HOKUTO編集部
7ヶ月前

近年、 "HER2低発現 (HER2-low) 乳癌"という新たなカテゴリが注目され、 乳癌の治療戦略が変化しています。 本連載ではHER2-low乳癌の概念や、 診断・治療戦略と課題について、 福井大学の今村善宣先生に解説いただきます。
現時点では、 周術期のHER2-low乳癌に対する標準的な標的治療は確立されていない。
過去に、 HER2-low乳癌の術後補助療法として、 化学療法に従来の抗HER2薬であるトラスツズマブを上乗せする効果を検証した大規模臨床試験 (NSABP B-47試験) が行われたが、 有効性は示されなかった¹⁾。
現在、 トラスツズマブ デルクステカン (T-DXd) のような新しい抗体薬物複合体 (ADC) を周術期に使用する臨床試験が進行中であり、 今後の結果が待たれる。

進行・再発例においては、 T-DXdをはじめとするADCが治療の鍵となる。 以下に、 具体的な治療戦略と臨床的位置付けを解説する。
進行・再発乳癌の治療目標は延命とQOL維持である。 治療選択はホルモン受容体 (HR)、 HER2ステータス、 既治療歴などを総合的に判断する。
なお、 HER2陰性の40~60%がHER2-lowに該当し、 特にER陽性乳癌で頻度が高いとされる²⁾。

以下に、 進行・再発乳癌における2025年1月以降の治療体系を示す。

内分泌療法感受性の場合、 内分泌療法+CDK4/6阻害薬が優先される。 進行・抵抗性例では、 化学療法とT-DXdが重要な選択肢である。
抗TROP-2抗体薬物複合体であるダトポタマブデルクステカン(Dato-DXd) も、 化学療法歴のあるHR陽性HER2陰性 (HER2-low含む) に対する新たな選択肢として2024年12月に承認された。
【世界初】Dato-DXd、 HR+HER2-進行乳癌に対し国内承認
なお、 BRCA遺伝子変異陽性例ではPARP阻害薬も考慮される。
化学療法が主体である。 PD-L1陽性なら化学療法+免疫チェックポイント阻害薬を用いる。
T-DXdや抗TROP-2抗体薬物複合体であるサシツズマブ ゴビテカンが重要な治療選択肢である。 なお、 BRCA変異陽性例ではPARP阻害薬も考慮される。
また、 HER2陽性乳癌では、 1次治療からT-DXdが標準治療となる可能性が示されている³⁾。
【DESTINY-Breast09】HER2+進行乳癌の1次治療、 T-DXd+ペルツズマブでPFS改善 (ASCO 2025)
ADC (T-DXd、 サシツズマブ ゴビテカン、 Dato-DXdなど) を適切なタイミングで使用することが鍵となる。 最適な逐次療法は確立されておらず、 個々の患者背景や薬剤の特性を考慮した選択が重要である。
HER2‑low 乳癌治療は ADC の急速な進歩によりパラダイムシフトが進行中である。 臨床家には最新試験結果を踏まえた柔軟なシーケンス設計が求められる。

2024年4月に、 地元福井大学に異動しました。 臨床腫瘍学、 血液内科学、 腫瘍循環器学、 がんゲノム医療、 リアルワールド研究と多角的な活動をしています。 学生・初期研修医・後期研修医、 Uターンをご検討中の先生、 どなたでも大歓迎です。 ぜひお気軽にお問い合わせください。
編集・作図:編集部、 監修:所属専門医師。各領域の第一線の専門医が複数在籍。最新トピックに関する独自記事を配信中。
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