HOKUTO編集部
9ヶ月前

術後の補助化学療法 (ACT) を受けても再発が避けられない症例が一定数存在するIII期結腸癌において、 微小残存病変のマーカーである循環腫瘍DNA (ctDNA) の有用性が注目されている。 DYNAMIC-III試験は、 術後5~6週時点のctDNA陽性例に対して治療強化を行う戦略が、 標準治療に比べて再発リスクを低減できるかどうかを検証した初の第II/III相無作為化比較試験である。 同試験では、 ctDNA濃度が高いほど再発リスクが上昇することが示された一方、 FOLFOXIRI (フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン+イリノテカン) を含む治療強化によっても2年無再発生存 (RFS) 率の改善は認められなかった。 本稿では、 これらの結果を踏まえ、 ctDNA陽性例に対する今後の治療開発の方向性と臨床的意義について考察する。

III期結腸癌患者では、 術後補助化学療法後でも再発する症例があり、 臨床的課題となっている¹⁾。 ctDNAは微小残存病変を鋭敏に検出する手段であり、 術後にctDNAが検出される患者では再発リスクが高く、 逆に検出されない場合はリスクが低いことが報告されている²⁾。 第II/III相DYNAMIC-III試験では、 ctDNA陽性例における治療強化の有効性が検証された³⁾。
同試験では、 対象のIII期結腸癌が術後補助化学療法開始前に、 ctDNA情報に基づく治療群または標準治療 (SOC) 群に1:1で無作為に割り付けられた。 ctDNA陽性例に対しては、 以下のように予定された治療強化が実施された。
- 無治療 → FP単剤 (5-FU/Cape)
- FP単剤 → L-OHP併用療法6ヵ月
- L-OHP併用療法3ヵ月 → 同治療6ヵ月またはFOLFOXIRI 3ヵ月以上
- L-OHP併用療法6ヵ月 → FOLFOXIRI 3ヵ月以上
主要評価項目は2年RFS率であり、 副次評価項目には安全性および治療終了時 (EoT) のctDNAクリアランス率が設定された。
2017年10月~23年4月までに961例が登録され、 うち259例 (27%) がctDNA陽性であった。 陽性例のうち44%はT1–3またはN1の再発低リスク群に該当した。 追跡期間中央値は42.2ヵ月であった。
ctDNA情報に基づく治療群 (129例) では、 89% (115例) が治療強化を受け、 うち56%にFOLFOXIRIが使用された。 SOC群 (130例) では、 86%がL-OHP併用療法を受けた。
2年RFS率は、 ctDNA情報に基づく治療群で52% (90%CI 44–59%)、 SOC群で61% (同 54–68%) と両群間に有意差は認められなかった (HR 1.11、 同 0.83–1.48、 p=0.57)。
また、 FOLFOXIRIとFOLFOX (フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン)/CAPOX (カペシタビン+オキサリプラチン) の3年RFS率を比較評価したところ、 同等の結果だった (47% vs 51%、 HR 1.09、 p=0.7)。
一方、 ctDNA量と再発リスクには有意な相関があり、 四分位 (0.06未満、 0.06~0.17、 0.18~1.31、 1.31超) ごとの3年RFS率は各々、 78%、 63%、 36%、 22%であった (p<0.01)。
根治術後にctDNA陽性を示す症例は再発リスクが高く、 画像上の再発が明らかになる前に治療介入を行うことで生存を改善できるかどうかを検証する臨床試験が複数進行している。 介入戦略には、 術後早期にctDNA陽性が確認された段階で治療を強化する方法、 および標準的な補助化学療法を実施した後もctDNA陽性が持続する症例に対して、 イリノテカンやトリフルリジン/チピラシルといった異なる作用機序の薬剤による追加治療を行う方法の2通りがある⁴⁾。 今回のDYNAMIC-III試験は前者のアプローチを評価したものであり、 後者の代表例としては国内で実施中の第III相ALTAIR試験⁵⁾が挙げられる。
DYNAMIC-III試験では主要評価項目を達成できなかったものの、 術後のctDNA量が再発リスクと強く相関することが示され、 特にT4症例では、 試験群におけるctDNA濃度が高かったことが結果に影響した可能性がある。 また、 FOLFOXIRIの投与期間が6ヵ月ではなく 「3ヵ月以上」 に留まった点や、 事前に設定されたHR (0.746) を検出するには症例数が不足していた可能性についても、 海外のKey opinion leaderから指摘されている。
現時点では標準治療に変更はなく、 今後の類似試験の結果や統合解析を通じたエビデンスの蓄積が待たれる。
検査アッセイの進歩により、 今後は画像上の再発を待たずに、 ctDNAを用いて微小残存病変をより早期に捉えることが可能になると期待される。 これに伴い、 術後ctDNA陽性例に対する新たな治療戦略の開発が望まれる。
¹⁾ N Engl J Med. 2018;378(13):1177-1188.
²⁾ Nat Med. 2024;30(11):3272-3283.
³⁾ J Clin Oncol. 2025;43(16_suppl), 3503.
⁴⁾ Cancer Treat Rev. 2024:126:102735.
⁵⁾ J Clin Oncol. 2025;43(4_suppl), LBA22.
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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