対象
- メトホルミン投与:17,226名対象
- 主要アウトカムは、 心筋梗塞による入院、 虚血性・出血性脳卒中による入院または全死亡 (MI/脳卒中/死亡) の複合、 心不全による入院または全死亡 (HHF/死亡) の複合とした. また、 性器感染症を含む安全性評価も実施した.
研究結果
- MI/脳卒中/死亡のリスクは両群で同程度 (HR 0.96、 95%CI 0.77~1.19) であったが、 HHF/死亡のリスクはSGLT2阻害薬投与群の方が低かった (HR 0.80、 95%CI 0.66~0.97).
- また、 SGLT2阻害薬投与群のほうがHHF (HR 0.78、 95%CI、 0.63~0.97) および MI (HR 0.70、 95%CI 0.48~1.00)のリスクが低く 、 脳卒中、死亡、MI/脳卒中/HHF/死亡のリスクは同程度であった.
- 性器感染症のリスクはSGLT2阻害薬投与群の方が高かったが (HR 2.19、 95%CI 1.91~2.51) 、 それ以外はメトホルミン投与者と同程度の安全性を有していた.
結論
- SGLT2阻害薬で治療を開始した患者は、 メトホルミンによる治療を開始した患者と比較して、 MI/脳卒中/死亡のリスクは同程度であるものの、 HHF/死亡およびHHFのリスクは低かった.
- また、 有害事象については、 性器感染のリスクが高いことを除いて同程度であることが示された.
原著
Shin H、 et al、 Cardiovascular Outcomes in Patients Initiating First-Line Treatment of Type 2 Diabetes With Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors Versus Metformin : A Cohort Study. Ann Intern Med. 2022 May 24. doi: 10.7326/M21-4012. PMID: 35605236