海外ジャーナルクラブ
4ヶ月前
Liらは、 HR陽性HER2低発現およびHER2-0の転移乳癌患者を対象に、 CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用による1次治療の有効性について、 二重盲検プラセボ対照無作為化臨床試験の二次解析で検討した。 その結果、 HER2低発現患者において無増悪生存期間 (PFS) の有意な延長が認められた。 本研究はEBioMedicineにて発表された。
eBioMedicineは、 Cell誌とLancet誌が共同でサポートするオープンアクセス誌です。 26行に及ぶlimitationの記載が、 査読の厳しさを物語っています。
現在、 CDK4/6阻害薬と従来の内分泌療法の併用は、 HR陽性HER2陰性の転移性乳癌に対する1次治療として推奨されている。 しかし、 HER2低発現およびHER2-0のサブグループにおいて、 内分泌療法にCDK4/6阻害薬を追加することの有益性は明らかになっていない。
そこで本研究は、 HR陽性で、 HER2低発現およびHER2-0の転移乳癌患者を対象として、 内分泌療法と併用したときのCDK4/6阻害薬の効果について検討することを目的とした。
二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験であるPALOMA-2およびPALOMA-3試験の二次解析を行った。
対象と評価
両試験に参加したHER2低発現*¹およびHER2-0*²の患者における無増悪生存期間 (PFS) を評価した。
解析対象は、 2013年2月~2014年8月に17ヵ国で登録されたHER2陰性HR陽性の女性患者で、 免疫組織化学 (IHC) および/またはin situ hybridization (ISH) の結果を利用可能な1,186例であった。 なお、 データ解析は2023年3月~5月に実施された。
介入
PALOMA-2試験
HR陽性転移乳癌の1次治療として、 患者を以下のいずれかの群に無作為に割り付けた。
- パルボシクリブ+レトロゾール群
- プラセボ+レトロゾール群
PALOMA-3試験
前回の内分泌療法中に進行または再発した患者を、 以下のいずれかの群に無作為に割り付けた。
- パルボシクリブ+フルベストラント群
- プラセボ+フルベストラント群
転移乳癌患者666例のうち、 HER2-0の患者は153例、 HER2低発現の患者は513例であった。
HER2低発現の患者集団
パルボシクリブ+レトロゾール群では、 プラセボ+レトロゾール群に比べてPFSが有意に延長した。
ハザード比 : 0.52 (95%CI 0.41-0.66)、
p<0.0001
HER2-0の患者集団
パルボシクリブ+レトロゾール群とプラセボ+レトロゾール群との間で、 PFSに有意差は認められなかった。
ハザード比 : 0.79 (95%CI 0.48-1.30)、
p=0.34
転移乳癌患者530例のうち、 HER2-0の患者は153例、 HER2低発現の患者は367例であった。
HER2低発現の患者集団
パルボシクリブ+フルベストラント群では、 プラセボ+フルベストラント群に比べてPFSが有意に延長した。
ハザード比 : 0.39 (95%CI 0.28-0.54)、
p<0.0001
HER2-0の患者集団
パルボシクリブ+フルベストラント群では、 プラセボ+フルベストラント群に比べてPFSが有意に延長した。
ハザード比 : 0.54 (95%CI 0.30-0.95)、
p=0.034
著者らは 「CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用は、 HER2低発現患者でPFSを有意に改善した。 一方、 HER2-0の患者で 効果がみられたのは、 主に前回の免疫療法で進行がみられた患者であった。
さらにHER2-0の患者では、 CDK4/6阻害薬による1次治療で得られる利益が限定的であるかもしれない。 今回得られた知見を検証し、 CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用による1次治療から最も利益を得られる患者部分集団を明らかにするには、 さらなる研究が必要である」 と考察している。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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