メイヨークリニック感染症科 松尾貴公
2ヶ月前
メイヨークリニック感染症科 松尾貴公先生による連載です。 「クレーム対応のコツ」の2回目、 今回は「円滑に進めるための4つのポイント」を解説します。
Take home message
前回はクレームを生じる2つのギャップについて学びました。 今回は、 実際にクレームを受けた際にどのように対応すればよいか、 4つの実践的なポイントを紹介します。
患者さんからクレームを受けたとき、 まずは相手の話をしっかりと最後まで聞くことが何よりも重要です。
例えば、 「何度も採血に失敗して、 一体どうしてくれるの?もうこれ以上行わないでほしい、 担当を変えてほしい」 というクレームを受けたとします。 このような場合、 つい話の途中で否定したり、 自分の立場を弁護するような発言をしてしまったりすることがあります。 「血管が細いからです」 「途中までは順調だったのですが、 動かれてしまって…」 など、 患者さんのせいにするような言い訳をしてしまうことはないでしょうか。
しかし、 患者さんが求めているのは、「つらい思いを誰かに理解してほしい」 という気持ちです。 まずは、 相手の話に耳を傾け、 何に不満を感じ、 何を望んでいるのかを正確に理解する姿勢が大切です。
話を十分に聞くことで、 相手の気持ちを尊重し、 クレーム対応をスムーズに進めるための第一歩となります。
相手の話を十分に聞いた後には、 まず相手の心情に寄り添い、 共感を示すことが重要です。 クレームを伝える側は、 内容そのものよりも自分の気持ちを理解してほしいと考えていることが多いです。
しかし、 全面的に謝罪するのではなく「限定的な謝罪」 を心がけることがポイントです。 例えば、 「説明が不十分でご不安をおかけしてしまい、 申し訳ありません」 といったように、 具体的な行為に対して謝罪することで、 相手の感情に配慮した対応ができます。 これは、 すべての責任をこちらが認めたと捉えられることを防ぎつつ、 相手の気持ちを尊重するための重要なステップです。
この段階で、 相手から 「そうなんです」 といった共感の言葉を引き出せると、 その後の対応がスムーズに進みやすくなります。 相手に 「この先生は自分の話をきちんと聞いてくれている」 と感じてもらえることが、 その後の信頼関係を築くカギとなります。
可能であれば、 その場で対処法や解決策を提示しましょう。 ただし、 相手の要求が複雑であったり、 現場で即答できなかったりする場合は、 無理に答えを出そうとせず 「いったん持ち帰って確認します」 と伝え、 上級医や専門部署に相談することも重要です。
クレーム対応は 「チームで行う」 ことが効果的です。 複雑な場合は、 院内で適切な部署と連携し、 最適な対応策を検討します。 この際、 「〇〇日までに再度ご連絡いたします」 と具体的な期限を伝えることで、 相手の不安を軽減し、 対応の遅れによる二次クレームに発展するリスクを減らします。
クレーム対応の最後には、 「貴重なご意見をありがとうございます」 と感謝の意を伝えましょう。 どんな内容のクレームであっても、 その意見を前向きに受け止め、 今後の改善に活かす姿勢が大切です。
多くの企業では、 顧客からのクレームを製品やサービス向上の貴重なフィードバックと捉え、 積極的に活用しています。 医療現場でも、 患者さんからのクレームを 「成長の機会」 と捉え、 感謝の気持ちを持って対応することが、 信頼関係の構築に繋がります。
クレーム対応は、 医師として成長するうえで必要なスキルです。 上記の一連の流れを意識することで、 クレーム対応をスムーズに進めることができる可能性があります。 皆さんもぜひ、 臨床現場で活用してみてください。
連載バックナンバー
第11回 : クレーム対応のコツ① : 知っておきたい2つのギャップ
レジデントのためのビジネススキル・マナー
医師として成功の一歩を踏み出す仕事術55
本書では自分が失敗から学んできた社会人としての院内・院外で必要なマナーや、 医師としての心得、 自己成長を成し遂げていくために必要な仕事術を解説していきます。 特に若手医師の皆さんにこれらを少しでも早い段階で共有することにより、 医師としてのキャリアを成功させるためのお手伝いが少しでもできれば幸いです。
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編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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