HOKUTO編集部
2ヶ月前

第98回日本胃癌学会総会が、 2026年3月4日 (水) ~6日 (金) の3日間、 沖縄コンベンションセンターで開催される。 「エビデンスと実践、 そしてその先へ/Evidence, Practice, and Beyond」 をテーマに掲げた本会開催にあたっての思いや注目プログラムなどについて、 会長を務める愛知県がんセンター薬物療法部部長の室 圭氏に話を聞いた。
―歴史と伝統のある本学会を、 愛知県がんセンターとして19年ぶりに主催されます。 会長としての思いをお聞かせください
室氏 :
愛知県がんセンターは、 胃癌学会が 「胃癌研究会」 であった時代から胃癌の治療と研究に深く関わり、 本学会の歴史と発展を支えてきました。
近年、 胃癌患者数が減少する一方で薬物療法は劇的な進歩を遂げ、 診断から内視鏡、 手術、 病理、 そして薬物療法へと続く一連の集学的治療の中で、 その比重は年々増しています。 伝統的に外科系の色彩が強い本学会において、 腫瘍内科医である私が会長を拝命したことは大変光栄であると同時に、 責任の重さも感じています。
私自身、 胃癌研究会時代からこの学会に育てていただきました。 胃という1つの臓器に特化し、 外科・内科・病理が垣根を越えて議論する場は他に類を見ません。 会長として、 刺激的で学びの多い本学会が持つ価値を次世代へ伝えていきたいと考えています。
―総会テーマに込めた思いは
室氏 :
本総会のテーマ 「エビデンスと実践、 そしてその先へ/Evidence, Practice, and Beyond」 については、 私自身が日々考え、 実践してきたことを言葉にしたものです。 『胃癌治療ガイドライン』は、 消化器癌のガイドラインの中でももっとも早い時期に作成され、 恐らく、 すべての疾患領域のはじめての体系的に作成されたガイドラインだったのではないでしょうか。 初版が2001年に公表されて以来、 臨床研究や臨床試験に基づく標準治療が積み重ねられてきました。 そこに記載されている治療は、 臨床試験・臨床研究・その他数々のエビデンスから得られた 「最大公約数としてのベストな治療」 です。
武道に例えるなら、 胃癌治療においてはエビデンスを理解し、 ガイドラインという 「型」 を押さえることは非常に重要であり、 守らなければならないものです。 しかし、 ガイドライン通りに行うことが全てではありません。 目の前の患者さん一人ひとりに最適な治療を考えるには、 「型」 を守った上での応用、 いわば“型破り”が必要になる場面も多々あります。
「Beyond (その先へ) 」 には、 ガイドラインに沿った治療を超えて患者さんと深く向き合うこと、 そういう研究や試験を重ねていくこと、 そして小さな“型破り”の積み重ねによって胃癌治療が確実に進歩していき、 引いては患者さんの幸せな生活に繋がるという思いを込めました。
―特に注目してほしいプログラムを教えてください
室氏 :
最大の注目は、 初日の3月4日 (水) 13:30から連続で発表される3つのプレナリーセッションです。
セッション1 「胃癌取扱い規約に関すること」 では、 3月に発刊予定の『胃癌取扱い規約第16版』や主な改訂点について解説が行われます (演者 : 滋賀医科大学病理学講座 九嶋亮治氏)。
セッション2 「NCD研究から見る本胃癌学会施設認定制度の意義と今後の展望について」 では、 認定施設と非認定施設の間で、 胃癌の手術合併症の発生率に差はないものの、 手術関連死亡率に差があるというNCD研究のデータが示されます(演者 : 鳥取大学消化器・小児外科 藤原 義之氏)。
将来的に胃癌の頻度がますます減っていき、 極端かもしれませんが言わば希少癌と化していくことを見据えて、 施設の集約化や手術手技の伝承をどう図るべきかについて議論します。
セッション3 「どうなる・どうする胃癌周術期薬物療法?」 は、 切除可能胃癌に対する抗PD-L1抗体デュルバルマブ+FLOTを評価した国際臨床試験MATTERHORNにおける日本人サブグループの治療成績が初めて発表されます(演者 : 大阪けいさつ病院消化器外科 大森健氏)。
今後の胃癌周術期治療の在り方や、 初の世界的標準治療となる結果を臨床現場にどう生かすかについて、 山梨大学消化器外科の市川大輔先生と私で司会を務め、 2人のディスカッサント (九州大学病院先端医工学診療部 沖英次氏、 国立がん研究センター中央病院消化管内科 加藤健氏) を交えて議論します。
室氏 :
2日目の3月5日 (木) に開催される会長企画 「医療者と患者さんがともにつくる医療」 は、 一般社団法人igannet代表理事/全国がん患者団体連合会理事であり、 演者も務められる轟浩美さんらとともに企画しました。 本セッションでは、 患者さんの思いを聞き、 我々医療者側の思いも語る、 双方向でのディスカッションを行う予定です。
室氏 :
同じく5日 (木) 開催の会長企画 「重要臨床試験の最新結果報告」 では、 HER2陽性進行胃癌に対する抗PD-1抗体ペムブロリズマブのKEYNOTE-811試験における日本人解析や、 術前治療におけるDOS療法とFLOT療法を比較したJCOG2203試験の初めての報告など、 以下の6つの重要臨床試験を取り上げます。

室氏 :
さらに、 5日 (木) 開催のシンポジウム 「胃がん薬物療法の担い手はだれか?」 では、 薬物療法が進歩する一方で、 腫瘍内科医は増えず外科医も減少しているという現状を踏まえ、 今後誰が薬物療法を担っていくのかという喫緊の課題を問いかけます。
―沖縄で開催される魅力を教えてください
室氏 :
本会は第11回アジア太平洋胃食道癌学会 (APGCC;Asia-Pacific Gastroesophageal Cancer Congress) との合同開催であり、 台湾、 中国、 韓国、 シンガポール、 ベトナム、 マレーシアなどアジア各国から多数の参加者を迎えます。 アジア諸国との距離が近い沖縄は、 国際色豊かな本会にふさわしい開催地です。
演題数は1,750題と例年の約2倍、 史上最多を記録し、 約25%は海外からの応募演題です。 また、 ノーネクタイ・かりゆしウェアでの参加を推奨し、 2日目には全員懇親会も予定しています。 学術的な議論に加え、 お祭のような一体感も楽しんでいただければと思います。
室氏 :
外科・内科を問わず、 国内外の若い先生方には積極的に参加して胃癌診療の世界に触れていただきたいと思います。 「胃癌」 だけをテーマに1,700超の演題を集め、 深く議論できる場として、 本総会は世界最大規模です。 白熱する議論の中で、 ぜひ学会の楽しさと面白さを実感してください。
学会名
第98回日本胃癌学会総会
合同開催 : 11th Asia-Pacific Gastroesophageal Cancer Congress(APGCC)
会期
2026年3月4日 (水) ~3月6日 (金)
テーマ
エビデンスと実践、 そしてその先へ
/Evidence, Practice, and Beyond
会長
室 圭
(愛知県がんセンター 薬物療法部部長)
会場
沖縄コンベンションセンター
>> 公式サイトはこちら
参加登録期間 :
2026年1月16日(金)正午~4月20日(月)

編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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