HOKUTO編集部
4ヶ月前
下部消化管領域における実臨床の課題を専門医の視点から解説する新シリーズです。第1回目は大腸癌の1次治療がテーマです。ぜひご活用ください。
大腸癌の1次治療の選択においては、 Mono (単剤療法)、 Doublet (2剤併用療法)、 Triplet (3剤併用療法) の3つの選択肢があります。
1次治療を考える上で最も大切なことは患者さんの全身状態です。 まず併用療法の薬物療法に忍容性があるのかを考えます。 この時に一つの参考になるのはパフォーマンス・ステータス(PS)や年齢となります。
『大腸癌治療ガイドライン』においては、 Doublet以上の薬物療法に忍容性がある全身状態のよい患者を 「fit」、 薬物療法の適応に問題があり併用療法に対する忍容性に問題がある患者を 「vulnerable」 と定義しています¹⁾。
高齢者に対しての化学療法に関しては、 JCOG1018の結果が報告されており、 70~74歳かつPS 2もしくは75歳以上かつPS 0-2の患者に対してのフルオロウラシル/レボホリナート (5-FU/l-LV) もしくはカペシタビン単剤とFOLFOX (5-FU、 I-LV、 オキサリプラチン) もしくはCAPOX (カペシタビン、 オキサリプラチン) にそれぞれ血管新生阻害薬を上乗せする効果を比較検証した第Ⅲ相試験が行われています²⁾。
この結果において無増悪生存期間 (PFS) と全生存期間 (OS) は両群に差はなく、 副作用が投与中止に結び付いた割合はDoublet群において多い結果でした (27% vs 46%)。 つまり、 脆弱な高齢者においてはオキサリプラチン併用のDoubletは、 有害事象による投与中止が多くなり、 PFSとOSに寄与できないということでした。 こうした高齢者においては基本的にはMonoによる治療を検討すべきでしょう。
Tripletについては、 大腸癌の1次治療としてFOLFOXIRI+ベバシズマブ併用療法をFOLFIRI+ベバシズマブ併用療法と比較したTRIBE³⁾、 TRIBE2⁴⁾の結果から、 Doubletに比べて奏効割合が高く、 OSが延長しています。 しかしながら毒性面、 Tripletでは特に好中球減少がGrade 4で19%、 Grade 3以上で69%も発現することが報告されており注意が必要です。
このことからTripletを行う対象を選択する際には、 化学療法の目的を考える必要があります。 例えば、 コンバージョン手術を目指して可能な限り奏効割合が高い治療を行いたい場合や、 骨髄機能が十分保たれており忍容性が高いと期待できる若年者においてOSの利点を最大限に得る目的においては、 Tripletがより良い適応となります。
大腸癌の1次治療を開始する患者さんを目の前にしたとき、 その患者さんの全身状態と化学療法の目的を考えることが何より大切です。 これらの組み合わせから、 最適なレジメン選択を行いましょう。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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